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業界最高年齢社長Halのゲーム日記 その890 煙福亭奇譚その3編

2013-10-11 08:58:00 | おもしろ不思議
さてさてさて、今回もゲームともS.T.A.L.K.E.R.ともstalkerともストーカーとも、はたまたMODとも全く関係ないお話し。

近未来、ある法令が制定されたら、ある種の「ストーカー」が存在するようになる・・・ そして「スモークイージー」とは?

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この仮想妄説シリーズは、フィクションであるという保証はありません。

煙福亭奇譚 その3

煙福亭の中は十数人の先客がいた。 思い思いに椅子に座りくつろいでいた。 紫煙が漂い、芳ばしいヴァージニア葉の芳香が立ちこめている。

奥にはお定まりのカウンターがあり、バーテンの源さんがシェーカーを振っている。 このあたりは普通の酒場と全く同じだ。 ただ、酒以外に煙草を出す所は全く異なる。

ここの客達は皆強い連帯感を持っている。 それはそうだろう。 全員が見つかればすなわち死に至るという、重罪を犯しているのだ。 連帯感がない方が不思議だ。 もっとも、俺達には重罪を犯しているという意識はないのだが・・・

ともあれ煙福亭はのどかだった。 俺は手近の椅子に座り、煙草に火を付けて深々と吸い込んだ。 喉への軽い刺激と痺れるような陶酔感。 至福の一時とは正にこのことだ。


隣の席の話し声が聞こえてくる。

「柴田さんも昨日やられたそうだよ」
「えっ! 柴田さんもやられたのか」

「ああ。 見事な最後だったそうだ。 射殺される直前に、摘発員に向かって堂々と持論を叫んだそうだ。 それだけじゃない。 撃たれた直後には、内ャPットに入れていた煙草を取り出して、摘発員に見せたということだ」

「それは凄い。 私にもその位の覚悟があればなあ・・・」


これは・・・ 俺が昨日目撃した紳士のことだ。 あの時手にしていたのは煙草だったのか。 確かに凄い。 筋金入りのスモーカーだ。


俺は席を立ち、隣席の二人の客に挨拶した。 二人共前に何度か見たことのある人達だが、話を交わしたことはなかった。

「失礼します。 実は私、昨日その柴田さんという方の最後を目撃した者です」

「えっ! あなた目撃されたのですか。 是非その時の様子を教えてください」「さ、どうぞこちらへ」

俺は隣の席に移った。 そして俺の目撃した始終を語った。 二人共感無量といった様子だった。

「そうでしたか・・・ 私らにはとてもまねの出来ないことです」
「柴田さんは肝が据わっていたからなあ・・・」

話はこのご時世のことに移り、慨嘆と郷愁の言葉が積み重なり、暫しの時が流れていった。


「静かに!」
俺達は一斉にその声の方角を注視した。
バーテンの源さんの声だった。

「手入れかも知れない。 皆さん、ご用意を」

俺達は一斉に動いた。 ドアにテーブルをもたせかけ、つっかい棒にする者、戸棚の銃を取り出す者、非常脱出口をチェックする者、それぞれが無駄なく素早く無言で動いた。

このような事態に備えて、何度か演習をしていたのだ。 できるなら無用のものであって欲しかった演習を。 その演習が役に立つ時は、俺達の人生の最後の時なのだから。

やがて荒々しい足音がドアに向うから聞こえ、声がした。
「喫煙者摘発所の者だ。 ここを開けろ!」

「開けられるもんなら開けてみな」
誰かが叫んだ。

返事はアサルトライフルの一斉射撃だった。 こちらも一斉に発砲した。 

室内は煙草の芳香の替わりに硝煙の臭いが充ち満ちた。


源さんが叫んだ。

「ここは私が食い止めます。 皆さんは非常口から脱出してください。
 さあ、早くっ!」

非常口は外のマンホールへと続いているのだ。 緊急事態に備えての避難路だった。

その声に客の一人が非常口のドアノブに手をかけた。 その瞬間ドアが爆発し、客は吹っ飛ばされた。 そして非常口の奥からはフルオートの乱射。

しまった! こちらにも手が回っていたのか・・・ 銃口をそちらに向けようとした瞬間、俺は胸に衝撃を感じた。 床がゆっくりと近づいてくる。 俺は手近の椅子につかまり、辛うじて唐黷驍フをふせいだ。

