僕のほそ道   ~ のん日記 ~

  
これと言ったテーマはなく、話はバラバラです。 つい昔の思い出話が多くなるのは年のせい? 

 モン・サン・ミッシェル

2008年05月15日 | 旅行

旅も3日目を迎えた。
今日はモン・サン・ミッシェル日帰りバスツアーの日である。
すでに日本から申し込んでいたものだ。

朝の6時にホテルのフロントで、あらかじめ用意してもらっていたパンとジュースとココアをもらって部屋に戻り、3人で朝食をとる。持参の電気ポットで沸かしたお湯を使って、日本から持ってきたコーンポタージュスープをすする。
う~ぅっ。お、おいし~い。2袋開けてしまった。

6時半にフロントにキーを預け、ホテルを出た。
こちらの国は、夜は9時ごろまで明るいのに、朝はいつまでも暗い。
6時半頃になって、ようやくうっすらと明けてくる。

30分歩き、オペラ座通りにある「マイバス」社へ7時に着いた。ツアー客はむろん日本人ばかりだが、大型バス2台分の人数がいた。僕たちは2号車に乗った。

バスは予定どおり、7時半に出発した。
ガイドさんは白髪の熟年男性で、シンドウさんと言った。

「おはようございます」とシンドウさんが最前列席でマイクを持って挨拶し、
「今日はね、フランス全土で、今年一番のいいお天気だそうですよ~」
と言って、にっこり笑った。「よっしゃぁ」と、小さく拍手をする僕。
「ここからモン・サン・ミッシェルまで360キロあります。今からですと、約4時間半くらいかかりますので、途中一度休憩をして、12時ごろには着けると思います」

360キロとは…大阪から言えば静岡、東京から言えば仙台までの距離に匹敵する。
運転手ももう一人、座席に待機している。

バスは、ノルマンディ海岸をめざして、西へ西へと走る。車窓からの眺めは、菜の花畑の鮮やかな黄色と、麦畑の見事な緑色とのコントラストが実に美しい。
高速道路から見える光景は、たまに市街地を通るほかは、ほとんどが緑色である。
看板一つない景色が、日本と違って、とても広々として清清しい。

車はスムースに進み、途中一度の休憩をはさんで、予定どおり、12時前にモン・サン・ミッシェルが見えてきた。バスの窓から、遥か彼方にそそり立つ、城塞のような修道院が視界に入ってきたときは、さすがに身ぶるいがした

おおっ、ついに見えたぞ。あれが噂のモン・サン・ミッシェルか~。


 
  バスの中から見えてきた…

 
 
  
だんだんと、近づいてきた。
  

 
  バスの運転席からのぞくと、モン・サン・ミッシェルは、もうすぐそこに…
 

モン・サン・ミッシェルは、最近はテレビの世界遺産シリーズ番組でも紹介され、人気急上昇中の観光地である。だが、そもそもモン・サン・ミッシェルとは何なのか…? 海の上にそそり立つ幻想的なお城のようでもあり、城塞のようでもある。実際は修道院だけど、そこにはさまざまな数奇な歴史が刻まれている。

西暦708年…というと、ちょうど1300年前のこと。日本では奈良時代に入るちょっと前である。その年に「岩の上に修道院を建てよ」と、戦いの天使・聖ミカエルが、なんとかという司教の夢の中に現れてそんなお告げをした…ということだ。聖ミカエルはたいそう勇ましい天使であったようで、ジャンヌ・ダルクにもお告げをして戦いに導いている。モン・サン・ミッシェルとは、「聖ミカエルの山」という意味だそうである。

で、そのときから、この場所への修道院の建設が始まった。966年に完成し、ベネディクト修道会の聖地として多くの巡礼者が訪れるようになって賑やかになり、その後建物は上へ上へと増改築され、今日のような複雑な建物になっていった。英国との百年戦争の際には、要塞として長期の包囲に耐えた。その後徐々に衰退し、18世紀には監獄として使われたこともあった。しかし、近年その歴史的価値が見直され、1979年(…といえばわりに最近であるが)に、世界遺産に指定されたとのことである。

まあ、そういう建造物である。

モン・サン・ミッシェルの入口にあたるところに駐車場がある。
バスがそこに停まり、僕たちは席を立ち、降りる態勢をとった。
「それでは、いま12時ですが、最終的にこのバスに集合するのは、3時半ということにしますので、よろしくお願いしま~す」とシンドウさんが一言、念を押した。



 
 バスが到着。 赤い旗はノルマンディー地方の旗だそうだ。

 
 バスを降りて、シンドウさんを先頭にさっそく島の入口の門をくぐる。


 

 

修道院の周辺はひとつの村になっており、民家もある。
僕らが案内された道は、グランド・リュと呼ばれるここの目抜き通りである。
とても狭い路地なのだが、ここが、まあ、メインの参道であり、狭い道の両側に、レストランや土産物屋、ホテルなどが集まって、多くの観光客がぞろぞろと歩いている。まさに門前市をなす賑わいで、日本人の店員の姿を見かけたりもする。

