電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

シューマンの交響曲第3番「ライン」を聞く

2006年09月30日 10時48分40秒 | -オーケストラ
ここしばらく、通勤の音楽にずっとシューマンの交響曲第3番「ライン」を聞いておりました。演奏は、オトマール・スゥイトナー指揮ベルリン・シュターツカペレ、1986年に東ベルリン(当時)のイエス・キリスト教会でデジタル録音された、DENONのCD(COCO-70496)です。

この曲は、通常4楽章からなる古典派交響曲とは異り、5楽章からなる構成を取っています。病気が次第に進行し、脳梅毒による運動機能障碍の徴候が隠せなくなってきた頃、ドレスデンからデュッセルドルフに転居したシューマン40歳(1850年)の作品。社会的にも働き盛り、家庭的にも子育ての大切な時期です。半生の経験と知識を傾注した、堂々たる作品だと思います。

第1楽章、ベートーヴェンの「エロイカ」と同じ変ホ長調、いきいきと。大きな曲の始まりを感じさせます。この楽章は、速いテンポで演奏しても曲想にマッチするように思いますが、ここでは堂々としたテンポで響きは柔らかく、をモットーにしているようで、金管楽器の響きがとてもきれいです。
第2楽章、ハ長調、きわめて穏やかに。のどかないい音楽です。
第3楽章、変イ長調、速くなく。こちらもゆるやかで夢見るような音楽。解説を見て気づきましたが、そういえば金管楽器やティンパニが活躍しません。
第4楽章、変ロ短調、壮麗に。ケルン大聖堂の大司教が枢機卿に推挙された折の祝典が発想の元になっているのだとか。ホ短調の、いかにも交響曲!という雰囲気を持った壮麗な音楽です。シューマンがこういう音楽を書いたときに念頭にあったのは、メンデルスゾーンが復興に尽力したバッハのオルガン音楽だったのでしょうか。
第5楽章、いきいきと。再び変ホ長調に戻ります。ファンファーレのようなトランペットが随所に活躍し、ティンパニが決然とリズムを刻み、祝典的な気分で終わります。スカッとする終わり方です。

スゥイトナー盤は、比較的ゆっくりめのテンポで、たたみかけるような緊迫感や居丈高な壮麗さよりは、ゆったりとしたおおらかなイメージを描かせる演奏で、曲の感じとよくあっているように思います。通勤の音楽にはとてもあいますし、今日のようなお天気の良い休日に、コーヒーを飲みながらシンフォニーを聞いてほっと一息、という時にもいいものです。

シューマンの「ライン」交響曲は、このほかに DENON My Classic Gallery シリーズの一つ、GES-9215 に収録された、ローベルト・ヘーゲル指揮バンベルク交響楽団の演奏も聞いています。スゥイトナー盤もかなりゆっくりめのテンポですが、こちらは第1楽章のさらにゆっくりしたテンポが印象的。とても堂々とした感じを受けます。
できれば、快速テンポの演奏も聴いてみたい気がしますが、ここはやはりジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団のスタジオ録音のCDを探したいところです。

ちなみに、表記されたローベルト・ヘーゲルとは誰のことかと思ったら、ロベルト・ヘーガー教授のことらしい。Wikipediaの「ベルリン国立歌劇場」という記事(*)に出てきました。

参考までに、演奏データを示します。
■スウィトナー指揮ベルリン・シュターツカペレ
I=10'40" II=6'46" III=6'39" IV=5'22" V=6'30" total=35'57"
■ローベルト・ヘーゲル指揮バンベルク交響楽団
I=11'02" II=6'10" III=5'50" IV=5'48" V=6'18" total=35'08"

写真は、旧山形県議会を修復した議場ホール。マイクロホンのなかった時代に、肉声がよく通るように作られたせいでしょうか、収容人数は小規模ですが室内楽や声楽のリサイタルなどには絶好の、とても音響と雰囲気のよいホールです。撮影した日は、たまたま吹奏楽アンサンブルの演奏会の仕込みをしていました。

