僕のほそ道   ~ のん日記 ~

  
これと言ったテーマはなく、話はバラバラです。 つい昔の思い出話が多くなるのは年のせい? 

 ヴェルサイユへの道

2008年05月19日 | 旅行

どこへ行っても失敗したりズッコケたりする僕だけど、以前ヴェルサイユに行く時も、列車を乗り間違えて大あわてしたことがある。最初にその時の話から…。

ヴェルサイユはパリの中心部の西南20キロほどにあり、行き方も何通りかある。
僕はRERという高速郊外鉄道を利用した。

サンミッシェルという駅の窓口で、ヴェルサイユへの切符を買ってホームへ。電光掲示板で次に来た列車がヴェルサイユ行きだと確認をした(…はずだ)。そして、その列車に乗って2階座席に上がり、靴も脱いでくつろいでいると、やがて、次々と停車していく駅名と手元の地図の駅名とが合わないことに気がついた。「変やなぁ」と窓の外を凝視していると、後部座席の若い女性が僕の肩をトントンと叩き「ヴェルサイユ?」と尋ねた。「ウィ」とうなづくと、女性は「この電車じゃないから、早く降りるのよ!」と言った。列車はどこかの駅に到着したところだった。
「わっ、大変。降りよう!」と妻の腕とリュックをつかみ、立ち上がって通路に出たら、靴を履いていないことに気がつき、あわてて靴を脇にかかえ、よろめきながら出口をめざして走った。しかし扉が閉まっている。「ゲェッ」と思ったが、そうだ、ドアは手で開けるんだとわかり、やっとのことでホームに転がり出た。
ゼイゼイ言いながら、「ここは一体どこやねん」と、泣きたい気持ちで、壁に標示されている読めないフランス語の駅名を、ぼう然と眺めたことを思い出す…。

    ………………………………………………………………

さて、今回、旅の4日目は3人でそのヴェルサイユ宮殿に行く。

今度こそ、乗る列車を間違ってはならない…と、にわかガイドの僕は、心ひそかに決意を秘めて、地下鉄のアンヴァリッドという駅で、前回と同じ高速郊外鉄道RERに乗り換えるために、降りた。

ホームに「RER」への案内標示が出ていたのでそれに沿って地下道を歩いて行くと、自動改札口に出た。RERの改札口だ。僕たちは地下鉄の切符しか持っていないので、そのままでは通れない。ここで切符を買い直さなければならないようだが、窓口らしきものはピタリと閉ざされ、どこで切符を買うのかわからない。駅員の姿どころか、お客の人影すらない。地下鉄には乗り慣れていたが、郊外への路線の接続に関しては何の知識もなかった。一度地下鉄から出て、あらためてRERに行ったほうが、駅員のいる窓口もあってわかりやすかったかもしれない。前回は切符は窓口ですんなり買えたのに、今回は、列車を乗り間違うどころか、なんと切符を買う段階からいきなりつまづいてしまった。

隅の方に、小さな自動券売機らしいものが2台置かれていた。パリの自動券売機は英語表示も出るが、タッチパネルの操作方法がとても難しい。そこへ中国人風の夫婦らしき2人連れがやってきて、券売機を操作しはじめた。じっと見ていると、旦那のほうが、「うまいこと、いかんがな」という顔で奥方を見た。奥方はしょんぼりしている。僕がその奥方に「ヴェルサイユへ行くのですか?」と聞いたが、「あたしは何にもわからないのです」という哀しそうな表情で黙っている。旦那は、また機械に挑戦している。そこへ、日本人の新婚カップルがやってきた。

「ヴェルサイユへ行くのですか?」と僕が尋ねると、「はい、そうですけど」と、2人は礼儀正しい口調で答えた。よし、この人たちに聞けばわかりそうだ。
「ここで切符を買い直すんですけどね。僕たち、買い方がわからなくって…」
「あっ…。そうですか。あのぉ…、私たちは、地下鉄の窓口でヴェルサイユまでの切符を買っているんですけど」と、ヴェルサイユ行きの切符を見せてくれた。
この駅からヴェルサイユまで、1枚2.8ユーロの切符である。

あ~あ。がっかり。
それ、1枚5ユーロで売ってくださ~い、とも言えないしなあ。

若い2人は券売機をあれこれ操作してみてくれて、「これは、こうだよね」「だけど、これが意味わからないね」などと2人で言い合いながら、パネルのあちらこちらをプッシュしながら熱心に調べてくれている。2人とも、とても親切でしっかりしている。これなら今後の結婚生活も大丈夫だろう(今はそんなの関係ネェ)。

でも、結局はやり方はわからなかった。仕方なく全員、となりの機械で、さっきからあきらめずに挑戦していた中国人の旦那の方へ移動して覗き込む。行く先のアルファベットを入力して、そして何とかかんとか、という複雑な操作を懸命に続けている。そして、ついに成功したようだ。あとはお金を入れるだけである(こちらの券売機は、行く先を指定してからお金を入れる)。やったぁ!

