最近大活躍の二人の作家。
ジョージ・R・R・マーティンとダン・シモンズだ。 いずれも随分前からのご贔屓作家である。
ジョージ・R・R・マーティンは以前は小味な短編作家という感が強かった。 フィーバードリームのような長編もあるが、R・R・マーティンといえばワイルドカードシリーズとかサンドキングスとか、巧みな技巧と感傷性を併せ持つ、佳品の作者という印象が強い。 そしてダン・シモンズと同様にSFとホラーの二足の草鞋を履く。
しかし何時の頃か(十数年前?)突如として大長編を書き始めた。 それもファンタジーと銘打たれてはいるが、実質歴史小説に限りなく近い。 ファンタジーにつきものの超自然的要素はほとんどなく(皆無ではないが)、ヨーク家とランカスター家の薔薇戦争を下敷きにした、ひたすら暗く長い物語である。 このあたりはファンタジーと言っても、惰弱柔弱なアン・マキャフリーなどとはまるで違う。
「氷と炎の歌」シリーズである。
とにかく長い、でかい、重い。 1巻が枕より厚いハードカバーが2.3冊からなっていて、文庫本なら5.6冊以上にもなる。 それが今まで邦訳されたものだけで4巻、枕どころか全部並べればベッドの替わりになる。 手に持って読んでいると、重さで腕が痛くなってくるほどのボリュームなのだ。
しかしなんとも面白い。 読み出すとカッパえびせんより止まらない。 読み終わるまで息もつかせないとはこのこと。 内容的には随分と暗く救いのないものだが、読後感はそれほど陰湿ではない。
膨大で多彩な登場人物のそれぞれの個性の書き分けのうまいことは驚くほどであり、これらの人物の綾なす運命の糸を辿れば、心はウェスタロスの大地へ飛ぶ。
この大作、全7巻になる予定らしいが、邦訳は現在4巻迄しか出版されていない。 第6巻はほぼ完成してようなので、早期の邦訳が望まれる。
ダン・シモンズは、ナチス時代に端を発する超能力者同士の争いを描いた、「殺戮のチェスゲーム」など、当初から大作の多い作家だった。 彼もホラーとSFの二刀流である。 クーンツも売れない時期にはBC級SFを量産していたから、アメリカではこれらの両刀使いはかなり多いようだ。
しかし、私がシモンズを読み始めた時期には、どちらかというとホラー作家という印象が強かった。 夜の子供たちやサマー・オブ・ナイトの頃である。
それがハイペリオンシリーズで一気にSF作家としても長点に立ったのだ。 その後オリュンャX・イリアムという、とんでもない途轍も無い、誇大妄想狂というか統合失調症というか、狂人の紡ぎ出す夢といえば良いのか、そんな超大作を立て続けに発表した。
ホメロスの叙事詩にあるギリシャ神話の神々が実際に登場(無論小説の中にだが)するが、それが呆れたことにナノテクで強化されていて、文字通り神のごとき能力を持っている。 その戦いに紛れ込んだ現代人は・・・というお話し。
このあたりのとち狂いぶりは、フィリップ・ホセ・ファーマーの階層世界ものやリバーワールドシリーズと少しばかり似ているが、ダイナミックさはシモンズが遙かに勝る。
無茶苦茶なお話しが大好きという方には、無条件でお勧めできる。 逆に言えば物語はとことんシリアスでなければ・・・という方には、全くお勧めできない。 恐らく最初の20ページ位で投げ出す、いやぶん投げると思うので。
正月用にラリー・ニーブンの本を大量に買い込んだ。 アバロンシリーズやプロテクターなどノウンスペースもの、それに懐かしやドリームパークなどだ。 いずれも再読三読のものばかりだが、それでも充分楽しめる。
おまけに、1-3巻は共通の末メですが、4巻からは異なる末メとなり、登場人物などの固有名詞が前巻迄と全く異なってしまう、というあまりよろしくない末フせいもあり、決して読みやすいとは言えませんね。 後ハードカバーで揃えると高い!
しかし歴史小説系の本が好きであれば面白いことは保証付き、お正月にでもゆっくりとひもといてみてください。
当時の記憶ではファンタジーというよりは中世の封建制を扱った歴史小説という印象を強く受けました。いい機会なので再度頁を開いてみたいと思います。