電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

『日本の名随筆 別巻28 日記』を読む

2009年12月04日 06時17分23秒 | 読書
作品社から1993年に刊行された『日本の名随筆別巻』シリーズから、大原富枝編の第28巻『日記』を読みました。掲載されている文章は、次の各氏のものです。

鏑木清方/串田孫一/團伊玖磨/河盛好蔵/三木清/野上彌生子/別役実/後藤明生/紀田順一郎/久保田万太郎/大岡昇平/竹西寛子/田辺聖子/井上ひさし/安岡章太郎/遠藤周作/佐多稲子/吉屋信子/秋山ちえ子/森本毅郎/黒井千次/中野好夫/鈴木力衛/林達夫/松本道介/青木正美/徳川無声/芥川比呂司/吉増剛造/山川静夫/北杜夫/大原富枝/鍋島圭子

いずれも、「日記」という題で書かされた大人の作文という趣きで、懐古調あり論文調あり、中には中野好夫氏のように、日記など書かぬがよろしいと喝破するものまで、多種多様です。

冒頭近くに編まれた串田孫一氏の「日記」という文章は、幼い頃の体験から始まり、絵入りの日記を時間をかけて丹念につけていた頃の回想へと進み、日記を書く習慣についての考察に進むオーソドックスなものです。ここで触れられた『アミエルの日記』は、次の河盛好蔵さんの「現代・手紙日記作法」では、「全部が173冊のノートブック、1万7千ページにわたる非常に大部な日記からのほんの抜粋」にすぎないのに、それがすべて「自己自身との対話」であることに驚き、「たしかに異常性格者というべきでありましょう。」とされています。

永井荷風の日記は、かなり創作が入った、「他人に読ませるためのもの」であるという指摘は、数人の筆者が共通に指摘しておりますし、お天気や時事的な雑録が、後年史料的な価値を持つことも指摘されています。随筆集は、断片的に拾い読みする楽しさがありますが、年譜を作る仕事でもなければ、他人の日記も通読するものではなくて、断片的に目に入った面白さがポイントなのでしょう。

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