これで、僕達も同じような操作をしたら、念願の切符が手に入る。
そう思っていたら、意外にも旦那は両手を広げて泣きそうな表情を浮かべた。
手には、ユーロの札が握られている。それを挿入したらいいだけじゃないか?

「あれぇ…?」と新婚さんの男性のほうが画面の文字を読み、
「コインかカードしかだめみたいですね。お札はこの機械は使えないんだ」
中国人の旦那は、コインもカードも持っていなかったのだ。
あ~。なんちゅうこっちゃ。
気の毒に…肩を落として元の通路を引き返して行く旦那と奥方。

しかし、僕らもそれだけの額のコインは持ち合わせていない。
「カードがあるがな、カードが」と、さっきの旦那がそのままにしていた画面を、人数だけ2人から3人に変更し、財布からカードを出して、あとは画面の指示通りにピッピッと押していくとヴェルサイユまでの3人分の切符が出てきたのである。

まあ、とにかくよかったが。
…切符ひとつ買うのも大騒動である。

列車に乗って、終点のヴェルサイユ駅に着いたのは9時半であった。
所要時間は約40分である。

ヴェルサイユ宮殿の切符売り場は、これまた長蛇の列であった。
待っている間、係員が来て、大声で何かを僕らに告げた。
フランス語と英語だった。意味は、もちろん…わからん。
それを聞いて、列に並んでいた何人かの人たちが、前の方に移動して行った。
僕らのすぐ後ろのおじさんが、係員に
「イタリアーノ!(イタリア語でも言わんかい!)」と抗議していた。

何のことやらさっぱりわからない。僕たちはじっと我慢の子であった。

ようやく順番が回ってきて、日本語版のパンフレットを3枚取って、13.5ユーロの3人分、40.5ユーロを窓口で支払った。これでチケットは手に入れたけれど、入場口はまた別のところで、そこもまた、延々と行列を作っていた。しかも、不思議なことに、とても長い列と、わりに短い列の二通りがあった。なんの区別なのだ、これは。

短い方の行列に日本人の新婚さん風の男女が並んでいたので、僕はチケットを見せて、「ここへ並んだらいいのですかね」と聞くと、男性のほうが、
「僕らはミュージアム・パスなのでここですけど、普通のチケットなら向こうかなぁ…?」と長い行列を指差した。
「あ、でも、あの背の高い男性に聞いてください」と後方の係員を指差した。

そこで背の高い係員のところへ行きチケットを見せると、長い腕を振り上げ、
「ビハインド!」と叫んだ。「後ろへ行け」ということだろうけれど…。
それが長い列を指しているのか、短い列のほうなのかよくわからない。
とはいえ、多分長い列を指しているのだろうという察しはついた。
僕らは「予約客」ではなく、今チケットを買ったばかりの一元さんだから。
しかし…。あの長い長い列にはなぁ…。並びたくないなぁ…。
ガイドブックに「パリ・ミュージアム・パス」は絶対おすすめ!とあったが、これだと入場券は買わなくて済むし、並ぶ時間が節約される。やっぱり新婚旅行なんかだと、こういうのを買っておけば便利なんだね~。でも数ヶ所しか行かない僕らにはかなり割高だったので、このパスはパスした。…パルドン(すんまへん)。

ちょっと考えた後、「まあ、ええやろ」と短い列の最後尾に並んだ。
入口に行くまでに、制服の女性係官がチケットをチェックしていた。
僕たちがチケットを見せると、案の定この女性係官は、
「このチケットはあっちの列だ。ここへ並んではダメ」と怖い顔をした。
すると、後ろからさっきの背の高い係員が首を出して、
「あ、この人たちは僕がこの列に並べと言ったんだから、いいよ」
という感じのことを女性係官に伝えたので、そのままでいられた。
ありがとうね。助かりました。

