僕のほそ道   ~ のん日記 ~

  
これと言ったテーマはなく、話はバラバラです。 つい昔の思い出話が多くなるのは年のせい? 

マウンテンバイク再生

2009年12月27日 | ウォーク・自転車

もう10年以上も昔、近所の自転車屋さんで2台のマウンテンバイクを買ったことがある。そのうちの1台は、途中から前カゴやドロ除け、スタンドなどを付けて、通勤用の自転車として、10年くらいは使った。

ず~っと使ってきたので、当然なことだけど、そのマウンテンバイクも最近ブレーキやギアの働きが悪くなってきた。 とにかく修理しなければならない。 自分では手に負えないので、近所のその自転車屋さんに行った。

この自転車屋さんの主人は、僕とほぼ同年齢だが、若い頃、自転車好きが高じてドイツまで行って 「修業」 を積んだ人である。 しかし ちょっと偏屈というか、職人肌というか、まあ、あまり愛想は良くないおじさんである。

「こんにちわ~」と、僕は自転車を引いて、小さな店をのぞく。
店の入り口の横の壁に、
「当店は、10年後に閉店をいたします」 という貼り紙がしてある。

1ヶ月後とか、もっと先でも1年後…くらいまでならわかるが、10年後に店を閉めますという通知を、今からしているのだ。10年先のことなど、誰がわかるねん…、と僕は思うのだけれど、こんなところひとつをみても、ここの主人の 「人柄」 が想像できるというものだ
(…って、どんな人柄や?)。

「あ…、きょうは、何か…?」と主人。
「このマウンテンのブレーキとかギアとかが、効かなくなってきたので」

主人はひととおり僕の自転車を眺めまわし、
「う~む。修理は、無理ですな。今はこの種の部品もないし。それに…」
と、主人は、太いタイヤを指でなぞりながら、
「タイヤの中から糸がのぞいている。擦り切れてる。う~む」
主人は、やたらに「う~む」を連発する。

ブレーキもギアも、修理ではなく、新品と取り替えなければならない。
さらに、タイヤが擦り切れているので、これも替えなければならない。

「高くつきますよ」と主人が、きっぱり。

「そうですか。う~む」…と、こんどはこちらが唸る。

…そうか。ならば仕方あるまい。ここまで乗ったのだからなぁ。
「ん~、じゃぁ、この自転車、捨てるわ」 僕は、あきらめた。


 

    
    写真で見ると新しく見えますが、ギアもタイヤもボロボロ。
    長い間、世話になりましたが、このたび、「勇退」  してもらうことにしました。


 
マウンテンバイクはもう1台、わが家でホコリにまみれて眠っている。
ほぼ10年ほど乗っていないが、実はこちらのほうが「高級車」なんである。

「もう1台のほう、持ってきますから、それ、ちゃんとしてくれる?」
「あ、もう1台。そう…。あれはこの自転車より、ずっとモノがいいね」 
と、さすがに主人は、ずいぶん昔のことなのに、僕がここで買った別のマウンテンバイクほうも、よく覚えてくれていた。

僕はその自転車を持ち帰り、別の1台を引いて店に戻った。

「あ、これなら大丈夫だねぇ」 
と主人は、まずタイヤが擦り減っていないことを確認した。

しかし、急に運んできたので、自転車のタイヤの空気もぺちゃんこで、全体が汚い。
「う~む、これは、長い間、乗っていませんね…」 
主人は、ちょっとのけぞるような感じで、つぶやいた。

これは、当たり前だけど、先の自転車より、はるかにひどい状態である。

「では、自転車、預かっておきます。すぐにまた電話します」
そう言って主人は僕の電話番号をメモした。

それは、午前10時ごろの話である。

午前中に仕上がるのかな…? と思っていたが、電話がかかって来ない。
午後からスポーツジムに行き、夕方帰ってきたが、妻に聞くと、まだ電話がかかってこないという。ブレーキとギアの修理だけで、ずいぶん時間がかかるものだと思った。そして、こちらから電話をしてみた。

主人が電話に出た。
(何せこの店では、主人以外の人影を見たことがない)

主人は、
「もうあちらこちらがさび付いているので、いま、自転車をバラバラに分解しているところです。今日中にやらないかんと思って、急いでやっているけど、時間がかかって…」
と、やや高いテンションで言った。

僕は別に急がなかったので、そういうことであれば、気遣いはいらない。
「明日でもいいですよ。急ぎませんから」
そう言うと、
「あ、よかった。そう言ってもらえば、ありがたいね~」

とまあ、そういうことで、翌日、自転車を受け取りに行った。

ほこりまみれになっていたマウンテンバイクは、見違えるほど、隅々まで綺麗になっていた。きっと、ていねいに 「再生」 をしてくれたのに違いない。

「ありがとう」 僕は心から、主人に礼を言った。

これから、またこのマウンテンバイクで、あちらこちらを走り回りたい。

少なくとも、この店が 「10年後に閉じる」 頃までは、元気で走り回りたい。

 


 

  
  「再生」された10数年前のマウンテンバイク。
  スタンドだけは、前の自転車のものを取り外し、自分でつけました(これは簡単)。

 

 * おまけ

    本文とは関係ありませんが、僕は京都の西陣の自転車店で生まれました。
    母方の祖父が営んでいた、小さな自転車屋さんです。
    幼年時代は、その自転車店で育ちました。
    生まれつき、自転車とは、縁があったのかも知れませんね。

 

 

 

 


コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする