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変身

2024-07-29 15:45:32 | 日記


                      HAL     中村清治




ベッドの上で目覚めた長脛康夫は眼を開けて天井を見た。
見慣れた官邸の天井だった。
しかし今日は何故かいつもと違うように見える。
睡眠から覚醒へ移るあのはんば覚めたはんば夢遊の時間のせいかと思ったが、その
時間が過ぎて完全に目覚めてもなにか不自然な感覚は去らなかった。


やがて長脛はその不自然な感覚は天井のせいではなく、彼自身の肉体が訴えている
ものであることにに気がついた。
背中が重苦しく突っ張って傷み、腹の筋肉もこわばり手足の力が失せてさっぱり力
が入らない。


先日のゴルフが今ごろになって響いて来たのかなと思った。
あの時はついつい熱が入りすぎて少しばかり無理をしてしまった。
俺ももっと身を入れて健康管理をしないと、うまくない。
ヤスみたいにガンになった時は日本とアメリカとでは反響がだいぶ違うから、僅か
の兆候でも政治的生命は終わりになる。
三選をかちとるためにもタバコの吸いすぎとゴルフのやりすぎには注意しよう。


毛布をのけて起上がろうとした彼は、自分の手がとんでもなく細くなっているのに
気がついた。
その手はまるで萎びたゴルフのクラブに剛毛が生えたようなしろものだった。
毛布をはねのけることさえままならぬのである。
しかも身を起こすことも不可能だった。
背中が突っ張り腹もこわばって三十度程しか体が起こせない。
声を上げて家族を呼ぼうとしたが彼の口からは歯ぎしりのような情けない音しか出
てこなかった。


やむなくベッドの上で反転してうつ伏せになろうとしたが、これがまた困難で、左
右に身を揺すり反動をつけてうつ伏せになろうと試みた。
その試みは成功したように見えたが、うつ伏せになったとたん彼はベッドからはみ
出し床に落下した。
したたかに腹と手足を床に打ちつけて彼は悲鳴を上げた。
しかしその悲鳴もやはり歯ぎしりのような哀れなものであった。
凄まじい苦痛が全身を駆けめぐり涙で視界が歪んだ。


やがて苦痛が遠のき手足に感覚が戻って来ると、彼は手と足を一本ずつ動かしてみ
た。
六本の手足は全て無事で折れたものはないようであった。
六本?
長脛は自分の手足を確認しようとしたが彼の眼は肉体のごく一部しか見ることがで
きなかった。
萎びたクラブのような剛毛の生えた手と何かわからぬが細長い触覚のようなものが
眼の前にぶら下がっていた。
彼は恐る恐る体の向きを変えてみた。
六本の手足は脳の命令に従って不器用に動いて、彼は寝室の壁の方に向き直った。




その壁に掛かっている鏡が見えた。
鏡には不気味な怪物が映っていて彼を睨んでいる。
細長い黒茶色の胴は楕円形かつ扁平で脂ぎったぬめぬめとした光沢を放ち、その胴
を細い脚が支えている。
薄い翅のようなものがその胴にたたみこまれていて、頭部には長い触覚が震えてい
る。
ゴキブリに良く似ているが途轍もなく巨大なしろものだった。
鏡の中に一緒に映っているベッドと比較しても、長さは一メートル七十五センチく
らいはありそうだった。


恐怖に震える手足で後ずさると鏡の中の巨大な蟲も遠ざかった。
ここにいたっては長脛も認めざるを得なかった。
一夜明けると大きな蟲に変身していたのだ。


昨夜のことを思いだそうと試みた。
昨日の夕方に彼の派閥の懇談会があり、その後官邸に戻って家族と夕食をとり、夜
は寝室で秘書が届けた各種の報告書を読みながらコニャックを飲んだ。
ベッドに入ったのは十二時少し過ぎで、すぐ寝入ってしまった。
それまでの記憶ははっきりしており、こんなあやしげなしろものに変身するような
兆候は一切なかった。


だいたい私のような国家的英雄、国際的政治家がなぜ蟲ごときものに変身せにゃな
らんのか。
ウルトラマンやスーパーマンにへんしーんするのならまだ許せるが、一国の代表、
元首につぐ地位の者がゴキブリにへんしーんではテレビのアニメからも声がかから
ないではないか。
私が蟲に変身したことが知れたら人々は私をどのように扱うだろうか。
もうロンにもヤスと呼んで貰えぬかもしれぬ。


もうこんな悪夢はおしまいにしておこう、今日は閣議の後で国会の衆院予算委員会
に出席せねばならぬし、午後は靖国問題の打ち合せその他びっしりと予定が詰って
いる。
こんな小学生の変身願望のおつきあいをしている時間はないのだ。
さあ、つぶらな眼をぱっちりと見開いて悪夢を追い払い朝の身支度を整えよう、そ
ろそろ家内が起こしにくる頃だ。


しかしいくら眼を見開いても悪夢は終わらなかった。
依然として鏡に映るおのが姿は巨大な醜い蟲のままだった。


長脛の心に本物の恐怖が沸き起こり渦巻いた。
もしこれが夢幻でなく事実としたら、いや、これは紛れもない事実だが、国会に出
席どころではない。
ゴキブリが国会で所信表明演説をしたところで聞いてくれるものはいないだろう。


ゴキブリが注目を集めるのはゴキブリホイホイのコマーシャル位だ。
第一閣議に出席しても私を長脛と認めるものは誰もいないだろう。
閣僚どころか家内でさえ、この化け物が亭主であるとは認めないであろう。
早く元の姿に戻らなければ、しかしどうすれば人間に戻れるのか。
両手を揃えて左から右へ大きく円を描き、へんしーんと叫べば戻るかも知れぬ。


試してみた。
無駄だった。


へんしーんで駄目ならと、ちぇいんぐ、ななことびまーす、お前は既に死んでいる
、はてはあたたたたーっ、ひでぶー、ドンザラウエケマンヤカサスワキクンモワキ
グイシャスウォンイビタビリ、RAPE GIRL、なはははははははははははは
はははははははは、ハハニソウダンシテカラオヘンジイタシマス、オカスユミコ、
ついにはアブダカダブラー(懐かしいですねえ、徹子さん)、と知っているあらゆ
る変身コマンドや呪文その他のコマンドを試したがどれも役にたたなかった。


それにしても私の好みはいかにもロリコンっぽいなあ、これも日頃愛用しているロ
リコンソフトのせいかもしれぬ、PSKやNSIはそろそろ卒業して第五中業の勉
強でもしよう。角はいらなくなったが核は必要だからな。


彼が日本の将来とアダルトパソコンゲームの将来に思いを致していた時、寝室のド
アがノックされ夫人が入って来た。
いつまで待っても彼が朝食のテーブルに姿を現さないので叩き起こしに来たのだ。




「あなた、早く食事をなさらないと閣議に遅刻しますよ、先日みたいにわたくしが
言い訳するのはもう厭ですからね。
あの時は、主人は国鉄改革案に熱中していてつい時間のたつのを忘れまして、と言
いましたっけね。
まさかファイナルロリータに熱中していてつい時間のたつのを忘れまして、とは言
えませんものね、それにしてもあんな厭らしいもののどこが良いんでしょうねえ。

夫人はこの長ったらしいせりふを一息で喋った。
(その厭らしいところが良いんだ)と言い返したかったが生憎彼の口からは歯ぎし
りのような息のもれる音しか出てこなかった。


夫人は彼の姿が見えないことに気付き、視線を床に落とした。
次の瞬間山を揺がし海も裂けるような奇っ怪な大音響が官邸を振動させた。
(山を揺がし海も裂けるようなとは果たしてどのような音響であるのか、作者も耳
にした経験がないので良くはわかりませんが、多分あなたが他に女をつくりそれが
バレタ時の妻君の音声がそれに相当するのではないかと思われます。)


長脛もその大音響に仰天したが同時に他の人にこの姿を見られたくないという意志
が作用して、必死になって夫人に向かって話しかけた。
「おまえ、私だ、私だよ、康夫だ、お前の亭主だ、忘れたのか。」


忘れたのかというのはいくらなんでも無理な話で、馬鹿でかいゴキブリにお前の亭
主だと言われれば大抵の夫人は眼を回すだろう。
幸い彼の言葉は人類の言語とはならず、ただしゅうしゅうと息のもれるような音が
大半を占めていたが、それでも意志の力とは恐ろしいもので(というよりは作者の
いい加減な設定と作法のために)僅かながらも日本語の単語が夫人にも聞き取れた



ゴキブリが日本語を話すのをきいた夫人は失神することを一時中止して改めてその
むしけらを見やった。
それに力付けられ長脛は掻き口説いた。
「良く見てくれ、私だよ、わからないのか、姿形は変ってもあなたの声は忘れぬと
言ったではないか。
こんな情けない姿にはなったが私が私であることに変りはない。」


この頃になると彼も新しい発声装置にようやく慣れて何とか言葉らしいものが発音
できるようになってきた。
「あなた?
まさか・・・・・・」
「そのまさかなんだよ。
朝眼が覚めたらいつの間にかこんな姿になっていたんだ。
でも私であることに違いはない。
秘書や警備員に見られないようになんとかしてくれ。」


夫人はまだ信じられないように巨大な蟲が日本語を話すのを眺めていたが、寝室の
ドアがせわしなく叩かれるのを聞いて慌ててドアをロックした。
「なんでもありませんのよ。
ちょっと脚を滑らしただけよ。
主人もすぐに行きます。」


秘書の大川の声が言った。
「しかし・・・・・・
お怪我はございませんか。」
「大丈夫、なんともありません。
すぐ行きますから。」
不承不承大川たちは引き上げていったようである。


「それににしても」
と夫人は床のばかでかいゴキブリを見ながら言った。
「これがあなたとは・・・・・・
なんという情けない格好・・・・・・
親の因果が子に報い、変り果てたるこの姿・・・・・・」


「縁日の呼び込みをやってないで何か着るものをとってくれないか。」
「着るものとおっしゃってもその体では合うものがあるかどうか。」
「そうか・・・・・・
では仕方がない、このままで行こう。」
「行こうとはどこへ?」
「無論国会へだ。」
「えーっ、そのみっともない、いえその体でですか?」
「そうだ、いかんか?」
「いけないことはありませんが、しかしその格好では・・・・・・」


「ゴキブリの姿で何が悪い。
我国は四民平等、士農工商××○○○ゴキブリSF作家の差別のない国だ。
少なくともタテマエはそうなっとる。
トルコの、いや今は特殊浴場と言うのだったかな、看板にだって、暴力団関係者と
ゴキブリの入浴はお断りしますとは書いてないぞ。」
「トルコと、いえ、特殊浴場と国会とは違います。」
「似たようなものだ。
なにもつけない男と女がニャンニャンするかわりにバッジをつけた男どもがワンワ
ンいってるだけの違いだ。」


「そんな無茶な。
第一大川さんや閣僚には何といって説明するのですか。」
「うーむ、それは・・・・・・
いや、やはりありのままを話そう。
姿は変れど私であることを納得してもらおう。」
「そんなに簡単に納得するでしょうかねえ。」
「おまえだってこれが私であることを認めているじゃないか。」


夫人は首を捻りながらも彼の言うことにも一理あると思った。
確かにこんな醜い蟲を夫と認めるのは厭ではあったが、しかしいつの間にかそれを
長脛として認めているのだった。


寝室に入った大川は腰を抜かしそうになった。
夫人の傍らには巨大なゴキブリが長い触覚を大川に向けて揺り動かしているのであ
る。
そいつが人語を話すのを聞いて大川は完全に腰を抜かした。
そのむしけらが言うのである。


「大川君、今日は遅れそうだからすぐ出かけよう。」
「な、何者だ、いや何蟲だ、お前は。」
「何蟲ではない。
私だ、長脛だ。」
「そんな阿呆な。
一国の総理たる者はむしけらなんかじゃない。」
「蟲を馬鹿にするな。
一寸の虫にも五分の魂、六尺の虫には三尺の魂があるぞ。
BUGS BE AMBITIOUS 天は自ら助くる蟲を助く。
蟲こそ無私の立場で国民に奉仕する最良の存在である。
ソウリ虫と言うではないか。」
「それはゾウリ虫です。」


このやりとりで大川にもその蟲が長脛であることが納得できた。
なんとなればそのゴキブリの話し方が長脛の話し方そのものであったからである。


いい加減な設定と怪しげな論法でハチャメチャに断定する話法は、正に長脛独自の
ものであった。
(と同時に作者の得意技でもありますが・・・・・・)


巨大な蟲と人間の大川という奇妙なコンビが国会の一室に入ると、居並ぶ閣僚たち
が一斉に息を呑む音が響いた。


蔵相の陀鱠侈駝が喚いた。
「大川君、その化け物は何だ。
なんだってそんなものを神聖な国会に連れてきたんだ。」
「連れてきたんじゃありません。
私が連れてこられたんです。
それにこれは、いえ、この方は長脛です。」
「なにを馬鹿なことを。
そのゴキブリの化け物が長脛さんだと。」
「馬鹿なことではない。
私は長脛だ。」


閣僚たちはてんでに喚き始めた。
「ゴキブリが口をきいたぞ。」
「あの中に人間が入っているんだろう。」
「ぬいぐるみはテディベアかパンダかコアラと相場が決まっている。
ゴキブリのぬいぐるみなんてあるものか。」
「いや、最近は珍獣ブームだから新井素子あたりは喜ぶかもしれんぞ。」
「いくらブームだからってゴキブリのぬいぐるみを抱いて頬ずりする女の子などい
るものか。」
「いやわからぬぞ、近ごろの女の子は目立ちたがりやだから。」