僕たちは、まず全員が、レストランに案内された。昼食の時間だった。
奥の方に用意されていた団体席が、あっというまに満席になった。
「シードルがついた昼食です」とツアーのパンフレットに書いてあったので、
「シードルというのは、ここの名物のビッグ・オムレツのことかいな?」
と思ってパンフレットをよく読むと、シードルとはリンゴのお酒のことであった。

日本のテレビ番組で紹介されて一躍有名になった巨大なオムレツは出るのか?
…と、別にオムレツなど食べたくもなかったが、話のタネにと少し期待した。
しかし、僕らに出された料理は、ごく普通の前菜・メイン・デザートであった。

レストランから出て、シンドウさんの説明を受けながら、修道院をめざして歩く。


 

 

 

 

  
  
シンドウさん(右端。「2号車」の「2」の旗を持っている)の説明を聞く。


「えぇ、すみませ~ん、皆さん…」とシンドウさん。
「参道を歩いて行くとものすごい人なので、ここで近道をしたいと思います」
と、急な階段を指さした。こちらのほうが、人の数が少ないから、という。
「大丈夫ですよね。もし、脚力に自信がなければ、そう言ってくださいね」
と言いながらもすでに階段を上がり始めたので、僕らもあわててついて上がった。

階段を上がっていくと、土産物屋さんなどに遮られていた視界が一気に広がった。

上がる途中、モン・サン・ミッシェル湾に広がる干潟が見えた。
そこに、一組の男女と犬の姿があった。
干潟にはズブッと埋もれてしまう場所などがあってたいへん危険なので、一般には立ち入りが禁止されているはずだと書かれてあったが…


 
  
修道院への階段から干潟を見渡す。人の姿もあった。

 
 さらに階段を上がっていく。
 けっこう体力がいる。


 


 どんどん階段を上がっていくと、修道院が近づいてくる。

 

 

 

 


 年配のお客たちはフウフウ言い、息を切らせながら上がっている。

 やっと修道院に到着した。
 ここがその上がり口である。


 

 
 修道院の窓から、僕たちが乗ってきたバスが見えた。

 


 だいぶ歩いた後、ようやくテラスに出た。
 

 
  半島の突端がシェルブール。 その向こうが、英国になるそうだ。

テラスに集まった僕たちは、北西に広がる干潟と海の景色と、反対側の修道院の荘重な建物郡の風景を交互を楽しんだ。お天気が快晴ということもあり、文字通り、360度の絶景である。そして、湾全体が潮が引いている光景は圧巻であった。
「この湾で、良質な牡蠣やムール貝が養殖されています」とシンドウさん。

シンドウさんはまた、干潟の向こうの海のほうにうっすらと突き出ている半島の先端を差して、
「みなさん、あそこがシェルブールですよ」と教えてくれたあと、
「あの向こう側がイギリスです」と、説明を続ける。
「ほぉ~。じゃ、特に見晴らしのいい日は、イギリスが見えるのですか?」
と、ツアーの中年の男の客が聞いた。
「あ、それは、見えません。ぜんぜん見えません」とシンドウさん。

テラスから教会と尖塔を見る。
もう、かなり上まで来ていると言うことがわかる。


 
  
テラスから教会と尖塔を見る。


さて、今度は修道院の中に入って、シンドウさんの説明を受けた。
モン・サン・ミッシェルの構造や成り立ちを、熱心に話してくれた。


 
  
礼拝堂。


 
  
食堂。


ひと通りの説明が終わったらそこでいったん解散した。
あとは自由行動ということになった。
集合時間の3時半まで、あと1時間余りある。

修道院の出口付近に、聖ミカエルの像があった。


外へ出ると、階段や見学に疲れたのか、のんびりと休憩する人たちが多かった。本当に気持ちよく晴れ渡っていてよかった。


 


参道を下って行くと、狭いところを上がってくる人との間で、身体をよけ合いながらすれ違わなければならない。この混雑ぶりを見ても、モン・サン・ミッシェルがいかに人気のある観光スポットであるかがよくわかる。


 
 
上がって行く人、下りて行く人。 人、人、人。


カフェに入ったり、土産物店を冷やかしたりしながら、ぶらぶらと参道を下っていたら、もう集合時間まであとわずかになっていたので、最後はあわててバスに戻った。

午後3時半。バスは僕たちを乗せて、再びパリに向かって出発した。

モン・サン・ミッシェルもこれが最初で最後なのだろうか?
また、来ることがあるのだろうか…?

 

 

 遠ざかって行くその姿を、往路と同じように、バスの中から写真を撮る。

 どんどん遠ざかる。
 風景をしっかりと目に焼き付ける。


 


 牛と羊たちとモン・サン・ミッシェル。

 おとぎの国のような一場面であった。

                           

 

 

 

 

コメント (8)
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