室内にはもう立っている者は誰もいないようだ。 それを見届けた瞬間床が更に近づいた。

ドアが開き誰かが入ってきたようだ。 

「監査官殿、全員制圧いたしました」

「うむご苦労。 ここはもう用もなさそうだな。 お前達全員引き上げてよろしい」

この声は・・・

「はっ! しかし、まだ危険があるのでは・・・」

「なに、もう手向かう気力のある奴などいないだろう。 現場検証は警察がやってくれるし、俺達のすることはもうない。 さっさと行け」

まさか、あの人が・・・

「はっ! では失礼します」
足音が去ってゆく。


そうか、そうだったのか・・・ やはり奇跡などこの世には存在しないのだ。 信じられない程の幸運などあるわけがない。 これは全てシナリオ通りの進行だったのだ。

大原という人物は、恐らくは摘発所直轄の監査官、又はそれに似たような機構の者だろう。 彼は俺に目を付け、泳がせていた。 だから他の摘発所の摘発員が、俺をしょっぴこうとしたのは迷惑千万なことだった。

俺を張っていれば、後少しで新たなスモークイージーを発見できるのに、ここで摘発されては元も子もない。 だから彼は俺を助けたのだ。 俺はお人好しにも大原に感謝し、そして煙福亭迄奴を連れてきてしまったのだ。 しかし、どうやってあのセキュリティをクリアしたのだろう?


足音が俺に近づいた。

「こやつのおかげでセキュリティも楽に突破できた。 あの時こいつに解析器を貼り付けたとは、お釈迦様でも気がつくめえ。 道案内はしてくれるは、セキュリティ解析はしてくれるは、お前はほんとに役に立ってくれたよ。 もっとも、死んでしまってはいくら感謝されてもしょうがないだろうがな」

あの時・・・ 俺に手を貸して立たせてくれた時か・・・ 俺の軽率さ故に、自分だけでなく同志達迄破滅に陥れてしまった。 今更謝ってすむことでもないが、もう全てが終わる。 だんだんあたりが暗くなってきた。 床の木目ももう見えない。


そしてかすかな金具の音と煙草の匂い。 微かに聞こえる遠い声。

「ふふ 一仕事終わった後の一服はこたえられんな。 
これでここの煙草も全て俺のもの。 大分ストックが増えたな」


@ケ



業界最高年齢社長Halのゲーム日記 その889 煙福亭奇譚その2編

2013-10-11 08:31:00 | おもしろ不思議
さてさて、今回もゲームともS.T.A.L.K.E.R.ともstalkerともストーカーとも、はたまたMODとも全く関係ないお話し。

近未来、ある法令が制定されたら、ある種の「ストーカー」が存在するようになる・・・ そして「スモークイージー」とは?

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この仮想妄説シリーズは、フィクションであるという保証はありません。

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煙福亭奇譚 その2

「まあまあ、ここはおだやかにおだやかに」

なんとも場違いな悠長な言葉とにこやかな笑顔。 それは俺の家のすぐ近くに済む大原氏のものだった。 大原氏は確か公務員とか聞いていたが、実におだやかで親切な人柄で誰からも好かれ、俺も懇意にしていたのだ。

それにしても摘発員の摘発を制止するとは・・・ なんという肝の据わった人だろうか。 問答無用で射殺されても文句は言えないのに・・・

「あんた誰だ? 余計な口出しはやめてもらおう」
もの静かな口調がより凄みを感じさせる。

「いえ、いえね。 口出しなんかいたしませんよ。 ただ、何かの間違いだと思いましてね。」

「間違いかどうかは俺が決める。 なんならお前も一緒に所まで来るか」

「いえいえ、そんな・・・ ただ、この人はそんな大それたことをやる人じゃありません。 この人は人畜無害完全無公害の見本みたいな人物です。 それはこの私が保証いたします。」