大変な騒ぎになった。
長脛は声を張り上げた。
「諸君、聞いてくれたまえ。
私は正真正銘の長脛である。
どういうものか今朝眼が覚めたら蟲に変身していた。
理由はわからない。
しかし私が本物の長脛であることは証明できる。
誰か今週の合言葉を聞いてくれないか。」


外相の罅鐶餅が言った。
「ライトセーバー!」
間髪を入れず長脛が答えた。
「エケマスタロクデエントラクタフ!」
今度は内角官房長官の強盗田が言った。
「キータクラー!」
すかさず長脛は答えた。
「ドリムノート!」


閣僚たちがまたざわめいた。
「ムムッ正解だ。」
「我国の最高機密であるあの暗号を知っているとは・・・・・・」
「これはやはり長脛氏か。」


幹事長の蚊寝丸が長老らしく慎重に言った。
「まてまて、念の為にもうひとつ聞いてみよう。
先々週のパスワードじゃ。
オカスユミコ!」
「ウゴカスコシ!」
「ムムッ、されば
RAPE GIRL!」
「USE ROPE!」


大川は腹の中で呟いた。
(なにが最高機密の暗号だ。
自分達の趣味のロリコンゲームのコマンドじゃないか。
だいたい世界第二のGNPを誇る我が日本国の閣僚が、やれアリスだ、ななこSO
Sだ、ロリータⅡだとスケベソフトに熱を上げて、閣僚会議のパスワードにまでロ
リコンソフトのコマンドを使うようじゃ、日本国の前途は暗いなあ。)


そう、長脛だけではなく閣僚の全員がアダルトソフトの熱心な愛好家なのであった

従って閣僚会議のパスワードも先々週は「天使たちの午後」と「ロリータⅡ」から
、先週は「ななこSOS」と「ロリータ シンドローム」から、今週は「アリス」
と「ウィングマン」から、それぞれとられていて、会議に先立って閣僚たちはその
パスワードで彼らの秘密の趣味をお互いに確認し合うのであった。!
余りの阿呆らしさに秘書たちは日本国の未来に大いなる暗雲を見ていたのであった



秘書たちの嘆きをよそに閣僚たちはそれぞれごひいきの美少女たち、たとえば長嶋
エミーであるとか、あるいはアリス、あおいさん、ななこ、白石由美子などのハー
ドプリントをお互いに見せ合い自慢し合っていたのである。


「いかがかな、これで私が長脛本人に間違いないことは証明できたと思うが。」
幹事長の蚊寝丸が言った。
「むむ、確かに貴公は長脛康夫。
したが、なんとなされたその姿、親の因果が子に報い・・・」
「その台詞はすでに今朝がた家内に聞かされています。
なぜ私が蟲に変身したのかわかりません。
なんとなくクリスタルにいや、なんとなくゴキブリにへんしーんしてしまったので
す。」
「限りなく無限に近く悲しい話ですな。」


閣僚会議は奇妙な雰囲気の中で進められた。
なにせ議長がでっかいゴキブリなのである。
雰囲気も怪しげになろうというものだ。


陀鱠侈駝は考えていた。
親分である蝦廏穢豬が脳性移行型先端壊疽、通称ノイズ(NOISE)で倒れてか
らはや二年になる。
この病気は脳がその先端部より壊疽を起こし次第に各部へ移行して行き、やがては
死に至るという恐るべきウイルスによる伝染性の病気であり、進行は遅いが快癒は
不可能で死亡率九十パーセントという難病である。
治療法も確立されておらず、ただピーナッツエキスの点滴のみが唯一の対症療法で
あり、患者は激しい苦痛と恐怖のうちに死んでゆく。
その恐ろしさはエイズの比ではないのである。


原因はいまだ確定されていないが、一説には東アジアの一部にすむ小さな猿の一種
にレモンピープルという猿がいてペットとして好評を博しているが、この体内のノ
イズウイルスが人間に感染して起こるのではないかといわれており、人間の間での
伝染は主としてパソコンの“ある種”のソフトウェアをユーザーが貸し借りする際
に感染するのではないかといわれている。


蝦廏穢豬はその“ある種”のソフトウェアの熱心な愛好者であったといわれている
が、彼が倒れてからはその強大な派閥もだいぶガタがきて、子分の陀鱠侈駝の率い
る鯵鯖会が次第に派閥内の実権を握りつつあった。
陀鱠侈駝自身も痔憂黽咒党のニューリーダーといわれており、現在の長脛の後継者
の一人として罅鐶餅らと覇権をきそっていた。


ここで長脛が蟲に変身したのは千載一遇の好機である。
ゴキブリが内閣総理大臣の重責にたえうるであろうか。。
断じてそんなことはありえぬ。
一国の総理がむしけらではむしけらのように踏みつけられていた国民が承知すまい

外国の政府も相手がゴキブリでは貿易赤字の解消も北方四島の返還もあったもので
はない。今こそ彼陀鱠侈駝が立つべき時ではあるまいか。


罅鐶餅も同じような事を考えていた。
人間が蟲に変身するなどということが有り得るのだろうか。
そういえば蟲に変身した男の事を書いた外国の作家がいたが、可不可はともかく事
実彼の眼の前の巨大なゴキブリは日本語を話すのである。
これぞ天の恵、むしけらに変身した長脛に総裁選で票を投ずる者はいまい。
ここは一番、今年の総裁選に賭るべきではないだろうか。


それぞれの思惑が渦巻いて閣僚会議は早々と終了した。
子分たちへは早速檄が飛んだ。
長脛氏ゴキブリに変身すの報はたちまちにして国会内に私語の嵐を巻き起こした。




痔黽党のライバル(と彼ら自身は考えていたが強大な痔黽党から見ればライバルな
どとはおこがましい限りだった。)の瀉怪党のグループががん首を集めて話合って
いた。
委員長の異嗜碼弛が唾を飛ばしながら力説していた。
「長脛氏が蟲に変身したというのが真実なら、これは我が党にとって二度と得がた
いチャンスだ。
この期を逸したら我が日本瀉怪党が政権を握る機会は無いだろう。
即刻内角不信任案を提出すべきだ。」
「しかしそれは長脛氏が蟲に変身したというのが事実であるというのが前提でしょ
う。
もし単なるデマに過ぎなかったら、それに踊らされて不信任案など提出したら我が
党は世界の笑い物になりますぞ。」
書記長の鴕娜琶が言った。
「書記長の言われる通りです。
人間が蟲に変身するなど有り得ないことです。
委員長、慎重に判断されて下さい。」
国会の質疑で鋭い舌鋒で知られる汚甥弟も言った。


「うむ、確かにデマに過ぎぬということも大いに有りうる。
しかし万一真実ならばだ、試みる価値は有ると思う。
従って一応の準備だけはしておくべきだと思う。」
というわけで瀉怪党は不信任案提出の準備を始めた。


一方もうひとつの有力野党である、猴蟇豬党も委員長の蛇閨入を囲んで相談してい
た。
蛇閨入が言った。
「長脛君がゴキブリになったというのは本当かねえ。」
書記長の鵺悩が答えた。
「どうですかねえ、あれはなかなかのくわせものですからあまりまともにとらない
ほうが・・・・・・」
「うん、いつぞやもわしは間男になったなぞと抜かしおって。」
「あれは非道い、国会で一国の総理が間男するとは怪しからんと追及すると、私は
真男、すなわち真の男になったのだとしゃあしゃあとしてほざくんですからね。」




かくして与党野党それぞれが思惑を胸に秘めて衆院予算委員会が開始された。


衆院の扉が開かれて巨大なゴキブリが姿を現すと居並ぶ議員たちがどよめいた。
異嗜碼弛は驚きながらもしてやったりと笑みを浮かべた。
賭は当たったのである。
不信任案をかくも素早く用意していたのは我が党だけであろう。
これで瀉怪党の前途は洋洋たるものである。


まず最初に狂惨党の仮猫書記長が質問に立った。
「議長、まず最初に伺いたい。
総理はどこに居られるのですか。
この重要な予算委員会にいかなる理由があって予告もなく欠席されるのか、これは
衆院と各野党を侮辱するものである。
また何の為にそんな汚らしいむしけらを神聖なる議院に連れ込んだのか、伺いたい
。」


汚らしいむしけらとよばれて長脛は怒り心頭に発した。
「汚らわしいむしけらとは何事か。
私は長脛だ。
ちゃんと出席しておりますぞ。」
「ややっ、あの噂は本当だったのか。
しかしいかになんでもそのむしけらを長脛氏とは認めがたい。
何故にこのような手の込んだ悪戯をするのか、私には国会と国民を愚弄するものと
しか思えない。」


「愚弄などするつもりはない。
今朝起きたらこの姿になっていただけのことです。
姿形は変っても中身は長脛康夫に間違いない。」
「いい加減に馬鹿な真似はやめてそのぬいぐるみを脱ぎなさい。」
「ぬいぐるみなどではない。
長脛本人だといっているのに。
よろしい。
では内閣総理大臣しか知らない極秘情報をお知らせしよう。
さすれば長脛だということが納得して頂けるだろう。


仮猫さん、あなたは先週の水曜日午後三時ごろ国会内の控え室で密やかに裏ソフト
にふけっておられましたな。
そのソフトの名前は“天使たちの午後遅く”。
内容は口に出すのも憚られるが、口に出さないと分らないから口に出します。
中年のひひ爺いが、顔は菊池桃子のごとく体は飛鳥(勿論国産STOL機ではなく
女子プロの方でありますが)のごときロリータ美少女と、怪しくも楽しい一時を過
ごすという羨ましい、いや怪しからん内容であります。
これは我が内笑、すなわち内閣笑査室の誇る超小型特殊探査装置による極秘情報で
ありますが、仮猫さん、いかがかな。」


「け、怪しからん、個人的秘密を情報機関に探らせるとは。
国民の権利を犯すものだ。
しかも国会内で他党の議員の個室をスパイするなど、戦前の特高警察なみのファッ
シスト的行為である。
この破廉恥な行為に対しての謝罪と厳重な調査を要求する。」


「勘違いしないでいただきたい。
内笑、すなわち内閣笑査室はその名のとおり笑いを調査する、つまりジョークのネ
タを探す内閣直属の私的機関であります。
駄洒落のネタを得るために我々が組織した個人的調査機関であります。
それよりいかがですか、どんぴしゃでしょうが。」


「む、むー」
「これで私が長脛本人であることは納得していただけたでしょうな。」
「そ、それは・・・・・・」


というわけでなんとなくゴキブリが首唱の座に居座ってしまうということになった

(あんまりにもいい加減ですって?
そのとおりまったくいい加減なのです、私の書くものは。)


国会で長脛と各野党のやりとりの間にも“日本国首相ゴキブリに変身す”のニュー
スは内外の報道機関によって日本全国は勿論全世界に流されていた。


そのニュースがホワイトハウスにもたらされたとき、アメリカ合衆国大統領レーダ
ン氏はサンシー夫人と夕食を取り終えて、愛犬のゴーロクの蚤取りをしていた。
彼は呟いていた。
「うむ、ゴーロクもだいぶ蚤が多いな。
こいつは紀州犬だから蚤も日本の産だな。
あまり増えるとまた日米摩擦の種になる。
日本は自動車だけでなく蚤まで輸出するのか、蚤くらいは水平分業でアメリカ製に
すべきだとな。
だから日本国の蚤よ、お国を思うならあまり増えるなよ。」


レーダン氏の独り言はさらに続いていたが、電話のベルによって遮られた。
受話器を取った彼の顔はたちまち引き締まった。
「なに、まさか。
いや、しかし。
とても信じられん。
そうか今行く。」


彼は受話器を置くと夫人に言った。
「ヤスが蟲に変身したそうだ。」
「あら、すてきね。
午後のドレスはすみれ色のにしましょうか、それにしても最近ホワイトハウスにも
蚤が増えたわね。」
レーダン氏はため息をつき、オーバルルームへ向かった。


オーバルルームではロバート・マクファーレン補佐官が待機していた。
「ボブ、説明してくれ、蟲に変身したとは一体どういうことなんだ。」
「文字どおり一夜にして長脛氏が巨大な蟲に変ったのです。」
「そんなばかな。」
「しかし事実のようです。
トーキョーからの全ての情報がそれを裏付けています。
長脛氏はゴキブリの姿で国会に現れ、」
マクファーレン補佐官は時計に眼をやり、言葉を続けた。
「東部標準時午後八時五十分現在、日本時間では午前十時五十分ですが、衆院予算
委員会に出席しています。」


レーダンは眼をむいた。
「ゴキブリの姿で?」
「そうです。」


「ヤスはサミットにもその姿で出席するつもりかな。」
「そんなことより大統領、どうされますか。」
「どうとは?」
「我国の対応です。
むしけらを日本国の首相として認めて良いものかどうか。」


レーダンは首を捻った。
「どうしてその蟲がヤスであると確認したのだ?」
「日本国の最高機密であるパスワードを知っていたそうです。」
「ふーむ、しかし蟲が日本語を喋るものかね。」
「はい、それが喋ったのだそうです。」


レーダン氏は益々首を捻り、あまり捻ったのでとうとう首が百八十度回転して真後
ろを向いてしまった。
マクファーレン補佐官は学者風の知的なマスクを引き攣らせて言った。
「大統領、エクゾシストみたいな真似はよしてください。
気持ち悪いです。」
「いやすまん、私はリンダ・ブレアとジョディ・フォスターのファンでな。」
「閣下もロリコンですな。
私もジョディの“白い家の少女”は大好きで、いえ、まあ、そんなことはどうでも
いいんですが。」
「私の好きなのは一姫二太郎三サンシーだ。」