(*):Wikipediaより「ベルリン国立歌劇場」の記事

【追記】
年号に誤りがありましたので、訂正しました。(2021/09/05)
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名演の多い「ライン」 (よし)
2006-09-30 17:46:14
最近聴いたのはハイティンク、RCOですがゆったりとした名演でした。あとはサヴァリッシュ、ドレスデンとかクーベリック、バイエルンも同じような傾向ですね。今度はお勧めのセルを聴くことにします。
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よしさん、 (narkejp)
2006-09-30 20:44:51
コメントありがとうございます。サヴァリッシュも速めのテンポでスタイリッシュな演奏だったかと記憶しています。クーベリックのLPも持っていますが、肝心のセルのスタジオ録音に出会う機会がありません。先年もオンラインショップで注文したところ、見事に品切れ・在庫なし。なかなかご縁がありませんね。ソニーさんが、オリジナルの解説つきで出してくれるといいのですが(^_^)/

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TB有難うございます ()
2006-09-30 22:10:01
narkeipさん、TBを有難うございました。

私はセルの盤しか持っていないのですが、

演奏時間を調べようと思ったところ、解説の用紙を紛失したらしくジャケットに入っていなく、演奏時間が分かりません。

でも、スイトナーよりは速いでしょうね、

LP片面に収まっていて、音質も悪くないので、35分よりは短いはずです。
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シューマンのライン、好きです (mozart1889)
2006-10-01 04:47:57
シューマンの交響曲は大好きです。シューマンのピアノ曲や歌曲、室内楽を殆ど聴かないのに、オーケストレーションに難ありと言われる交響曲が大好きです。

特に1番「春」と3番「ライン」はイイですね。1番が文字通り春なら、この「ライン」は秋の収穫の喜びが聞こえてくるようなシンフォニーだと思います。秋になると聴きたくなります。

またTBをお願いします。
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丘 さん、 (narkejp)
2006-10-01 07:34:04
コメントとトラックバックをありがとうございます。シューマンの「ライン」交響曲、堂々としていていい曲ですね。LPをお持ちのようで、いいですねぇ。私もCDでセル盤を入手できる日を心待ちにしております。

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mozart1889さん、 (narkejp)
2006-10-01 16:01:44
こんにちは。コメントとトラックバックをありがとうございます。おっしゃるとおり、この爽やかな季節に聞くと、堂々とした曲想がよくマッチするような気がします。

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スイトナーの「ライン」 (adagietto♪)
2006-10-01 19:39:46
TBありがとうございます。最初に「ライン」を聴いたのは、私の記事にも書いた通り、NHK-FM放送の番組で、スイトナー/ベルリン・シュターツカペレの演奏だったんですよ!雄大かつゆったりしたテンポで、今でもお気に入りの一つです。エアーチェックしたテープをとにかく何度も聴きましたね。思い出の演奏です。
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adagiettoさん、 (narkejp)
2006-10-01 20:38:38
こんにちは。コメントをありがとうございます。スゥイトナーとベルリン・シュターツカペレの「ライン」、ほんとに堂々たる演奏ですね。「春」も自筆譜を元にした少々変わった出だしで驚きましたが、それはそれで納得できる、いい演奏でした。こういうCDが安価に入手できるようになって、嬉しく思います。

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納得ですね (eyes_1975)
2006-10-01 21:27:41
eyes_1975です。9月16日以来です。シューマンの交響曲は1~4番まで特徴が出ていますね。あの日、トラックバックを送りましたが、カラヤン、ベルリン・フィルも取り上げていますので、付け加えておきます。やはり、ドイツの演奏家との相性がいいようですね。
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eyes_1975さん、 (narkejp)
2006-10-02 06:03:59
コメントをありがとうございます。カラヤンとベルリンフィルによるシューマン、私は第1番「春」を聞いていますが、豊麗なシューマン、という印象を受けました。たしか、カラヤンはシューマンを初めて録音したのではなかったでしょうか。これもいいものですね。「ライン」がどんな演奏か、興味深いです。

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