摘発員は鼻で笑った。

「お前の保証などなんになる。 これ以上ごちゃごちゃいうなら、二人共しょっぴいて行くまでだ。 さあ、一緒に来い!」

「あ、すいませんすいません。 お上に手向かうつもりなんかありません。 ただ、この人の無実を保証したかっただけです。 あ、申し遅れましたが、私はこういう者です」

大原氏は優雅な動作で内ャPットから名刺を取り出し、摘発員に渡した。

名刺を見た途端、摘発員は眉をひそめた。 そして暫く無言のまま何事かを考えている様子だった。

「まあしょうがない。 今回は見逃してやろう」

仏頂面でそれだけ言うと摘発員はきびすを返して去って行った。


俺は安堵の余りその場に蹲ってしまった。 助かったのだ。 そう思うとまるで身体の中から暖かい塊が湧いて出て、それがとろけて行くような気分だった。 

大原氏が手を添えて俺を立たせてくれた。 俺は未だ礼も言っていないことに気づき、丁重に礼を述べた。 そして、何故冷酷で鳴る摘発員が大原氏の言葉で考えを変えたのかを尋ねてみた。

「いやあ、私は公務員の行動や費用を査定する部門に在籍していましてね。 つまりはお役人も人の子ってわけですよ」

なるほど、そういうわけだったのか。 大原氏の仕事は財務省関係のものらしい。 それも公務員の人件費の監査とか調査とかの部門なのだろう。 だから摘発員の給料もある程度はさじ加減できる、ということなのだろう。

あの摘発員も、ここで大原氏の口出しをむげに断れば、自分の懐に響くかも知れない、ということを考えて、俺を釈放したのだろう。


それにしても、あの瞬間に大原氏のような人物が近くにいてくれたとは、信じられない程の幸運だ。 こんなことは一生に一度あるかなしのことだろうが、それが今俺に起こったのだ。 これは奇跡としか言いようのないことだ。 俺は神は信じないが、この時ばかりは神に祈りたい気分だった。


「なになに、大したことじゃありませんよ。 それじゃまたお会いしましょう」

大原氏はくどくどと礼を述べる俺を遮り、軽く手を振って去っていった。 まるで何事も起こらなかったように・・・



艷福亭は目の前だった。 艷っぽい名前とは裏腹に、どこと言って特徴のない、どちらかといえばうら寂れた喫茶店である。


もう一度周囲をチェックした上で、俺は中に入った。 そこそこの広さの店内には客が数人、飲み物を飲みながら新聞など読んでいる。 その中には顔なじみもいたが、挨拶をする者は誰もいなかった。 俺はいつもの席に座り、ウインナーコーヒーを注文した。

顔なじみのウェートレスが運んできたコーヒーを飲みながら、客を観察する。 顔なじみでない者もどうやら問題はなさそうだ。 俺は機を見てトイレに立った。


この店はごくふつうの喫茶店「艷福亭」だ。 種も仕鰍ッもない、ただの喫茶店だ。 しかし、トイレの隣の狭い清送p具置場には種も仕鰍ッもある。

その狭苦しい清送p具置場に入ると、奥には小さなドアがある。 それを開けるには、ICカード、網膜と掌紋のチェック、更には乱数表を用いた日替わりの暗証番号と、三重のセキュリティを通る必要がある。

俺はそれらのセキュリティチェックをクリアした。 ドアが開くと狭い階段が見える。

地下へ降りると、そこはスモークイージー、いわゆる『煙場』だった。 愛煙家のサンクチュアリ、最後の至聖所、カナンにも等しき安息の地。 これが「煙福亭」である。 一階の『艷福亭』は仮の姿、真の姿がこの地下の『煙福亭』である。 

度重なる手入れで数は次第に減ってはきたが、この手の煙場はまだかなりあるらしい。 とはいえ俺の知っている煙場はこの煙福亭だけだ。





俺はこの数年の迫害の日々を思いやった。

ヒステリックな嫌煙主義者が次第に勢力を得て、やがて「喫煙禁止法」が制定された。 当初の刑罰は罰金刑程度だったが、狂的な嫌煙主義者達の主張で次第に刑罰は重くなり、禁固刑から懲役刑、ついには喫煙者は「反社会的喫煙者更生収容所」に収容されるようになった。