かくてホワイトハウスでロリコン談議が交わされている時、海を隔てたクレムリン
ではソ連邦共産党書記長ドルバチョフ氏が電話に向かって不機嫌な顔で怒鳴ってい
た。
「今何時だと思っているのだ、夜中の三時だぞ、昼間の激務で疲れきっているわし
をなんの権利があって叩き起こすのだ。」
電話の向こうのKGB高級将校が声を震わせて言った。
「は、はい、閣下のご安眠を妨害致しまして誠に申し訳ありませんが、あまりにも
異常な報告が入っておりますので・・・・・・」


「異常な報告?
レーダンが豚死したのか、スケベソフトのやりすぎでNOISEになったのだな。

「いえ、閣下、残念ながらレーダンはぴんぴんしております。
それに頓死のとんは豚ではなく頓であります。」
「うるさい、馬鹿者め。
何故にこのソ連邦共産党書記長ドルバチョフが頓死なぞという難しい日本語を知っ
ていなければならぬのだ。
それより報告とやらを早く話せ。」
「はっ、東京よりの情報では本日国会に現れた日本の長脛首相は蟲に変身していた
ということであります。」


「なにを寝言をいっとるのだ。
長脛が蟲になった?
いい加減にせんとシベリヤ送りだぞ。」
「ははっ、しかしアメリカ国務省も確認しておりますし、また各国の報道陣もその
ニュースを流し続けておりますが。」
「なに、我国のではなく外国の報道陣が確認しているのか、それでは確かに事実な
のだろうな。」
というわけでドルバチョフ氏も何やら画策を始めたのである。


北京。
酊大平氏 「あなたなにばかいうあるかそれウッソー。」
李後念氏 「ホントー。」


京城。
全吶喊氏 「日本人は皆ゴキブリ同然、ハングル世代の恨みはらさいでか。
いざや、とっかーん。」


平壤。
金月成氏 「倅や、今こそ待ち望んでいた時が来たぞ。
憎っくき東洋鬼めが蟲になった。
この機を逃さず三十八度線を越えて進撃しようぞ。」
金鯖日氏 「おとっつぁん、三十八度線の向こうは日本じゃなくて韓国だよ。」
月 「そんなことどっちゃでもええわい。
はよ戦争の支度せんかい。」
鯖 「もうできてます、旨い、安い、早い、我が朝鮮民主主義人民共和国人民軍。
!」
月 「それにしても長ったらしい名前だな。」
鯖 「自分で付けたんでしょうが。」


物騒なことになりましたがお話変わってまた日本国。


狂惨党や猴蟇豬党、民捨党の質疑が怪しげな雰囲気の中にもなんとか終わり、瀉怪
党の異嗜碼弛委員長が火蓋を切った。
「皆さん!
皆さんはいつの間にかこのむしけらを日本国首相として認めておられるようですが
、私共日本瀉怪党はゴキブリなどを内閣総理大臣として認知することには断固とし
て反対致します。
たとえこの蟲が長脛氏本人に間違いないとしても、それとゴキブリが公職、それも
首相という我国で最も重要な地位に有るということとは全く別の問題であります。


一国の総理がむしけらであるとしたら、対外的な聞こえもいかがでありましょうか



またこの蟲の知能や判断力は以前の長脛氏のままであるという保証はあるのでしょ
うか。
経験は?
外国首脳との個人的関係は?
健康は?


このように考えますとたとえこの蟲が長脛氏であるとしても、内閣総理大臣として
は誠に不適当であると言えると思います。
従って我が日本瀉怪党はここに内閣不信任案を提出致します。」


この動議を聞いて衆院はどよめいた。
そして異嗜碼弛氏の演説に対して与党側の席の中でも頷く姿が目についたのである



議長の指名もまたず長脛が言った。
「私としては経験も判断力もその他全て以前のままであると確信しております。」


「それはあなたがそう言うだけで何の証拠もありませんぞ。」
議場は混乱し議長は声を枯らして静粛を呼びかけたが効果はなかった。
混乱の極に達した国会は徒らに時間を浪費するのみであった。


某年某月某日大安吉日お日柄も良ろしいその日、朝鮮民主主義人民共和国人民軍は
雪崩をうって三十八度線を越え大韓民国に攻め入った。
しかし迎え撃つ韓国軍は一人として居なかった。
皆釜山へ向けて出発してしまっていたからである。


首都京城のテレビの歌謡番組で韓国の人気歌手が歌っていた。
「釜山港へいそげ、そこには船が待っている。
その船で行こう、東の島へ。」


そのとおり全韓国軍は軍艦はもとより商船漁船連絡船、はては新幹線山手線東北線
名松線淋巴腺扁桃腺前立腺バルトリン腺カウパー腺消火栓六花仙総裁選前哨戦大乱
戦、それでも足りなくて手漕ぎボートに筏、丸木船、ついにはプラモの船まで持出
してひんがしなる秋津島へ向かっていた。


酷寒のオホーツク海の底に巨体を潜めていた水上排水量一万トンのデルタ級Ⅱ型S
LBM原潜はモスクワからの指令を受け深度二百五十メートル速度十五ノットで南
下を始めた。


レーダン氏は冷暖房完備のオーバルルームで南北朝鮮およびソ連の動向の報告を受
け、直ちに第七艦隊の出動を命じた。
満載時排水量九万三千四百トンの原子力空母カール・ビンソンは全長三百三十三メ
ートルの巨体にF14Aトムキャット二個中隊、A7攻撃機二個中隊、その他A6
給油機、EA6B電子戦機、E2B/C空中早期警戒機などを搭載した戦時体制で
東太平洋の波を蹴立てて北上、一路日本へ向かった。
AEGISシステム、ハープーン艦対艦ミサイル、スタンダードMRミサイル、ア
スロッなどを装備したタイコンデロガ級防空巡洋艦、トマホーク艦載巡航ミサイル
、スタンダード艦対空ミサイルなどを装備したスプルアンス級ミサイル駆逐艦、ロ
スアンゼルス級攻撃型原潜など多数の艦船がそれに従っていた。


北京。
酊大平氏 「みなにほんむかうある。
わたしもにほんいくある。
あなたてはいよろしか?」
李後念氏 「よろしくないある。
ふねないあるよ。」
酊・「なければなんでもよろし。
たらいあるか?
北京ホテルのせんたくようならある?
ではたらいでゆくよろし。
これがほんとのたらいまわしあるよ。」
というわけで酊さんはたらいで東シナ海を渡り始めた。


続々と集る各国の動静は統合幕僚会議の席に着いた陸海空三幕僚長と防衛庁長官を
苛立たせていた。
本来なら国防会議が開かれて首相が議長として統括するはずなのであるるが、肝心
の首相がゴキブリに変身して不信任案で揉めており、内閣はしっちゃかめっちゃか
の状態なのである。
蝌蝪長官は蒼白な顔を俯けて低い声で言った。
「えらいことになった。
第七艦隊は出動するわ、ソ連の原潜は動きだすわ、韓国は全ての艦船を動員して対
馬海峡を渡ってくるわ、中国の酊大平はたらい船まで持出すわ、どうなってるんだ
。」


海上幕僚長が言った。
「イギリスは空母インポッシブルをフォークランドから急遽回航している模様です
。」
「なに、垂直離着陸機ビーグルを乗せたあのインポが!」


陸上幕僚長が発言した。
「フランスはアーリアンロケットの発射準備を完了したという情報が入っています
。」
蝌蝪長官は頭を抱えた。
「あれは軍事用ではないはずだが。」
「ハレー彗星を観測するついでに水爆も乗せたようです。
すいせいもすいばくも似たようなもんですから。」
「無茶を言うな、彗星と水爆が似たようなものなら、河合その子とエイリアンはい
とこになるぞ。」


防衛庁のみならず日本全国、いや全世界が混乱の大波に押し流されていた。
日本が沈没したというデマが流れ、それに対して日本以外全部沈没したというそれ
に輪を掛けたデマが飛んだ。


長脛は官邸の自室で腕を組み沈思していた。
もっともゴキブリ姿では腕を組むのはかなり困難で、無理に腕を組むと顎が床に着
いてしまった。
彼は呟いた。
「もうこうなったら今日直ちにサミットを開催する以外に世界を救う道はない。
東京サミットを開催してわしの花道にしよう。」


世界を救うことと花道とはいかなる関係にあるのか、誰にも(無論作者にも)わか
らなかったが、そこはハチャハチャ小説の良いところ、一枚原稿用紙をめくれば、
いや、一回パソコンのキーを打てば、サミットだろうがワールドシリーズだろうが
、はたまたロリコンソフトであろうがお望みしだい。
たちまちにしていい加減かつ出鱈目にサミットが開催されることになってしまった

(再々お断りしているようにいい加減かつ出鱈目な進展は、作者のTMすなわちト
レードマークでありますので、あまりお気にかけられぬようお願い致します。)


しかし会議は最初から険悪な雰囲気で開始された。
もっとも日本的な情緒を味わえるところという各国の首脳の注文で、サミットは東
京都台東区日本堤すなわち旧名ヨシワラで開かれることになったが、各国首脳の好
みが微妙にあるいは大幅に食い違ったのである。


大英帝国首相、鉛の女、別名おてんばキャッチャー女史は強硬に主張した。
「ワタシはゼッタイに要求します。
ホクサイのマクラエのような男でなければノー!」
困り果てた外務省の職員はやけくそで言った。
「ホクサイのマクラエなんてあるものか。
なんでもいいから適当にみつくろって馬みたいなのを連れて来い。」


アメリカ合衆国大統領レーダン氏は工藤夕貴と高部知子(の本物)をよべと言い張
った。やむをえずホンモノに因果を含めて連れて来たのである。
(作者の内心の吐露、-なんという羨ましいこっちゃ、レーダンめの変りになりた
い。-)


ソビエト社会主義共和国連邦書記長ドルバチョフ氏は最高の無理難題をふっかけた

「わしはかねがね日本国の裏ソフトに絶大な興味を抱いていた。
サミットに参加するにあたってはぜひともあのソフトに登場する美少女ロリちゃん
に接待してもらいたい。
でなければ会議に出席はいやいやよ。」


これにはベテランぞろいの職員たちもまいった。
ソフトのキャラクターであるからにして実在の人間ではない。
連れて来いと言われても困るのである。
しかしサミット開催は至上命令である。
日頃貿易摩擦がどうの東西緩和がこうのとシチ難しいことばかり考えているからそ
う簡単にはいいアイデアは浮かばない。
中に一人柔らかいのがいて、キャラクターに良く似た女の子をそれらしくよそおわ
せて誤魔化そうということになった。


場末のキャバレーからバニーガールが連れてこられてアリスとバニーちゃんを演じ
、名門覗裸湯狸学園の女生徒があわれいけにえになってヨシワラの中を歩き回り、
RAPE GIRLのコマンドで犯されることになった。


かくてサミットはキンニクマンと工藤夕貴とバニーちゃんとセーラー服の美少女ロ
リちゃんが婚前一体いや混然一体となってにぎにぎしくかつまた厭らしく開催され
たのである。


レーダン氏はソビエトの原潜の行動を非難し、ドルバチョフ氏はアメリカ第七艦隊
の出撃を攻撃し、いかなるわけかサミットに紛れ込んだ全吶喊氏は浪速節を唸り、
ようようたらい船が日本に着いて会議に駆込んだ酊氏はそれに合わせてどしょうす
くいを踊りだす始末であった。


これではいつになっても埒があかぬとみてとったドルバチョフ氏は全ての原潜とミ
サイルに攻撃命令を発した。
レーダン氏も第七艦隊と戦略空軍に攻撃を命じた。
アーリアンロケットとSS20が空を飛び交い、レオパルドⅡ戦車がキャタピラを
唸らせて殺到した。
弾頭が核物質であったなら世界はたちどころに死滅するところであったが、幸いな
ことに各首脳ともそこまでアホではなかったので、核弾頭の代りに各国の名産が装
備されていて、アメリカのパイ、ソビエトのキャビア、イギリスのローストビーフ
、フランスのトリュフォ、中国のペキンダック、韓国のキムチ、そして我が日本国
のお茶づけのりが各国の頭上から雨と降った。


サミット会場でもレーダン氏がドルバチョフ氏に特大のパイを投げ、昔映画で鍛え
た腕でみごとに命中させると、ドル氏も負けじと大皿のキャビアをレー氏の頭から
ぶちまけた。キャッチャー女史はおてんばぶりを発揮してローストビーフで長脛氏
のゴキブリドタマをかちわるとお返しに長氏は永山園のお茶づけのりをキャ女史の
豊満な胸の谷間にぶちかまし、熱さに女史は悲鳴を上げた。


各国の人民は降って来た食物を飽食し、食べ切れぬ食物はいつの間にか大量に繁殖
した蟲たちがたいらげた。
そしてついでに人間共もたいらげて、世界はゴキブリだけになったとさ。
                           ( おしまい )



日本古代史の謎

2024-07-29 15:00:58 | 日記
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☆任那の日本府


なぜ古代、中世の日本国は(いや、古代中世のみならずその後に至っても)、朝
鮮半島にあれほど拘泥したのか? 5.6世紀の任那日本府、秀吉の朝鮮侵攻、
明治時代の植民地化などなど、日本の朝鮮半島への関心の強さを示す事例は多数
ある。


任那の日本府については、元々そんなものは存在なかったという説を含めて諸説
紛々、確かなことは不明であるが、大和朝廷ないしは日本列島内の倭国(倭)が,
5世紀後半に加羅諸国を一括して,直接支配したとする説がある。


この5世紀中頃という時代は、AD270年の応神天皇又は313年の仁徳天皇
の即位を起源とする、大和王朝の発足から僅か百数十年しかたっていないのであ
る。 ここれに先立つ100年程前には、かの有名な「耶馬台国」があった。




3世紀初頭AD210年頃、卑弥呼の統べる邪馬台国は、魏志倭人伝によると、
「男子は大小となく、みな黥面文身す」、つまり男は顔にも身体にも入れ墨をし
ていたという。また、「衣を作ること単被のごとく、その中央を穿ち頭を貫きて
此を衣る。」ともある。 袖などのある複雑な衣服は作れないので、古代ローマ
時代の貫頭衣のような、一枚の布の頭の部分をくりぬいただけの服を着ていた。
しかも全てはだしであり、縦穴式の住居に住んで食事は手づかみであったという。


未だ独自の文字は存在せず、漢字を読み書きできるものはごく一部の者のみだっ
た。 弥生時代末期のことである。


ともあれ、恐ろしく遅れた、当時としても最後進国の部類に入るような国であっ
たことは確からしい。 放送禁止用語でいえば、「土人」である。 FIFAラ
ンキングにすれば、150何位とかいうあたりであろう。(^^;




なのにそれから僅か2、300年後の大和王朝初期の時代には、曲がりなりにも
中国の事物や風習を取り入れ、鉄製の武器を使用し、文字も5、6世紀頃には漢
字を簡略化したいわゆる万葉仮名が大いに使用されるようになった。




日本書紀は720年に、古事記は712年に完成


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☆黒いモノリスは降り立った?