そんなことで…
苦労に苦労を重ね、ようやくヴェルサイユ宮殿の中に入ることができた。
ほんとにまあ、ここへたどり着くだけで疲れてしまう。

ヴェルサイユ宮殿は、大きな、というより、バカでかい、という表現するほうがより現実的であろう。とにかく大きすぎて、何度来ても全体が把握できない。

礼拝堂、ビーナスの間、ダイアナの間、アポロンの間、王妃の寝室、鏡の回廊など、目も眩むような宮殿内の部屋部屋を見学して行っても、自分が今どこをどう歩いているのかさっぱりわからない。ルーブル美術館顔負けの豊富な絵画の展示をはじめ、、鏡の回廊の素晴らしさなどは口では言い表せない。帰ってきて、人から、どうだった? と聞かれても、「よかった」「すごかった」としか言いようがない。

宮殿から出て眺めた庭園も、絵画のように美しい。
ヴェルサイユについては、ネットでも本でもテレビでも、いっぱい紹介されているので、僕のつたない表現力ではどう転んでもうまい描写はできないので省略してしまうが、やはり、断然素晴らしいと思うのは、鏡の回廊である。これだけは強調しておきたい。

宮殿の裏側にある庭園から建物を潜ってまた最初のチケット売り場付近に戻る。
ベルサイユ宮殿の門を入ったところに、ルイ14世の騎馬像があったはずだが、その姿が見えなかった。工事中か? どこへ行ってしまったんだ、ルイ14世は…?

宮殿を出る頃は、切符売り場に並ぶ列はますます長くなっていた。
とにかく、人だらけである。

時間は12時ちょうど。
「あ~あ。お腹、減ったなぁ」
と、僕たちは毎度お決まりのセリフを口に出して、駅前まで歩く。
むかし妻と駅前のマクドナルドに入ったことを覚えている。
今回は、ちょっとランクを上げて、そのとなりのレストランに入った。
やれやれ、疲れたねぇ…と一息ついた。

ウェイトレスがやって来て、
「イングリッシュ? ジャパニーズ?」と聞く。
ぼっ、ぼっ、ぼくたちがイギリス人に見えるのか…? と一瞬思ったが、
「英語か日本語か、どっちのメニューがよろしいですか?」
と聞いてくれていたのだった。そらそ~やろ。どこがイギリス人やねん。
僕は意味がわかると、即座に「日本語!」と、英語で答えた。

さすがに大観光地である。日本語のメニューがあるとは…。
この旅行で、日本語のメニューが出てきたのは、ここだけだった。

ヴェルサイユ宮殿では日本人を数多く見かけたが、前回のマクドナルドでもそうだったが、そこから少し外れると、日本人の姿はほとんど見えなくなる。このレストランでも、日本人らしい顔は見なかった。みんな、観光バスでやってくるのだろう。

駅に戻り、パリ市内への電車に乗った。
車窓には、田園や住宅の風景が展開していた。
パリ市内の住居はすべてアパート形式だから、このへんの一個建て住宅が並んでいる風景を見ると、また格別の趣があった。

まだ半日が過ぎたばかりである。
「ミュージアム・パス…なぁ」とぼんやり考えていたら、ふと、パリに着いたその日、旅行社からパリ市内循環観光バスの乗り放題パスをもらっていることを思い出した。

そうだ、パリに着いたら、その無料パスを使って観光バスに乗ろう…
僕は、電車の乗り継ぎも、レストランでの注文もロクにできない頼りない「にわかガイド」だけど、いつも次の行程を考えるのに、頭の中はけっこう忙しいのである。



                       ~ 続きます ~

 

 

 
  
列車が終点のヴェルサイユ駅に到着した。 
 

 
  駅の大通りを少し行って左折すると、もう、遠くにヴェルサイユ宮殿
  が見える。歩いて10分足らずだ。
  

 
  宮殿へ、宮殿へと、人々は吸い込まれるように進んでゆく。


 
  宮殿の入口まで来た


    
    しかしもう、これだけのお客さんがチケットを求めて、
    長い長い行列を作っていた。


  
  この建物の中がチケット売り場。あと少し…
 

   
   これがチケット。ひとり13.5ユーロ(約 2,200円)でした。


 
  礼拝堂。


 
 中はさながら美術館のように沢山の絵画や彫刻がある。


 
  ヴェルサイユ宮殿の中でも最も豪華絢爛な「鏡の廻廊」


 
  庭園の一部。

 
  僕たちが帰る頃は、観光客はものすごい数に増えていた。


   
   ヴェルサイユの駅前のお店に入ってランチをとる。
 

  
  RERのヴェルサイユ駅。
  正式名称は「ヴェルサイユ・リヴ・ゴーシュ」
  パリまで約40分です。

 

 

 

 

 

 

コメント (6)
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