この長たらしい名称は、僅かの間に単に『収容所』という名称で呼ばれるようになった。 日本には他にこの種の収容所はなかったからだ。 

この収容所の冷酷さ無惨さは、一頃のハンセン病者収容所を遙かに上回り、これに匹敵するものは第二次大戦中のアウシュビッツ位しかないだろう。

この収容所の目的は、表向きには「反社会的な喫煙者を更生させる」というものだが、ここに収容された人が出所したという話しは、一度たりとも聞いたことがない。 入った人はいても出た人はいない。 行きて還らぬ死出の旅・・・

一説には、内部にガス室があり、収容者は煙草の煙のガスでいぶし殺されるという。 もっとも、見てきたようにそう言う者も、実際に収容所に入っていたわけではないから、信憑性は余りないが・・・

そのようなやくたいもないデマでさえ、それを話す時には周りを見回して「喫煙者摘発員」がいないことを確認した上で言うのである。 この「喫煙者摘発員」も喫煙禁止法の一項で定められたもので、当初は喫煙者を密告する為の民間人の組織だった。

喫煙禁止法制定以前にも、この手のお節介なオバハンはたんといたが、その頃は別段喫煙が法律で禁止されていたわけでないので、法的拘束力は全くなかった。 単に「煙草は喫煙者以外の人々にも、にも受動喫煙による害があります。 喫煙者たるあなたがたは、人類に対する加害者なのです」とか無茶苦茶なことをわめいているだけの、こうるさい存在に過ぎなかった。

「アホ抜かせ。 煙草を吸って人類に対する加害者になるんなら、クルマはどうなんだ。 クルマの排ガスの毒性は、煙草の比じゃありませんで。 

クルマの排ガスを車内に引き込めば、あっという間に死んでしまうが、車内で煙草を吸っても死ぬ人などいない。 それじゃ、クルマの運転者はみんな人類に対する加害者か?」と、愛煙家は反論していたものだった。

ところがそれから数年、喫煙禁止法が制定されてしまい、状況はがらりと変った。

この摘発員、当初は隠れて喫煙する人物を警察に通報する、というだけの組織だったが、その権限も次第にエスカレートして、現在では喫煙者又は喫煙をする恐れのある人物の拘束も出来るようになった。

この「喫煙をする恐れのある者」というのがくせもので、何も証拠がなくても、摘発員が「喫煙をする恐れのある者」と認めれば、誰でも拘束できるというのが実情だ。

今では、泣きわめく子供を叱る時に、「おとなしくしていないときつえんしゃてきはついんに連れていかれるぞ」と脅す程になった。


喫煙者達の中には、摘発を恐れて禁煙する者も多数いた。 しかし、筋金入りの喫煙者は喫煙禁止法にもかかわらず、喫煙を続けた。 収容所の恐浮煖i煙者摘発員の陰険な目つきも、彼らの意志をくじけなかった。

とはいえ、公共の場は勿論自宅内でさえ、喫煙は重罪の時代である。 人目につく場所での喫煙は不可能だ。 そのような行為は即収容所行きを意味する。 入ったが最後、誰も出てきた者のいない収容所に・・・

こうして秘密裏に会員制の非合法喫煙所が生まれた。 

彼らは1920年代アメリカの禁酒法時代、秘密裏に酒を飲ませる酒場「スピークイージー」をもじった、「スモークイージー」という非合法喫煙所、いわゆる「煙場」に集うようになった。

煙福亭奇譚編 その3へ続く



業界最高年齢社長Halのゲーム日記 その888 煙福亭奇譚編その1

2013-10-10 08:26:00 | おもしろ不思議
さて、今回はゲームともS.T.A.L.K.E.R.ともstalkerともストーカーとも、はたまたMODとも全く関係ないお話し。

近未来、ある法令が制定されたら、ある種の「ストーカー」が存在するようになる・・・ そして「スモークイージー」とは?