大和朝廷の起源はAD270年の応神天皇又は313年の仁徳天皇の即位あたり
とされている。 ただしこの時代の人々の人物、生活や風物はほとんど明らかに
されていない。 その後593年の推古天皇(女帝)の時代になって、我々にも
おなじみの聖徳太子や蘇我入鹿などの名前が出てくる。


世界のトップ文明の推移は、約5千年前の人類最初の文明と言われるシュメール
文明に端を発し、その後エジプトがBC3千年からおよそ2、3千年を制し、中
国の時代が1世紀から10世紀頃までのおよそ千年、その間古代ペルシャ文明な
どを挟み、その後10世紀から20世紀はヨーロッパの時代である。


AD1年から200年頃の日本の技術的なレベルは、当時の最先端国である大陸
やエジプト、ローマより数百年或は千年以上も遅れていたと思われる。 それが
僅か数百年後の大和王朝初期には、未だ大陸との差はあるものの、その差はかな
り僅かとなっていた。  現代ならば、100年足らずで最低クラスから最高クラス
へと飛躍できる程イノベーションの速度は速い。 しかし、この頃の技術進歩の
速度は現代とは違い、2.300年ではさしたる変化は見られない程の、遅々た
る速度だったのである。 この時代にこのような速度で、「文明開化」を果たし
た国は、他には全く見られないのだ。


なぜこのような急速な進歩が古代日本において行われたのか? 単に大陸の技術
を急速に取り入れたということだけなのだろうか? 邪馬台国成立より遥か前か
ら、大陸に渡る和人はかなりいたのだ。 この間に航海技術が格段に進歩したと
いうことも、ありえないだろう。 この頃大陸や朝鮮半島の情勢が急を告げ、倭
国へ避難する中国人半島人がいたことは事実だろうが、それだけの理由ではなか
ろう。 それ以前から日本へ渡来する中国人半島人は相当数いたのだから。 こ
の2、3百年の間に、これだけドラスティックな変化が行われるには、何かもっ
と他の原因があったのではないだろうか?


例えば・・・ 黒い巨大な方形の石板が、ある朝邪馬台国の卑弥呼の前に降り立っ
たとか・・・


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☆日本人の起源


日本人の起源については、未だ不詳である。 しかし近年日本人の起源について
の研究がかなり進み、ある程度のことはわかってきた。 まず、南の島から黒潮
に乗って海洋民族が渡ってきた。 これは現在ならフィリピンやインドネシアに
当たるネシア系の人々であろう。 これがいわゆる「隼人族」の祖先と思われる。


卑弥呼の国耶馬台国の人々は、魏志倭人伝の記述を信じるならば、南方系の隼人
族ではなかったかと思われる。


今から1万5千年ほど前迄は、日本列島とフィリピンやインドネシア、更には朝
鮮半島などは陸続きであったといわれるので、移動はそれほど困難ではなかった
のであろう。


これとは別に北からアイヌを始め、ツングースやオロチョン、ギリヤークなど、
アイヌ系の人々も日本列島へ渡ってきた。 これが「蝦夷」(えみし、えぞ)と
後に呼ばれる人々であったのだろう。


これらの南方系北方系の人々の他に、当時地続きだった大陸からも多数の人々が
日本に入り込んでいたことは、想像に難くない。 これらの人々は時に混交し、
時に対立して日本人の起源となっていったのだろう。


その後温暖化に伴う海面の上昇により、日本列島は南方とも大陸とも隔絶した。 
そしてこれらの先住民族を、大陸からやってきた先進文明の持ち主である、とあ
る部族が征服して大和王朝を築いたというのが、私の考える所であり、また一般
的な説でもある。


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☆閉ざされた古代墳墓


ところで、畿内近辺には未だ調査の行われていない大規模な墳墓がいくつかある。
その代表的なものは纒向古墳群であり、箸中山古墳(伝箸墓) 全長280m、纒向勝山
古墳全長100mの前方後円墳、纒向矢塚古墳 全長96mなどがある。


いずれも4世紀前後の大規模な墳墓である。 箸中古墳の築造年代は、280-
300年頃とされているが、これはとりもなおさず「大和王朝発足の時代」であ
る。 これらを学術調査できれば、日本史の不明な部分の相当量が、一挙に
解明されるであろうというのが、学者たちの一致した意見である。


なのに、これらの墳墓は宮内庁により「陵墓」(大王の墓)に指定されており、そ
の調査は、宮内庁により全て拒絶されている。 曰く「個人の葬墓である」とい
うのがその理由だ。 しかし「個人の葬墓」といえば、エジプトのピラミッドも
王家の谷の遺跡も全て個人の葬墓である。 何故日本の王家の葬墓の調査のみが、
これほどかたくなに拒絶されるのだろうか?


これは、「もし調査されれば、天皇家にとってあまり芳しくない事実が公表され
るから」と、かんぐれないだろうか?


単に天皇家が大陸(半島)の出自である、というだけなら、これほど秘し隠さず
ともよい。 この説はほぼ日本史上の定説となっているからである。 


その「あまり芳しくない事実」とは? このあたりからは全くHal個人の憶測
邪推のたぐいであるので、そのつもりで読んでいただきたい。(^^;






では?


Halの邪推によれば、天皇家の出自は半島のとある部族である。 2.3世紀
の頃、この部族(どの部族かは不明)のある人物(これも不明、但し当然ある程
度の有力者ではあったろう)はよろしからぬ行いにより、部族から追放される。
この「よろしからぬ行い」がなんであるかは全く不明だが、単に戦争に敗れたと
か、部族内の権力抗争に後れをとったとかいうものではなさそうだ。 当時の資
料にもそのようなことは見あたらない。


或いは不倫とか幼児性愛(^^;とかそんなことかも知れない。 それはともかく、
この人物は一族朗党と共に海を渡り、東方の未開の地を目指す。 そして遅れた
土人共(放送禁止用語!)を蹴散らし、その地の覇権を握る。 彼らにとっては、
はだしに入れ墨、鉄製の武器もろくに持っていない先住民族など、物の数に入ら
なかっただろう。


そして出来上がったのが大和王朝である。 彼らは大陸の進んだ文明を先住民族
に教え、その上に君臨した。 こうして世界の最後進国は、先進国への第一歩を
踏み出したのである。


こう考えれば、宮内庁がかたくなに古代墳墓の調査を拒絶するのも理解できる。
万世一統の天皇家の祖先が、ロリコンであったとは・・・(^^)V 言えませぬよ
なあ・・・




ロリコン不倫はともかくとして、この人物が日本へ渡った理由が、あまり芳しく
ないものであったことは、確かであろう。 当時の日本は、上に書いた通り、世
界の僻地であり、未開野蛮の土地であった。 そんな所へわざわざ住み着こうと
いうのは、現在住んでいる所で厚遇されている人物のすることとも思えない。
恐らくは、「食い詰める」とか「あぶれる」とかいう表現が当てはまるような状
態であったのだろう。




もっとも、宮内庁の秘密主義は誰もが知る通りなので、これらの葬墓の調査拒否
は、単に天皇家の出自が半島にあるというだけの、案外単純な理由かも知れない
が・・・


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☆かくして狼は故郷を目指す


なぜこれほど日本は朝鮮半島にこだわるのか? これは当然のことであろう。
日本の支配者であるこの部族にとっては、半島は故郷である。 失地の回復にこ
だわるのは当然のこと。 よって国家創設後僅かにして半島へ出兵、失われた地
の奪還を試みる。 白村江の戦いに大敗しこれに失敗しても、その後故郷への夢
は長く生き続いて何度となく半島へ出兵し、ついに1910年朝鮮併合に到る。 
父祖の地の回復はここになったのである。


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★北からやってきた人々


縄文人の化石をDNA分析したところ、朝鮮、中国、タイの人種と一致した
ものがそれぞれ1、残りの17はシベリアのブリヤート人のものと一致した。
ブリヤート人は、23000年前のシベリアマリタ遺跡を残した人々である。


ホモサピエンスは20万年前アフリカで発生、10万年前から世界各地へ移動を開
始した。 


2万年前、氷河期の最寒冷期では、津軽海峡などが結氷し、大陸と地続きの状
態だったが、1万5千年前には急激な温暖化により海面が数十メートルも上昇、
現在の日本列島の状態となった。 ブリヤート人はこの間に日本列島に渡来し
たものと思われる。


同じ理由により、アジア中部からアメリカ大陸へのモンゴロイドの移動も、3万
年前に始まり、1万5千年前に終わった。


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魏が晋にかわった年(265年)の翌年10月にも,倭の女王が遣使貢献したとされているが,これ以後約150年に渡って晋の記録に倭の記事は
無い。再び倭が史書に登場するのは,413年倭使が東晋の安帝に朝見した時である。西晋王朝は滅び東晋王朝となっていた。
日本史上では,記録のないこの約150年間を「謎の四世紀」と呼んでいる。
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★邪馬台国はどこにある?


邪馬台国の所在を巡る論争は、江戸時代の新井白石の頃から続いている。 現
在では、畿内説と九州説が両横綱という所であるが、未だ決着はついていない。


ところで、この魏志倭人伝の記述には、色々とおかしな、あえて言えば理屈に
合わない所が多々あるように思える。 例を挙げれば、「水行10日陸行1月」
というあたりである。 その前には「東南へ500里、伊都国に到る。」など
邪馬台国へ到る道のりが記述してあるが、1里を400メートルとして記述通
りに進むと太平洋の真ん中で溺れてしまう。 方角か距離か、或いはその両方
がおかしいのである。 


もっとも当時の1里が現在の400メートルにあたるということも、確定的と
は言えないので、そもそも距離そのものがまるで当てにならないとも言える。




魏志倭人伝は三国志魏書東夷伝の中の一部を通称したものであるが、倭国の国
名や人名、風習などかなり詳細に書かれている。 これほど詳細に倭国を調べ
たにしては、倭国へ至る距離と方角がいい加減過ぎないか? 


なお、この三国志は、おなじみの「三国志通俗演義」とはなんの関係もない。 
三国志は、3世紀における魏蜀呉の三国鼎立時代の史書であり、三国志演義は
明の時代に羅漢中によって書かれた、史実に潤色を加えたフィクション、小説
である。




以下これまたHalの邪説にすぎないのでそのつもりで。(^^;




この魏志倭人伝の作者は、直接倭国へ調査旅行したわけではあるまい。 恐ら
くは又聞きのその又又聞きというところであろう。 宴席のゲームに、多数並
んだ人々に、ある話しを隣の人に耳打ちさせ、次々と中継させると、最後の人
が語る話しは、最初のものとはまるで異なる、とんでもないものになっている、
というものがある。 


まして、当時は訪れる人も希な僻地蛮地の倭国のことである。 239年(魏の景
初3)から247年(正始8)まで、魏と倭国との間で通交はあったということは、三
国志にも書かれているが、直接倭国におもむき踏査した者がそれ程多数であっ
たとも思えない。その数少ない実地踏査をした者から伝え聞いた話しが、魏志
倭人伝の作者に届くまでには、「いろはにほへと」が「ABCDXYZ」位に
変化していても不思議はあるまい。


しかも、魏志倭人伝の原本は散逸して残されておらず、現在の研究は数種の写
本によって行われているが、写本ごとにかなりの違いがあり、この違いの解釈
も又論争の種である。 更に前述のごとく、1里の距離も、435メートル説
あり、85-90メートルの短里説あり、様々である。 方角にしても、全て
の方角が65度偏向しているという説あり、箇所によって(恣意的)に東を南
とする説あり、もうシッチャカメッチャカという状態だ。




魏志倭人伝(三国志)の作者は陳寿という人物だが、勿論この陳寿が実際に倭
国へ渡って魏志倭人伝を書いたわけではない。 又、「ならびに詔をもたらし
て金帛、錦けい、刀、鏡、采物を賜う。」、「今汝をもって親魏倭王となし、
金印紫綬をかし」のくだりの魏使・梯儁の一行が、距離方角を記したのでもあ
るまい。


倭国への行程は、狗邪韓国(釜山~金海付近)、対馬国あたりまでと、その後
はかなり異なる。 陳寿にこの行程を語った人物は、恐らくは狗邪韓国(釜山~
金海付近)、対馬国あたり迄は実際に行ったことはあるが、その先の倭国には
行ったことはないように思えるのだ。 倭国についての情報は、この人物が倭
人に聞いたものの、又聞き情報としか考えられない。 これが狗邪韓国(釜山~
金海付近)、対馬国あたり迄は1里400メートルのスケールで、その後の倭
国の部分は1里80-90メートルの短里である、という説も出る所以である。


方角と距離がこれ程妖しげな情報をMSに、いや元にするなら、私なら邪馬台
国はカノープス(南極星)の彼方にあると証明して見せる。(^^;




以下魏志倭人伝の行程を元にして、カノープスへの行き方を語る。


狗邪韓国から1、000余里の海を渡り対馬国に到着。対馬島の大きさは推定
で方400余里、人口は1、000余戸。
(この辺はそのまま)


対馬国から南へ1、000余里の海を渡り壱岐国に到着。壱岐島の大きさは推
定で方300里、人口は約3、000戸。
(これは「壱岐国」ではなく、「行き着く」の意である。 また「対馬から南
へ」は、「対馬から南へ向かって空に昇ると銀河鉄道に行き着く」の意である。)




壱岐国から1、000余里の海を渡り末盧国(佐賀県唐津市付近)に到着。人
口は4、 000余戸。
(この「海」は、勿論「星の海」である。 つまりは、どんどんどんどんと蘆
の末まで星の海を渡って進む、ということ。)


南へ水行20日で投馬国に至る。人口は推定50、000余戸。
(更に南を目指して星の海を20日も航海するのだ。 投馬よ、いや違った、飛
雄馬よ、お前は夜空に輝くあの星になるのだ・・・)




南へ水行10日・陸行1月で、女王の都の邪馬台国に至る。
(こうしてたどり着いたカノープス星に降り立ち、更に歩いて1月、ようやく
女王の国にたどりついた。 疲れた・・・)


というわけで、邪馬台国の位置は、カノープス星の彼方にあります。(^^;






というわけで、魏志倭人伝の細部、特に日数や距離などの数値は、ほとんど信
用できないと考えた方がいいのではあるまいか? つまりこの魏志倭人伝の記
述によって邪馬台国の所在地を比定することは、そもそも無理があるのである。
勿論全てがいい加減というわけではなく、倭国の風習や生活ぶりについては、
ある程度この書を信ずることができるだろう。 そのような事柄については、
例え伝聞であっても、ある程度の内容は確実に伝わるであろうからである。 
又これらの事柄は、伝聞の間に多少の変化はあっても、ある程度の情報は得ら
れるものだ。


しかし、数値や方角のような事柄は、伝聞に伝聞を重ねる間に著しく変化し、
場合によっては正反対になったり倍の数値になったりしてしまうことも、間々
あるのではないか? 風習などと異なり、方角日数が変化してしまったら、特
定の場所を比定するための情報としては、一文の価値もない。 このような理
由で、魏志倭人伝の記述による邪馬台国の地理的比定は、ほとんど不可能と思
える。




邪馬台国の所在地については、確かな物的証拠、つまり「ならびに詔をもたら
して金帛、錦けい、刀、鏡、采物を賜う。」の卑弥呼の銅鏡100枚や5尺刀2
口など、或いは「今汝をもって親魏倭王となし、金印紫綬をかし」の国璽とか
が発見された場所が、すなわち邪馬台国ということになるのだろう。 それら
は、恐らくは卑弥呼の墓に眠っている・・・




この卑弥呼の金印は、1784年(天明4)2月23日,博多湾志賀島で百姓甚兵衛が水
田の溝で発見したものとは異なるようで、こちらは《後漢書》にみえる光武帝
が建武中元2年(57),倭奴国王に贈ったとされる金印である。


又近年かなり大量に発見されている三角縁神獣鏡は、この卑弥呼の銅鏡と同一
のものとする説と、中国本土では発見されていないことから、全く別のもので
あるという説と両説あり、判断に苦しむ所である。 中国で発見されていない
ということは、或いは「輸出専用」に作られたということかも知れないし、又
は卑弥呼の銅鏡とは無関係のものということになるのかも知れない。



犬のお話

2024-07-26 08:42:23 | 日記


・この世で犬だけが、自分よりも相手を愛してくれる。 (ジョッシュ・ビリング)
・平均的な犬は、平均的な人間より、良い。 (アンディ・ルーニー)
・石鹸の味を知らないやつは犬を洗ったことのないやつだ。 (フランクリン・P・ジョーンズ)
・女と猫は自らのやりたいようにやる。男と犬はリラックスして受け入れようとする。 (ロバート・A・ハインライン)


・飢えた犬を拾って手厚く世話してやると、噛み付いてきたりはしない。それが犬と人間の主たる違いだ。 (マーク・トゥエイン)
・もし犬が数を数えられないと思うなら、犬用ビスケットを3つポケットに入れようとして、2つだけをあげてみるといい。 (フィル・パストレット)
・顔をなめてくれる子犬に匹敵する精神科医はいない。 (ベン・ウィリアムス)


・犬の一生は短い。欠点はそれだけである。 (アグネス・スライ・ターンボール)
・犬をひとたび掻けば、永遠に終わらない仕事ができる。 (フランクリン・P・ジョーンズ)
・きっとちゃんとした訓練を受ければ、人間だって犬の親友になれる。 (コーリー・フォード)
・犬も笑う。でも彼らは尻尾で笑う。 (マックス・イーストマン)
・もし自分が他者に影響を与える存在だと思うときは、他人の犬に命令してみるがよい。 (ウィル・ロジャーズ)


・人を知れば知るほど、犬が好きになる。 (スタール夫人)
・犬は息を吹きかけると嫌がるが、車でどこかに連れていくとき、窓から顔を出したがることに気づいたかい?  (スティーブ・ブルーストーン)
・部屋に入った瞬間、なぜそこに来たのか忘れたことはあるか?多分犬はそんな風に一生を過ごす。 (スー・マーフィ)
・犬たちは紳士だ。人間ではなく彼らの天国に行きたい。 (マーク・トウェイン)


・犬を本当に楽しむのには、犬を人間のように訓練するのではなく、自分の一部が犬になるよう心を開くのだ。 (カレル・カペック)
・犬は持ってるすべてのものを我々に投げ出す。彼らの生活の中心が我々で、愛、信仰、信頼のすべてである。
小さな見返りで仕えてくれ、人間が結べる最高の契約であることは疑いの余地もない。 (ロジャー・カラス)
・幸せというのは、あたたかい子犬のことである。 (チャールズ・M・シュルツ)
・幸せを買うことはできないというやつは、子犬を忘れている。 (ジーン・ヒル)


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117 名前: ドリルドライバー(北海道):2009/12/13(日) 11:59:55.32 ID:qavy/zeL


子供が産まれたら犬を飼いなさい


子供が赤ん坊の時、子供の良き守り手となるでしょう


子供が幼年の時、子供の良き遊び相手となるでしょう


子供が少年の時、子供の良き理解者となるでしょう


そして子供が大きくなったとき、自らの死をもって、


死の悲しさ、命の尊さを教えるでしょう。


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犬の十戒
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/16(金) 01:03:46.30 ID:UwjGEgWg0




The Ten-Commandments (dog version)犬の十戒
1. My life is likely to last ten to fifteen years.  私の一生は10~15年くらいしかありません。  Any separation from you will painful for me.  私にとって少しでもあなたと離れていることは辛いのです。  Remember that before you buy me.  私のことを飼う前にどうかそのことを思い出してください。


2. Give me time to understand what you want of me.   私に「あなたが私に望んでいること」を理解するための時間を下さい。


3. Place your trust in me- it's crucial to my Well-being.   私を信頼して下さい。それは私が幸福になるためにとっても重要なことなのです。


4. Don't be angry at me for long and don't lock me up as punishment.   私を長い時間にわたって叱ったり、懲らしめるために閉じ込めたりしないで下さい。  You have your work,your entertainment and your friend.   あなたには仕事や娯楽がありますし、友達だっているでしょう。   I have only you.   でも……私にはあなただけしかいないのです。


5. Talk to me sometimes.   時には私に話しかけて下さい。   Even if I don't understand your words,   I understand your voice when it's speaking to me.   たとえあなたの言葉そのものは理解しなくても、   私に話しかけているあなたの声で理解しています。41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/16(金) 01:05:44.73 ID:UwjGEgWg0


6. Be aware that however you treat me, I'll never forget it.   あなたが私のことをどんな風に扱っているのか気づいて下さい。   私はそのことを決して忘れません。


7. Remember before you hit me that l have teeth  that could easily crush the bones of your hand   but that I choose not to bite you.   私を叩く前に思い出して下さい。   私にはあなたの手の骨を簡単に噛み砕くことができる歯があるけれど、私はあなたを噛まないようにしているということを。


8. Before you scold me for being uncooperative,   obstinate or lazy,ask yourself if something might   be bothering me.   私のことを協力的でない、強情だ、怠け者としかる前に   私がそうなる原因が何かないかとあなた自身考えてみて下さい。   Perhaps I'm not getting the right food,or I've been out    in the sun too long, or my heart is getting old and weak.   適切な食餌をあげなかったのでは?   日中太陽が照りつけている外に長時間放置していたのかも?   心臓が年をとるにつれて弱ってはいないだろうか?などと42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/16(金) 01:06:24.89 ID:UwjGEgWg0


9. Take care of me when I get old ; you, too, will grow old.   私が年をとってもどうか世話をして下さい。   あなたも同じように年をとるのです。


10. Go with me on difficult journeys.    最期の旅立ちの時には、そばにいて私を見送ってください。   Never say, "I can't bear to watch it ." or" Let it happen in my absence."   「見ているのがつらいから」とか「私のいないところで逝かせてあげて」    なんて言わないでほしいのです。    Everything is easier for me if you are there.    私はあなたが一緒にいるだけで、私にはどんなことでも安らかに受け入れられます。   Remember,I love you.    そして………どうか忘れないで下さい。私があなたを愛していることを。                                    作者不明




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病気でも職務を全うした盲導犬、約200キロの出先から帰宅直後に死ぬ。
(ナリナリドットコム - 04月08日 13:43)



視力を失った人の先に立ち、安全に誘導してくれる盲導犬。自らの欲求や自由を制御し、常に主人の安全を最優先に行動できるのは、厳しい訓練の賜物にほかならない。主人もそんな盲導犬には厚い信頼を寄せ、目の代わりという機能的な意味以上に、かけがえのない存在になっていることだろう。先日、視覚障害を持つ英国の男性は、7年間連れ添った盲導犬に導かれ、仕事先から自宅まで約200キロの道のりを移動した。しかし帰宅直後、「職務完了」と男性がハーネスを外すと、犬はその場に倒れ、息を引き取ったという。






英紙デイリー・メールによると、ウエストヨークシャー州ハダーズフィールドに住むデイヴィッド・クォームビーさんが、ラブラドール・レトリバーの盲導犬コメットと出会ったのは今から7年前のこと。障害者ネットワークの仕事などに忙しいクォームビーさんは、さまざまな場所で開かれる会議のために、英国中を飛び回る生活を送って いた。1歳でクォームビーさんの目となったコメットは、そのたびに自らの仕事を忠実に遂行。文字通りクォームビーさんの一部となっていたようだ。


しかし、深い絆で結ばれていたこの主人と盲導犬の別れは突然やってきた。4月6日、クォームビーさんは会議のために、自宅から120マイル(約193キロ)離れたバーミンガムを訪問。そして無事に仕事を終え、自宅へ戻る途中に、彼はコメットの異変に初めて気づいたという。電車がマンチェスターに着いたとき、クォームビーさんはコメットの動きの鈍さが気になった。「トイレに連れていかなければと思った」(デイリー・メール紙より)と、軽く考えていたクォームビーさんだったが、ひょっとすると、このときすでにコメットは苦しんでいたのかもしれない。


主人をしっかり電車に乗せたコメットは、いつものようにテーブルの下に落ち着いたが、彼が与える食べ物を一切受け付けなかった。クォームビーさんは、ここで「何かおかしいと気が付いた」。それでもコメットは、主人を安全に自宅へ送り届けるのが役目とばかりに、電車やバスの乗り換えもクォームビーさんを安全にリード。異変を抱えながらも「バスを降りて道路を横断し、玄関へと連れて行ってくれた」(デイリー・メール紙より)と、コメットはきっちり仕事を果たしたという。


家に入るとコメットはハーネスを外されたが、そこで最後の挨拶をするかのように数回鼻で鳴く仕草を見せると、そのまま倒れ込んでしまった。コメットの身に何かが起きたことを理解したクォームビーさんは、すぐに医者へ連絡。ほどなくして駆けつけた医者は、コメットの脾臓に腫瘍があり、手の施しようがないことをクォームビーさんに告げた。そして麻酔を打たれたコメットは、そのまま8年の短い生涯を閉じたという。


コメットの異変に気が付いてから息を引き取るまでは、わずか2時間半という短い時間。信頼していた相棒とのあっけない別れに、クォームビーさんは「彼が亡くなって辛い。私の一部を失ったようだ」とショックを隠しきれない。そして7年間支えてくれたコメットに対し「勇敢で素晴らしい犬だった」と労っている。


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他界した飼い主を見守った愛犬、1週間寄り添い通行人に助けを求める。
(ナリナリドットコム - 04月20日 15:43)





従順な性質から、ペットとして大人気の犬。愛情を注げばそれ以上の親しみを持って飼い主になつき、家族や恋人のような感情を持って育てている人も少なくないだろう。そして多くの愛情を注げば、犬は行動でしっかり返してくれるものだ。先日、米国の81歳の男性は、飼っていた犬を連れて外出中、そのまま行方不明となった。行動を把握していなかった親族はチラシを配るなど必死に捜索したものの、1週間近くが過ぎた4月14日に男性は遺体で発見。その間、愛犬は男性の傍らで見守り続け、じっと助けを待っていたという。