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この仮想妄説シリーズは、フィクションであるという保証はありません。

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煙福亭奇譚 その1


街角を曲がる都度、俺は何度も周囲をチェックした。 俺がこれから行く所は、絶対に覚られてはいけない所だ。 もし万一あの場所を知られたら、俺が捕まるだけではなく、他のメンバーにも生命の危機が迫る。 ここだけはなんとしても、奴らに知られてはならないのだ。


昨日の光景を思い出すと、腹の底に冷たい塊が生れ身震いが起きてくる。

中年をやや過ぎたかと思われる身なりのいい紳士だった。 彼はゆったりとした足取りで歩いていた。 そこは盛り場とは言えないが、さりとてうら寂れた裏町というわけでもない。 まずはどこにでもある普通の街角という所だった。

その紳士の脇に、一人の男が寄り添った。 一見ごく普通のおとなしそうなサラリーマン風の男だった。 男は紳士に何事か話しかけた。 紳士は首を振って否定しているようだった。

男が紳士の腕に手をかけると、紳士はそれを振り払って走り出した。 男はその後を追い、紳士の行く手をふさぐように数名の男が現れた。 いずれも一見ごく普通の、特徴のないのが特徴という男達だった。

包囲された紳士はなにごとか叫んだ。 俺のいた位置からは若干の距離があったし、俺自身も動転したいたので、全ては聞き取れなかったが、およそこんな内容だったと思う。

「なぜあんたがたはほっといてくれないんだ! 私がやっていることはそれほど悪いことなのか? 誰にだって一つや二つ・・・なことがあるだろう? それが・・・  」


紳士は内ャPットから何かを出した。 包囲した男達も同様に内ャPットから何かを出した。 そして銃声と硝煙・・・ 血に染まって崩れ落ちる紳士の手に何かがあったが、それは拳銃ではなかった。


俺の近くでこの惨劇を見ていた学生風の若い男が呟いた。
「なにも殺さなくても良さそうなもんだよなあ。」

その連れの男が言う。
「だけどよお。 あれで捕まれば収容所送りだろ。 生きて出た奴はないって噂だぜ。 なまじ収容所でじわじわといたぶられるよりは、ひと思いに死んだ方がましじゃないのか。」

「だけど人を殺したわけじゃないぜ。 ただアレをやってたってだけだろ。 問答無用で撃ち殺されるほどのことかねえ。」


やや高くなったその声に、一見サラリーマン風の男の一人が振り向いた。 鋭く冷たい眼、薄い唇、彼はもはやごく普通にもおとなしそうにも見えなかった。 

「お前達何か文句があるのか。 あるなら『所』で聞いてやろう。 一緒に来い!」

「も、文句なんかありませんっ!」
「さ、さよなら」
学生風の男達は慌ててきびすを返し、宙を飛ぶように逃げていった。

サラリーマン風の男(というより『摘発員』とはっきり言った方が良いののだろう)は、酷薄な冷笑を浮かべてそれを見送っていた。



この時代、『アレ』をやるということは、いつ何時この紳士のような最後を遂げても良いというだけの覚悟がいる。 『摘発員』は物的証拠がなくとも被疑者を拘束して『摘発所』に連行できるし、摘発所での拘束と尋問にも期限はない。 被疑者を拘束するのにも、摘発員が「その疑いがある」と認めれば、それで通るのだ。

摘発所に連行された者が疑いは晴れた筈なのにいつまで経っても釈放されず、そのまま収容所送りになったらしいという話などゴマンとある。 拘束される際に反抗すれば、この紳士のように射殺されることも希ではない。

しかし、若い男が言っていたように、収容所に送られるよりはここでひと思いに死んだ方が、まだましなのかも知れない。 全国に何カ所かある収容所から釈放されたという人間を、一人として俺は知らないのだ。 

その内部でどのようなことが行われているかも、単なるデマ、噂、風説の類しか聞いたことはない。 とはいえ、漏れ聞かれるその噂は、血を凍らせる程恐ろしいものばかりだった。