オハイオ州に住んでいた81歳のパーリー・ニコルズさんは、5~6年前に妻の求めに応じ、ゴールデンレトリバーの「レディ」を飼い始めた。6か月で夫婦のもとにやってきたレディは、2人の愛情を一身に受け成長。しかし、2006年に妻が亡くなると、ニコルズさんはレディを妻の代わりとばかりにかわいがった。出かけるときは常に一緒、息子の嫁にあたるメアリーさんが「文字通り、彼の“レディ”だった」(米紙カントン・リポジトリーより)と語るほど、仲が良かったそうだ。


そんなニコルズさんとレディは4月6日、近所の人にその姿を目撃されたのを最後に行方不明となってしまった。4月8日、行方不明を知ったニコルズさんの子どもや孫ら家族は警察に通報。同時に、自分たちでも「チラシを配る」(米放送局NBC系列WKYC-TVより)などして、ニコルズさんの捜索を続けた。しかし、2人の息子夫婦に12人の孫、10人の曾孫を抱えるという家族が付近を探しても、ニコルズさんは発見できなかったという。


そして4月14日の夜、ニコルズさんの消息が突然もたらされた。自宅からおよそ1マイル(約1.6キロ)離れた湿地帯で、付近を通りかかった通行人が鳴き声を聞いて駆けつけたところ、犬のそばで横たわったニコルズさんの姿を発見。その後の調べで、ニコルズさんは心臓や肺の病気により、外出した日か間もなくして亡くなった可能性が高いことがわかった。


家族は発見場所から100ヤード(約90メートル)近くまでは探していたが、彼らの存在には気付かなかったそう。しかし、その間もレディは「恐らく、近くの排水溝の水を飲み」(WKYC-TVより)ながら、ニコルズさんにぴったりと寄り添い、助けてくれる人が通りかかるのを待っていたと推測されている。そして1週間後、ようやく人に気が付いたレディは「鳴き声を上げ始めて」(同)、ニコルズさんの存在を知らせることとなった。


現在は曾孫たちに迎えられ、順調に回復を見せているレディ。天国へ旅立ったニコルズさんも、最愛の“レディ”に見送られたのは幸いだったと思っているかもしれない。



オー妄説!

2024-07-26 08:19:41 | 日記
この妄説シリーズはノンフィクションであるという保証はどこにもありま
せん。


★・・・…‥・ 卑弥呼とクレオパトラ 邪馬台国はどこにもない! 


       一幕五場 ・‥…・・・★      BY Hal


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(1 邪馬台国と魏志倭人伝の紹介)
第一場 邪馬台国とは、どんなものかしら


    どこにでもあるような小さな酒場。 地味な内装である。
下手にボックス席一つ二つ、上手にカウンター。 ボックスに
は客はいない。 カウンターには客が二人だけ。 
カウンターに座った客Aと客Bの会話に、マスターが耳を傾け
ている。




客B「邪馬台国ってどこにあるんだろうね?」
客A「さて・・・・・・」


客B「吉野ヶ里や三内丸山みたいな、大規模な遺跡が発見発掘されているの
に、何故邪馬台国の遺跡はいつまでたっても見つからないのだろう?」


客A「その理由は簡単だよ。」
客B「ほう?」


   (色変わり)
客A「『邪馬台国はどこにもない』からさ!」


客B「えっ! そんな無茶な! 邪馬台国は北九州か畿内かのどちらかにあ
るんだろ? 魏志倭人伝にもちゃんと書いてあるじゃないか。」


客A「魏志倭人伝は、邪馬台国の位置については何も書いてないよ。」


客B「またまたそんなアホなことを! 魏志倭人伝には、帯方郡(韓国ソウル
市付近)から倭国の首都邪馬台国に至る方角距離日程が詳細に書かれているじゃ
ないか。 例えば、帯方郡から水行7000余里で倭の北岸の狗邪韓国(釜山
ー金海付近 )につくとか、投馬国から水行十日、陸行一月で女王之所都につく
とか、確かに書かれているぞ。」


客A「ああ、確かにそう書かれてはいる。しかし、邪馬台国については、魏志
倭人伝以外に言及している書物はないし、邪馬台国の遺跡が発見された、或い
は邪馬台国の所在を示す何かが発掘されたという事実もない。 つまり、逆に
   (色変わり)
言えば『魏志倭人伝が存在しなければ(或いは存在していても正しい内容でな
ければ)、邪馬台国も存在しえない』ということにならないか?」




客B「そ、それは牽強付会というものだ。 魏志倭人伝は確かに存在するじゃ
ないか。 内容だって詳細で正確だし・・・」


客A「いやいや、そんなことはない。 『存在していても正しい内容でなけれ
ば』、あっても無意味だし、むしろない方がいい場合だってある。」


客B「それじゃ君は魏志倭人伝は無価値無意味だと言うのかね?」


客A「さて、そこが問題だ。 魏志倭人伝自体は確かに存在するのだが、その
邪馬台国に関する記述は本当に信頼できるものだろうか?」


マスターは身を乗り出して、客たちの話しに聞き入っている。


客B「魏志倭人伝は、3世紀後半(280年代)に書かれたんだよね。 著者
は何という人だっけ?」


客A「著者は西晋の陳寿(233‐297)だ。 呉蜀魏の三国の歴史を書いた「三国
志」の中の、「魏志・第三十巻・東夷伝・倭人条」が、「魏志倭人伝」の通称で
知られている。


内容は倭国への行程やその地理,風習、また239年(魏の景初3)から247年(正始
8)までの魏との通交のことが克明に記されている。


『男子は大小となく、みな黥面文身す』、つまり男は身分の上下を問わず、顔
にも身体にも入れ墨をしていたという。 しかも朱丹を全身に塗りたくってい
たんだそうだ。 中国では古来入れ墨は極度に嫌うから、邪馬台国の人々は大
陸系の人種ではなさそうだ。 恐らくは南から黒潮に乗ってやってきた、ネシ
ア系の人種ではないかな。


また、『衣を作ること単被のごとく、その中央を穿ち頭を貫きて此を衣る』と
もある。 袖などのある複雑な衣服を作る技術がないので、古代ローマ時代の
貫頭衣のような、一枚の布の頭の部分をくりぬいただけの服を着ていたんだろ
うね。 しかも全てはだしであり、縦穴式の住居に住み、食事は手づかみだっ
たらしい。 中国やエジプト、ギリシャに比べれば、大変な後進国だったわけ
だ。


景初3年、倭の女王の朝貢使者に対して、「今汝をもって親魏倭王となし、金
印紫綬をかし」と、いう詔書が下される。 その後、「ならびに詔をもたらし
て金帛、錦けい、刀、鏡、采物を賜う。」と、魏使・梯儁の一行が、倭国国王
すなわち卑弥呼に数々の品物を送ったということも記載されている。 有名な
銅鏡100枚もこの中にあったのだろう。」


マスター「大分長い話しのようですから、ここらで一杯新しいのを作りましょ
う。」


マスターは新しい水割りを作る。
暗転


----------------------------------------------------------------------
(2 魏志倭人伝の疑問点)
第二場 ああ、そはかの国か


客B「しかし、魏志倭人伝にはこれだけ詳細に倭国のことが書かれているのだ
から、その内容は充分信頼できるんじゃないか?」


客A「そう思うのが人の常。


     (色変わり)
しかしだ。 この魏志倭人伝に書かれた倭国へ到る方向距離日程を、そのまま
現実の地理にあてはめた場合、邪馬台国は太平洋の真ん中ということになって
しまうぞ。 魏志倭人伝に書かれている方向距離日程は、そのいずれか、或い
は全てに間違いがあることは、断言できる。」


客B「ううむ、確かにそれはあるな。」


客A「そこが邪馬台国比定大論争の焦点だな。 邪馬台国の所在を巡る論争は、
江戸時代の新井白石と本井宣長の頃から続いているそうじゃないか。 当時か
ら畿内説と九州説が両横綱という所だが、その論争には未だ決着がついていな
い。


                     (色変わり)
しかし一つだけ確かなことがある。 それは、『魏志倭人伝に書かれた通りの
方向距離日程の行程では、邪馬台国にたどり着くことは不可能だ』ということ
だ。 どの説にしても、必ず最低一ケ所以上、方向や距離日程を自説に合わせ
て変更修正している。 つまり、必ず方向距離日程を変更修正しなければ、絶
対に辻褄が合わないんだ。 これはとりもなおさず、『魏志倭人伝の記述は間
違っている』ということの証明じゃないか。」


客B「むむ、そ、それは・・・」


客A「まだある。 固有名詞(特に人名地名)の発音と表記も、かなりいい加
減のように思えるな。 人名と官職名の混同も多数ありそうだ。 『卑弥呼』
は人名ではなく、『姫巫女』『皇女』(ひめみこ)或いは『姫子』という称号だ
という説もあるよ。」


マスターはシェーカーを振るのも忘れて聞き惚れている。
暗転




----------------------------------------------------------------------
(3 誤謬が起きる原因)
第三場 奥様、これがその誤謬のカタログです


客B「しかし魏志倭人伝って、古代中国の正史なんだろ? なのになんでそん
なに間違いがあるんだ?」


客A「まずこの魏志倭人伝は、著者の陳寿が直接倭国へ渡っての見聞を書いた
ものではないことは確かだろう。 つまり又聞きさ。 その場合、誰からの又
聞きかが問題だが、その人物を特定することは、今となって不可能だろう。
魏の使者の見聞記に基づき、倭国使者からの伝聞を加えて書かれたとも言われ
ているが、果てしてどうかな?


しかも、どうやら陳寿に倭国に関する情報を語った者も、実際に倭国に渡って
見聞したのではなさそうだ。 無意味に詳細な部分(例えば倭国の官吏の人名
など)があるかと思うと、簡略に過ぎてどうとでも受け取れる部分(例えば方
角や距離など)の差がありすぎるからだ。 




恐らくは、この人物が行ったことのあるのは、行程の記述が比較的明瞭に書か
れている狗邪韓国(釜山近辺)から対馬国(対馬)、或いは一大国(壱岐)、せ
いぜい末盧国(北九州松浦近辺)か伊都国(福岡県糸島郡)あたりまでであろう。


倭人伝では狗邪韓国(釜山近辺)までの朝鮮半島の描写はほとんど省略されてい
る。 恐らくは「誰でも知っている事実」ということなのだろう。 その先の
対馬国(対馬)から末盧国(北九州松浦近辺)、伊都国(福岡県糸島郡)迄の描
写と行程は、ある程度信頼できるが、その先となるとかなり妖しくなってくる。
それはつまり、この人物は実際には対馬国乃至は伊都国迄しか行っていない、
ということにならないか?


もしこの情報提供者が魏の使者だとしたら、例の金印や金帛、錦けい、刀、鏡、
采物なども、卑弥呼に手渡すことなく「どこかその辺」に放り出してきた(^^;
のかもしれない。 そうであれば、卑弥呼の墓が発見されたにしても、銅鏡や
金印はそこには存在しないということになるね。」


客B「そ、そんなハチャハチャな! それじゃもし邪馬台国とおぼしき遺跡が
発見されても、特定すべき証拠が存在しないということになるじゃないか!」


客A「まあそれは、『もし魏の使者が途中で贈り物を捨てていれば』という、
仮定の話で、いくらなんでも実際にはその可能性は少ないだろうがね。


ということで、陳寿が耳にしたのは、又聞きのその又又聞き、場合によっては
更にその又又又聞きということになる。 


宴席のゲームに、多数並んだ人々に、ある話しを隣の人に耳打ちさせ、次々と
中継させると、最後の人が語る話しは、最初のものとはまるで異なる、とんで
もないものになっている、というものがあるだろ。 あれと同じことさ。


まして、当時は訪れる人も希な僻地蛮地の倭国のことだ。 239年(魏の景初3)
から247年(正始8)まで、魏と倭国との間で通交はあったということは、三国志
にも書かれているが、直接倭国におもむき踏査した者がそれ程多数であったと
も思えない。その数少ない実地踏査をした者から伝え聞いた話しが、魏志倭人
伝の作者に届くまでには、「いろはにほへと」が「ABCDXYZ」位に変化
していても不思議はあるまい。




しかも、魏志倭人伝の原本は散逸して残されておらず、現在の研究は数種の写
本によって行われているが、写本ごとにかなりの違いがあり、この違いの解釈
も又論争の種なんだ。 更に「1里」の距離も、435メートル説あり、85
-90メートルの短里説あり、さまざまだ。 方角にしても、全ての方角が6
5度偏向しているという説あり、箇所によって(恣意的に)東を南とする説あ
り、もうシッチャカメッチャカという状態だよ。 このようなわけで、魏志倭
人伝の解釈については、読んだ人の数だけあると言っても過言でない。 




そもそも魏志倭人伝の記述が全て正しいと信じている人は、今ではほとんどい
ないだろう。 実際に倭国へ渡った人物の、言語の相違による勘違いや誤解、
記憶や記録の喪失、各書への伝写時の誤り、陳寿本人の失念や誤った解釈など、
誤謬の起こる原因は無数にある。


誤謬の訂正については、各種の異本の検証による実証が本来の姿だろうが、現
実には散逸して現存しない古書も多く、不可能に近い。 しかも、伝写時の誤
字脱字の発見修正はともかく、倭国への渡航者の勘違いなどは、今となっては
検証のしようもない。 そのため、各論者の主観による恣意的な変更修正が加
えられた解釈が、百花繚乱百家争鳴、あだ花のごとく世を賑わわせるというこ
とになったのだろうね。」


客Bもマスターも、狐につままれたような表情。
暗転


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(4 故に魏志倭人伝では、邪馬台国の位置を比定できない)
第四場 もう知るまいぞ、この邪馬台国


客A「というわけで、『現在伝えられている』魏志倭人伝の細部、特に日数や
距離などの数値は、ほとんど信用できないと考えた方がいいんじゃないかな?
つまりこの魏志倭人伝の記述によって邪馬台国の所在地を比定することは、そ
もそも無理があるのだよ。


勿論全てがいい加減というわけではなく、倭国の風習や生活ぶりについては、
ある程度この書を信ずることができるだろう。 そのような事柄については、
例え伝聞であっても、ある程度の内容は確実に伝わるであろうからだ。 又
これらの事柄は、伝聞の間に多少の変化はあっても、ある程度の情報は得ら
れるものだ。


しかし、数値や方角のような事柄は、伝聞に伝聞を重ねる間に著しく変化し、
場合によっては正反対になったり倍の数値になったりしてしまうことも、間々
あるのではないか? 風習などと異なり、方角距離が変化してしまったら、特
定の場所を比定するための情報としては、一文の価値もない。 このような理
由で、魏志倭人伝の記述による邪馬台国の地理的比定は、ほとんど不可能(と
いうより無意味)と思える。


もし将来、邪馬台国の所在が確認され、その場所がいずれかの説に合致してい
たとしても、魏志倭人伝の記述が全て正しいということにはならない。 なぜ
なら、「魏志倭人伝に書かれた通りの方向日程距離の行程では、邪馬台国にた
どり着くことは不可能だ」ということに変わりはないからだ。




    (色変わり)
つまり、「(魏志倭人伝の記述による)邪馬台国は存在しない」ということ
になるのだ。」


客B「なんかだまされたような・・・」
マスター「まあ、話しとしてはそうなりますがねえ・・・」


客Bもマスターも釈然としない面持ち。
暗転

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(5 しかし・・・)


第五場 私の名は卑弥呼・・・


大音響の妖しげな効果音。


客A「しかしだ・・・ 私は卑弥呼について、最近驚異的な発見をしたんだ!」
客B「驚異的な発見?」


客B、あからさまに懐疑的な表情。 マスターも同様。


客A「そうさ。 それは・・・」
客B「それは?」
マスター「それは?」


客A「卑弥呼は金髪碧眼の美女だった!」


客B「金髪碧眼? なんで日本人の卑弥呼ちゃんが、パツキンのおねーちゃん
になるのさ?」


マスター「古代日本人ってコーカソイドだったんですかねえ? その内にチェー
ンスモーキングマンとかブラックオイルとかも、出てくるんじゃないですか?」


客A「まあ笑いたければいくらでも笑いたまえ。 しかしさっきも言ったよう
に、魏志倭人伝による行程では、方角距離日程のどれかを恣意的に変更しない
限り、絶対に邪馬台国にはたどり着けない。 これには異存はないだろう?」


客B「それは認めるが・・・」


客A「ところが・・・ 魏志倭人伝の記述を只の一ケ所も変更しないで、邪馬
台国を確実に比定できる説が、一つだけある!」


客B「それは・・・ 今さっき君が言ったことと矛盾しているじゃないか。
だって、魏志倭人伝の行程そのままで行けば、太平洋の真ん中で溺れ死ぬんだ
ろう?」


客A「いや、そんなことはない。 そもそもの出発点が間違っているんだ。」
客B「出発点? それは朝鮮半島の帯方郡(ソウル近辺)だろ?」


客A「いや違う。 出発点は・・・」
客B「???」
  
(色変わり)
客A「イタリア半島のヴェネツィア付近だ!」


客B「ぅわあ! こりはダミだぁ!」
マスター「上におなじ・・・(;__)」


客A「キミたちは、カエサルの『ガリア征討記』というのを知っているかい?」


客B「聞いたことはあるよ。 カエサルがフランスあたりを征服した時の記録
だろ。 ガリア戦記とも言うね。」


客A「その通り。 当時の北ヨーロッパ、フランスからイタリア北部あたりは、
『ガリア』或いは『ガラ』と呼ばれていて、ギリシャやローマから見ると僻地
もいいところだった。 カエサルはそこの連中を『蛮族』などと書いているが、
今は文化国家の誇り高きフランス人も、当時は野蛮人扱いだったんだな。


それはともかく、当時の韓国の南端は『加羅(から)』と呼ばれ、古くは『弁辰』
と呼ばれた。 これすなわち『ガラ』『ガリア』だ。 つまり朝鮮=イタリア
だ。


ケルト(Kelt)は「帯」を意味するギリシア語ケレト(Keletos)が語源で、これが
帯方郡にあたる。 魏志倭人伝の情報提供者は、現在のヴェネツィア付近から
出発したんだ。」


客B「うぅ・・・ 頭が痛くなってきた・・・」
マスター「わ、私は血圧が高くなってきました・・・」


客A「そして魏志倭人伝の行程通り、イタリア半島を南下し、投馬(とうま)
国に至る。 投馬国すなわちクレタ島で、不弥国の南にある。 クレタ島の伝
説の怒牛タウロメノスがタウロマ、タウマ、とうま(投馬)と変化したんだ。


クレタ島から更に南下して、水行10日陸行1月でエジプトにたどり着く。 こ
れが邪馬台国だ。 ここまで魏志倭人伝の行程は、只の一ケ所も変えていない。
出発点が違う以外はね。


実はこの『邪馬台国エジプト説』は、明治43年に読売新聞に掲載されたもの
で、著者は哲学者で翻訳家の木村鷹太郎という人物だ。 彼によれば、魏志倭
人伝は、古代日本が地中海から東アジアに及ぶ広大な地域を支配していた頃に、
中国で記録されたものだそうだ。」


客B「これはもう『竹内文書』の世界だぁ!」
マスター「竹内巨麿かAさんか・・・」


客A「そうそう、その竹内文書なんだが、私の見る所ではあれはキムタク
いやキムタカさんの新史観のパクリだな。 新史観というのは、キムタカ氏
の誇大妄想的日本中心史観の自称だ。」


客B「パクリ? それはどういうことなんだい?」


客A「竹内文書は古代日本が世界の中心だったというあたりが核心なんだ
が、これはそっくりそのまま新史観と重なる。 しかも竹内文書の『発見』
は大正10年頃から昭和にかけてで、新史観を咀嚼勘案するのに丁度手頃な
年月が経っているんだ。 まあ、それはともかく・・・」


マスター「それはともかく?」




客A「これだけじゃない。 私はエジプト考古学にも興味があるんだが、邪馬
台国と古代エジプトについて調べている内に、古代エジプトのプトレマイオス
王朝最後の女王、クレオパトラにぶちあたったんだ。」


客B「ほえぇ・・・ クレオパトラでもマリアカラスでも、なんでも持ってこ
いってんだ! もう何を聞いても驚かんぞ。」
マスター「け、血圧の薬はどこに・・・」


客A「ぶっちゃけて言えば・・・」


客B「あんたが『ぶっちゃけて言えば』というのを聞くと、こちらのドタマが
ぶっちゃけそうになるよ・・・」
マスター「血圧けつあつケツアツ・・・」


(色変わり)
客A「卑弥呼はクレオパトラだ!」


客B「ナハハハハハハ・・・」
マスター「上が65536の、下が256だぁ!」


客Bマスター共に頭を抱えて蹲る。


客B「なんともはや素晴らしいトンデモ説だな。 卑弥呼とクレオパトラじゃ
年代がまるで合わないじゃないか。 卑弥呼は247年か248年あたりに
67歳位で死んだとされているのに、クレオパトラはその遙か前の前30年に
死んでいる。 300年近く時代が離れているよ。」


客A「その通り。 クレオパトラは前31年9月のアクティウムの海戦で敗北
し、アレクサンドリアに逃げ帰る。 


この時の海戦はローマ側オクタヴィアヌス軍と、エジプト側アントニウス・ク
レオパトラ連合軍が、双方500隻以上の艦船で戦うという大規模なものだっ
たが、戦闘そのものは一回の戦いで終わっている。 初戦の後クレオパトラの
率いるエジプト艦隊60隻は突如戦線を離脱したんだな。 アントニウスも戦っ
ている将兵を見捨てて彼女のあとを追って逃走してしまった。 この海戦で敗
れたクレオパトラは、翌年夏アントニウスの死を知り、自殺することとなる。


さて・・・ 既に戦いの大勢が決した後ならともかく、まだこの先の勝敗も不
明の時に、何故クレオパトラは突然戦線を離脱したんだろう? 


古来いくさの常として、大将が陣頭にいなければその軍の士気は極端に落ちる。
大阪冬の陣夏の陣の秀頼がいい例さ。 秀頼が一度でも陣頭指揮していれば、
日本の歴史は変わっていたかも知れない。 同様に大将が二人とも逃げてしまっ
た連合軍が、勝てるわけがない。


もしここで二人が踏みとどまって総力で戦っていれば、この海戦に勝利できた
かもしれないし、そうなればその後のプトレマイオス王朝の断絶もなかっただ
ろう。 そんな大事な戦いなのに、何故クレオパトラは手中にしかけた勝利を
投げ捨てるように、戦線を離脱してしまったんだ?」


客B「さあ、皆目見当がつかないなあ・・・」


客A「それはクレオパトラは強力な呪術的力を持つシャーマンだったからだ!
海戦のさなか、クレオパトラは『お告げ』を感じたのだ。 『強力なローマ海
軍相手の戦いに勝ち目はない。 ここで踏みとどまって戦い、無益に生命を落
とすよりは、故郷に帰って再起を期すべし!』とね。 


事実当時のローマは軍事的には世界最強だった。 例えこの海戦である程度の
勝ちを納めたにせよ、ローマ本国は無傷のままだ。 第二次大戦末期の日本と
アメリカみたいなもんだな。 軍事的生産力が違いすぎるよ。 一二のマイナー
な戦いで敗れても、すぐ戦力は二倍三倍に復旧する。 その間にもこちらの戦
力はじり貧となってゆく。 とても勝ち目はないね。」


客B「しかし再起を期すどころか、クレオパトラは自殺してしまつたじゃない
か。 死んでしまえば再起も蜂の頭もあるもんか。」


            (色変わり)
客A「それが違うのさ。 クレオパトラは自殺などしていない。 あれは偽装
だ!」


またまた大音響の妖しげな効果音。 マスターは床に大の字なりでパ
クパクと口を開けたり閉じたり。 客Bはガリガリとカウンターの端
をかじっている。


客B「ガシガシガシ!」
マスター「むひぃ・・・」


客A「クレオパトラは自殺に見せかけて身代わりの遺体を残し、生き延びたん
だ。」


客B「ああ・・・ もう言葉もない・・・」


客A「卑弥呼は真珠のネックレスをしていたそうだ。 クレオパトラもパール
のネックレスをしていたという。 これが二人が同一人物だという、なにより
の証拠だ。」


客B「そんな無茶苦茶な! 真珠のネックレスをしていれば同じ人間だと言う
のなら、『バー ジャスト』の花子ちゃんも、『管理高額研修所』の松チャン
も、みーんなクレオパトラになっちまう。 二人ともパールのネックレスをし
てるからね。」


客A「真珠が違う。」
客B「え? 真珠は真珠だろう?」


客A「いや、クレオパトラの真珠は、特殊な真珠だ。 しかも彼女はそれを特
殊な酸に溶かして飲んでいる。 これはアトランティスより伝わる長命の秘薬
なんだ。」


客B「どこにその証拠があるんじゃ、どこに! なんで卑弥呼の物語にアトラ
ンティスが出てくるんじゃ! プラトンがそんなことを書いているのか!」


客A「そう興奮するな、血圧があがるぞ。 血圧が上がるとマスターみたいに
なる。」


マスターは断末魔状態、床に長々とのびたままぴくぴくと手足を痙攣
させている。


客B「余計なお世話だ。」


客A「かくしてクレオパトラは舞台から引っ込み、替りに卑弥呼が登場する。


エジプトはアレクサンドロス大王による征服後、プトレマイオス王朝が続いた。
クレオパトラの前の王はプトレマイオス12世、すなわち男子の王だ。


クレオパトラは弟プトレマイオス13世と結婚し、エジプトを共同統治してい
た。 邪馬台国でも、『倭国には元々男王がいたが、混乱状態になり、その後
女王を擁立した。 弟がいて政務を手伝っていた』とある。 


これはそのままエジプトにおけるクレオパトラの状態じゃないか。 単なる偶
然の一致とはとても考えられない。


まして魏志倭人伝の記述はそのまま鵜呑みにはできないことは、前に言った通
りだ。 ちょっとした年代の隔たりなどは問題にもならない。 




      (色変わり)
やはり卑弥呼は金髪碧眼の美女だったんだ。 以上証明終わり!」


客Bマスター共に、蟹のごとく口からあぶくを吹いている。


幕素早く降りる。

-了-




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この『妄説シリーズその4 卑弥呼はクレオパトラだった!』は、
望夢楼さんのHPより、[望夢楼]/[謎の疑似科学世界]/[邪馬台国は
エジプトにあった!?] を参考にさせていただきました。 伏して感謝いたします。



追ってくるチャリンコ

2024-07-26 08:13:11 | 日記
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追ってくるチャリンコ その1




駅の階段を下ると横断歩道が目の前にあった。 俺はその横断歩道を渡り、駅前の商店街へと続く道を歩き始めた。 ここはようやく二車線が確保できる位の狭い道で、幅3メートル足らずの歩道が申し訳程度についている。 歩道にはびっしりと違法駐輪の自転車が並んでいるので、歩行者が歩ける幅は実質的には1メートル強しかない。