曰く「ガス室」、曰く「生体解剖室」、曰く「自分を埋める穴を掘らされる」等々。 まるでナチスのユダヤ人収容所か満州の731/1644部隊だ。 今時そんなものが存在するとは信じられないような気もするが、収容所は現実に存在するし、俺の知人にもそこに送られた人物がいる。 
一二年前のことだが、その後彼の消息は彼の家族にさえ全く不明である。

そして彼の家族さえも、周囲の冷たい視線に耐えられなくなったのか、いつしか住み慣れた土地を離れていったと聞いている。



俺は長い物思いからさめて、慌てて周囲を見回した。 幸い周囲には怪しい人物はいないようだ。 この時代、うっかり物思いにふけるという行為は、死に繋がる場合もある。 絶えず周囲に気を配り、警戒していなければならないのである。 特に俺のような立場にいる者は尚更のことだ。

俺は大きく息を吸った。 緊張の余りしばし息を止めていたのだ。 そしてゆっくりと歩き始めた。 あそこまではまだ少しの距離がある。 焦ってはいけない。 急いではいけない。 あからさまに周囲を伺う様子を見せてはいけない。 胸を張って顔を上げ、落ち着いてゆっくりと歩くのだ。

摘発員がまず目を付けるのは、おどおどびくびくしている者、絶えず周囲をうかがっている者、うつむいて小走りに歩く者などだと聞いている。 要は「私は世間をはばかる者です」という風に見えなければいいのだ。


そのように歩いていたつもりだった。 しかし他の人にはそのようには見えなかったのだろう。 角を曲がった途端、後ろから俺は腕を掴まれた。 

「ちと一緒に来て貰えるかな」
感情のこもらない乾いた声が耳元でささやいた。

俺にもこの日がついにきたのか・・・ 覚悟は出来ていたつもりだが、実際にこの声を聞くと、膝ががくがくと震えるのが自分でもわかる。 立っていられるのが不思議な位だ。 視野狭窄というのか、真正面のごく狭い角度しか眼には映らない。 深い洞窟の中から入口を見ているように・・・


「来て貰えるかな」といっても、これは依頼でも質問でもない。 「いやです」と断れば、昨日の紳士のように銃で撃たれ、路面を朱に染めて唐黷驍フだろう。

といって、おとなしくついて行けば、このまま摘発所に連行され、そして収容所行きとなることは、100%間違いない。 いくら「私はやっていない」と主張しても、摘発員に眼を付けられた時点で、俺の運命は定まっているのだ。


俺は思いきって振り返ってみた。 そこには無表情な冷たい仮面のような顔の男がいた。 どこといって特徴のない、しかし人間的な暖かさはかけら程もない男だ。

このまま走って逃げるか。 或いはかなわぬまでもここで闘うか。 それともおとなしく一緒に行くか。 どの選択肢も全て死に直結している。 そして俺にはこの三つ以外の選択肢は存在しない・・・

俺は覚悟を決めた。 こうなった以上どうせ死ぬのだ。 いや、摘発員に腕をつかまれた時点で、既に俺は死んでいるのだ。 ならば何もしないで収容所に送られるよりは、ここでこいつと差し違えて死んでやろう。

差し違えるといっても、武器もない俺に出来ることは限られている。 せめてこやつののど笛に食らいついてやろう。 恐らくはその前に銃弾が俺の身体を引き裂いているのだろうが・・・

俺は摘発員の喉を目指して飛びつこうとした。 摘発員の手が内懐に入るのが見えた。 一瞬の逡巡もない、ひらめくような、実に素早い動きだった。

人間は死の瞬間に一生の間の全てを思い出すという。 俺の場合は、一生と迄はいかないが、それでも充分色々なことが頭にひらめいた。 こやつはこの素早い動きを随分沢山やってきたのだろうな。 こやつのおかげで何人の人間が死んだのだろう。 こんなことになるのなら、もっとアレをやっておきたかった。 

中でも一番強く思ったことは、もし生まれ変われるものなら、今度生まれ
る時はもっと良い時代に生れたかったなあ、ということだつた。 せめて
アレをやる位で問答無用で殺されたりしない時代に・・・

しかし銃弾の衝撃を感じることはなかった。 俺と摘発員の間に誰かが割って入っていたのだ。

煙福亭奇譚編 その2へ続く



業界最高年齢社長Halのゲーム日記 その880 串浮「編

2013-10-02 08:16:00 | おもしろ不思議

饅頭浮「ではなくプロクシ(プロキシ)浮「というお話し。

最近(2年ほど前から?)S.T.A.L.K.E.R.関連のDLサイト、gamefrontでは日本のIPをはじいている。 不心得な良からぬ奴らが悪さをしたのでパージされているらしい。

やむを得ずmoddb(要登録)経由でDLしているが、gamefrontにしかないものもあるので、串も併用している。 最初は手書きでLAN設定を書き換えていたが、最近よいものを見つけた。

Free Rapid Downloderというもので、これは複数のプロクシを並行して使えるので、並行DLも可能というすぐれものである。 日本語化も日本語ファイルの導入で可能。 

他にもUSDとかJLOADERなどの類似ツールもあるが、私の場合は串の使用頻度は非常に低いし、gamefrontなど日本のIDではアクセス出来ない特定のアップローダしか使わないので、FRDに特に不満はない。

尚、このFRDはブラウザではない。 smile Downloderなどと同様に単独のDLツールなので、IEなどでのLAN設定変更は不要である。 そのかわりIPを隠して通常のサイトに接続するなどの使い方はできない。 悪用無用(笑)

http://www.gamefront.com/
http://stalker.filefront.com/

Free Rapid Downloder
http://wordrider.net/freerapid/download.html

FRDの日本語化
http://tiltstr.seesaa.net/article/235252671.html


ところが、残念ながらこのFRDでは繋がらないケースが多くなってきた。 どうやらIPがマークされているサイトが多く、結局蹴られるということらしい。 

そこで新しいツールを探したら、以下のようなものが見つかった。 これは接続元をアメリカイギリスドイツなどに変更して接続できるというもので、これならほとんどの場合問題なく接続できる。

OkayFreedom
http://www.okayfreedom.com/

有料版と無料版があるが、無料版は月あたり1GBの容量制限がある。 無料版のDLは、Download OkayFreedom for free」をクリックする。

詳しい説明はこちら。

http://gigazine.net/news/20121104-okayfreedom/


プロクシというのは結構浮「ものらしい。 考えてみれば、全くお金にならないプロクシサーバーを善意だけで立てる人もあまりいないのではないか。 となればなんらかの目的があるケースも考えられる。

その「何らかの目的」が使用者に被害が発生しないものならば問題は無いのだが、使用者情報の抜き取りとかだったなら大変である。 なにより、数多いプロクシサーバーのどれが安全でどれが危険なのかという情報など、この世に恐らく存在しないだろう。

FRDの場合はブラウザではないのでそれ自体はまず安全と思うが、FRDで指定する串が安全かどうかはまずわからない。 FRDに悪意ある串サーバーへの情報漏出を防ぐ機能があるのかないかはわからないし、あったとしてもどの程度有効なのかもわからない。 ブラウザ直の串よりは危険性は少ないような気がするが、それもどこまでの安全性なのか、これまたわからない。

まあ、この種の安全性危険性なんて、わからないことばかりだろう。 ドンピシャでこれは危険これは安全と一目でわかれば、ウイルスにやられる人などいなくなる。(笑)


業界最高年齢社長Halのゲーム日記 その625 麻生さんが・・・ 渋いというか浮「編

2013-02-18 16:42:00 | おもしろ不思議
麻生さんが・・・ 渋いというか浮「というか(笑)

G20に出席した麻生副総理が話題になっている。 と言っても発言の内容とかではなく、そのお姿がである。

https://twitter.com/himaginari/status/302254556849528832
http://livedoor.4.blogimg.jp/dqnplus/imgs/f/1/f19aa037.jpg

これで葉巻を喞えてトミーガンをかかえていれば、まんま往年の名優(ギャング映画の)エドワード・G・ロビンソン。

夕暮れの新宿あたりで、
「おう! わけぇの!」

とか声をかけられたら、おしっこをちびりそう・・・