いつかこの危険で邪魔っけなチャリンコ共を踏みつぶしてやるぞ、と呪いながら、2.3分歩いた所で前方からチャリンコがやってきた。


いや、やってきたなんて穏やかなもんじゃない。 飛んできた、かきわけてきた、すりぬけてきた、突き飛ばしてきた、と言った方が適切だ。


スキーのスラロームよろしく歩行者の数センチ横をすりぬけ、積載量オーバーのダンプカーみたいにお年寄りを威嚇し、 艦載ジェット戦闘機が着艦する時位の猛速度でぶっとんでいた。




俺の目の前でお年寄りがそのチャリンコを避けようとして転倒したが、チャリンコに乗った男は目もくれず、俺の腕をすれすれにかすめてすっ飛んでいった。


俺はかっとなって振り返りざまその男に叫んだ。


「このドアホッ! なにをしやがるんだ!」


相手の反応も確かめず、すぐさまお年寄りの所へ駆けより助け起こした。 幸いにして怪我はなかったようで、お年寄りは礼を言って立ち去っていった。


振り返るとチャリンコはいつの間にか停止していた。 若い男が乗っている。 はたちを出るか出ないか位の年頃だろうか、ガタイがでかく、爬虫類みたいに無表情で非知性的な顔をしている。 色あせたジーンズに白いシャツの裾を外に出した、お定まりの格好だった。


しかも眼が三白眼で、なんとも薄気味の悪い奴だ。 頭はガキのままなのに身体だけが大人になったという、当今よくあるタイプだ。 そいつはいやらしい目つきでじっと俺のことを睨んでいた。




俺もそいつを睨み返した。 俺は多少だが喧嘩にも自信があり、こやつの傍若無人な態度に腹を立てていたので、ここで殴り合いになってもいい、という位の気分だった。 暫く俺達は無言で睨み合っていた。


その内に、いい歳をしてこんなガキと張り合っているのが馬鹿らしくなってきた。 


「おい、こんな狭い道でそんなにぶっとばしたら危険だろうが。 少しは他人のことも考えろ」


俺はそれだけ言うときびすを返して歩き始めた。 背後の若い男は無言のままだった。




暫く歩くと商店街に入った。 いつもの総菜屋で夕食用の「愛の鮭フレーク弁当ザンギ付」を買った。 北海道では唐揚げのことをザンギと言うそうだ。


ついでにビールのつまみ用にと、「まりな100%小次郎味」というけったいな名前の、得体の知れないカンヅメも買った。


どんな味がするのかは食ったことがないのでわからないが、たまにはこういうゲテモノもいいのでは、と思っただけのことだ。 特にこんなヘンな名前のものが好物だというわけではない。




食い物をリュックサックにしまって振り返るとその男がいた。 あの暴走チャリンコのガキだ。 チャリンコにまたがり、俺のことをじっといやな目つきで見つめていた。


こやつも夕食を買いに来たのかと、一瞬俺は意外な気がした。 しかし考えるまでもなく、誰だってメシは食うのだ。 取り立てて意外に思うことでもない。 俺はそいつを一瞥しただけで総菜屋を離れた。




俺のアパートは商店街の外れから10分ほどの所にある。 2.3分歩いて振り返ると、あのチャリンコが10メートル程後ろにいる。 こやつ俺をつけているのか。 それとも家が一緒の方角だというだけなのか・・・


少し歩いて又振り返ってみた。 チャリンコ野郎は相変わらず10メートル程後ろにいる。 ようやく俺も気づいた。 やはり俺をつけていたのだ。


「おい、俺に何か用か? 用があるんなら言って見ろ。 聞いてやるぜ」


若い男は無言のまま俺を睨んでいた。 三白眼の白い部分が更に大きくなり、眼全体が白目になったような感じで、実にいやらしい目つきだ。


流石に俺も薄気味悪くなった。 何か文句をつけてくるならまだしも、一言も言わず押し黙ってただ睨むだけというのは、なんとも不気味だ。


俺は相手にしないことにした。 こんな変な奴にかかずらわってもろくなことはないだろう。 無視するに限る。 俺は目線を逸らし、歩き出した。


アパートの前まで来て振り返ると、奴はいなかった。 やれやれ、さんざん嫌がらせをしたので、ようやくあ奴も気が済んだのかと一安心、自分の部屋へ入った。

俺の部屋は今時珍しい木造二階建てのアパートの二階にある。 畳敷きの6畳一間に無理矢理くっつけたようなキッチン、狭苦しくろくに手足も延ばせない風呂とトイレがついている。 家賃が安いだけが取り柄のアパートだが、なんといっても我が家は我が家である。 ここに帰るとなにがしか心が安らぐ。


俺はほっと一息ついて煙草に火を付け、リュックサックを下ろそうとした。




その時けたたましい音と共にドアが吹っ飛び、何かが飛び込んできた。 そこにあったのは自転車だった。


仰天した俺は叫んだ。


「なんだなんだ! これはなんなんだ! なんで自転車がそこにあるんだ!」


叫んだ後で気がついた。 


「自転車がそこにある」のではなく、「自転車が飛び込んできた」のだと。 それもあの三白眼男付きの自転車が。


「いったいなんのつもりだ、これは? どういうわけで俺の部屋にチャリンコで押し入るんだ?」


チャリンコにまたがった男は、仮面のような無表情のまま、相変わらず無言で俺を睨んでいた。 


俺の背中に冷たいものが流れ落ちた。 こいつはまともじゃない。 どう見ても正常者か。 




怒り狂って殴りかかってくる相手なら、応戦するなり謝るなり逃げるなり、こちらもまだ対応のしようもある。 しかし、押し黙ってただ睨むだけ、という相手にどう対応したらよいのか。


しかも、こいつは「ただ睨む」だけではない。 自転車ごと他人の家のドアを押し破って飛び込んできたのだ。


小学生の女児を殺してその写真を親に送りつけたり、幼女を逆さ吊りにして血抜きをしたりする輩と同じレベルにある精神状態の持ち主だ。 それに気がつくと、舌と指が硬直しがくがくと膝が震えた。




俺はもつれる脚を叱咤激励して窓際にたどりついた。 窓枠にしがみつき、ここから助けを呼ぼうかとも思ったが、どうやっても声が出なかった。 第一そんなことをしている間に、あいつに殺されてしまうかも知れない。


俺は意を決して窓から飛び降りた。




俺ははだしのまま走った。 とにかくあいつから少しでも遠く離れたかった。 


暫く必至で走り息を切らせながら振り返ってみた。 あのガキはいなかった。 俺はほっとして立ち止まり、荒い呼吸を整えた。 ここは駅裏の路地のあたりだろう。


気がつくと食料の入ったリュックサックを背負ったままだった。 捨てようかとも考えたが、折角金を払って買った食い物だ、捨てるのは勿体ないと思い直した。 このあたりが俺のみみっちい所だ。


これだけ走り回れば、鮭フレークもザンギもシェークがよくかかって、婚前一体式を挙げる時にゃ新郎妊婦、さぞやまったりとした美味になっているだろう。 これが納豆だったらかき混ぜる手間が省けたのにな、と下らぬことを考えたりした。


さて、これからどうしよう。 アパートへ帰るのは怖い。 ドアを開けた途端、いやドアは壊れているから、ドアをくぐった途端、あやつがチャリンコにまたがってじっと睨んでいたらと思うと、背筋が冷たくなる。 アパートへは当分帰らない方が無難だ。 


会社はどうか。 しかし会社へ戻っても誰もいないだろうし、はだしのまま電車に乗るのも気が引ける。 後はもう思いつく所はない。




そうだ、警察へ行こう。 俺は思いついた。 警察へ行って事情を話し、保護して貰えばいいのだ。 暴走チャリンコを逮捕して貰うことだつてできるだろう。


なんでこんな簡単なことに今まで気がつかなかったのだろうか。 やはり動転していたのだ。 俺は一人で納得して駅前の交番に向かった。


交番は駅裏から踏切を渡り、四つ角を曲がった所にある。 小さな交番だが、中年の警官が常駐している筈だ。


交番は記憶どおりの所にあった。 俺は「ごめんください」と声をかけて中に入った。


中には警官がいて・・・

警官はいなかった。 そこにいたのは・・・


あのチャリンコガキだった。 やつは今までと同様、チャリンコにまたがり無言で白目をむいてじっと俺を睨んでいた。


俺は悲鳴を上げて逃げ出した。 何故警官の替わりにやつがいたのか、警官はどうなったのか、という疑問は湧かなかった。 ただひたすら恐ろしく怖かったのだ。 そんな疑問を抱く余裕すらなく、俺は走りに走った。


どの位走ったのか。 ついに息が続かなくなり、俺は立ち止まった。 ばくばくと心臓が波打っている。 犬のように舌を出し、はあはあと荒い呼吸をしながら、ガードレールにもたれかかって息を整えた。


動悸がおさまると、疑問が湧いてきた。 あの交番にいた警官はどうなったんだ? それはあまり考えたくない疑問だった。 


幸いあたりにやつはいないようだ。 それにしてもここはどこなのか。 自分の家の近くの筈なのに、土地勘さえ働かなくなってしまった。 俺は頭を抱えて蹲った。




これからどこへ行けばいいのだろう? 警察さえ頼りにならないのでは、もう行く所はない。 俺はどうすればいいのだ?


そうだ! 電車に乗って遠くに行こう。 遠くといっても四国や九州に迄行く必要はないだろう。 小一時間も電車に乗れば、チャリンコでは追って来られない程度の距離は稼げる。 幸い財布はちゃんとポケットに入っている。 


はだしだったが、この際そんなことにかまってはいられない。 とにかくあいつから遠ざかれればそれでいいのだ。 駅のある方と思われる方角へと、俺はとぼとぼと力のない足取りで歩き始めた。 はだしの足の裏が冷たく痛かった。


20分ほど歩くと駅が見えてきた。 なんと隣町の駅だった。 恐怖に蹴りたい背中を蹴られながら走り回って、隣町まで来てしまったらしい。


まあいい。 どこであろうと駅は駅。 要は電車に乗れればそれでいいのだ。


待つほどもなく準急がやってきた。 終点の海沿いの町まで行く電車だ。 この時間帯ならかなり混雑している筈なのに、乗客はまばらだった。 俺はほっとして席に座った。




時計を見て驚いた。 なんと9時近くになっている。 3時間近くもあやつから逃げ回っていた計算になる。 それに気がつくと急に腹が減ってきた。 喉もからからだ。 3時間も走り回れば、喉も渇くし腹も減る。


幸い逃げ回っている間にもリュックサックは捨てなかったらしく、俺の背中にちゃんと収まっていた。 「愛の鮭フレーク弁当ザンギ付」もその中に鎮座している。


次の駅に停車した際、飛び降りて冷たいお茶と缶コーヒーを買った。 電車の中で弁当を食うのは若干気が引けるが、この際そんなことにかまってはいられない。 まずは腹の虫をなだめるのが先決問題だ。 


幸い乗客は少ないので、それほど人目を引くこともあるまい。


再び席に座りおもむろに弁当を取り出す。 まずはお茶を飲み、次に一口鮭フレークを口に入れる。


うまい・・・ どこまでが鮭フレークで、どこからがザンギなのか目で見ては全く不明だが、腹に入ってしまえば全て同じこと。 要は食えればそれでいいのだ。


終点の駅に到着したら、どこか安い宿にでも一泊しよう。 ビジネスホテルなら数千円で泊まれる筈だ。 その位の金は持っている。 そして明日自分の町に戻り、会社へ行けばいいのだ。


丸一日経てばあの気狂いチャリンコも諦めるだろう。 後は今までどおりの暮らしに戻れる。 俺は幸せな気分になって弁当から目線を上げた。




目の前にチャリンコ野郎がいた。 前と同じようにチャリンコにまたがり、無表情な三白眼をむいて冷たく俺を睨んでいた。




俺は座席から飛び上がってリュックサックもろとも「愛の鮭フレーク弁当ザンギ付」を投げつけた。 鮭フレークが愛情深く奴の顔にへばりつき、奴の頭髪にザンギの花が咲いた。


リュックサックに入っていた「まりな100%小次郎味」カンヅメ・ノート・ペン・牛乳の紙パックなどがザッピングして、奴と奴のチャリンコにふりかかった。 まあ、まりなと小次郎ならザッピングするのも当然だが・・・




それでも奴の仮面のような表情は全く変らず、一言の言葉も発しなかった。 ただひたすら奴は俺を睨み続けていた。


俺はわあわあと泣きながら電車の中を逃げ回った。 後ろを振り返る都度、気狂いチャリンコは執念深くどこまでも俺の後をつけてきていた。 一言も発せずただじっと睨みながら・・・


逃げる途中でふと思った。 奴はいったいどうやってチャリンコに乗ったまま改札を通過できたのか。 当然駅員は制止した筈だ。 その駅員はどうなったのか。


交番の警官も駅の駅員も、みんなどうなってしまったんだ? ・・・・・・


しかしもうそんなことはどうでもよかった。 俺の体力と気力は尽きていた。 疲れ果てた俺は奴の前に土下座した。


「ゆるしてくれ、俺が悪かった。 なんでもする。 金もやる。 だからもう勘弁してくれ」


奴の表情には全くなんの変化もなかった。 ただただ無言で俺を睨み続けるのみ・・・


おいおいと泣きながら俺は又逃げ出した。 どの位逃げ回っていたのか、電車はいつの間にか終点の駅に到着していた。






終点の駅は海の近くにあった。 俺は改札を通り抜け、夜の港町を走りに走った。 街には灯る明かりすらなく暗く静まりかえっていて、俺の足音と呼吸の音だけが空しく響いた。




後ろを振り返ってあのチャリンコが追ってくるのかを確認することさえせず、俺はただひたすら走り続けた。


いつの間にか町並みがとぎれて港に来ていた。 目の前の突堤の先には、黒く果てしのない大海原が拡がっている。 俺はまっすぐにその海を目指して、ただ走り続けた。




-了-