電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ショパン「ピアノ協奏曲第1番」を聞く

2006年12月24日 19時51分54秒 | -協奏曲
山形交響楽団の第177回定期演奏会で、メジューエワさんのピアノで聴いたショパンのピアノ協奏曲第1番、妻もお気に入りの様子。いくら有名な曲といっても、やっぱり実際に演奏会で生で聴いた曲は、また印象が格別なのですね。

私も同じことで、それまでは20歳の若いショパンが書いた、ピアノ独奏部の美しさは無類だが、オーケストラの音は案外うすい音楽、という認識をどこかに持っておりました。でも、実際に演奏を聴き、それだけで片付けるわけにはいかないものを感じました。ピアノソロを持つシンフォニックな音楽を求めるのなら、ベートーヴェンのピアノ協奏曲がある。そういう音楽ではなく、自分の音楽を展開して行ったら、こういう曲になった、ということなのでしょう。

第1楽章、アレグロ・マエストーソ。
第2楽章、ロマンツェ、ラルゲット。
第3楽章、ロンド、ヴィヴァーチェ。

演奏は、クラウディオ・アラウ(Pf)、エリアフ・インバル指揮ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団。1970年10月に、ロンドンで録音されたCD(UCCP-7019)で、もちろんアナログ録音です。ゆったりした、堂々たるテンポ。1903年生まれですから、このとき67歳ということになります。安心して音楽の大きな流れに身をゆだねることができる、円熟した大家の演奏というべきでしょうか。インバルの指揮も、アラウの音楽にぴったりあった、柔軟な伴奏になっており、録音も良好です。

もう一枚は、エフゲニー・キーシン(Pf)、ドミトリ・キタエンコ指揮モスクワ・フィルハーモニック管弦楽団による、1984年3月のライブ録音(Brilliant Classics 92118-2)です。1971年、モスクワ生まれのキーシンは、この録音当時なんと12歳!ショパンの協奏曲を、速いテンポで弾ききった、驚くべき少年ピアニストのデビュー演奏会のライブ録音です。ゆったりとしたロマンティックな詩情あふれる音楽というよりは、花の陰に大砲を隠したと形容されるショパンの激しい一面を、若々しくストレートに表現した音楽といえば良いのでしょうか。あるいは、まだ肺活量が充分でないために、呼吸の深い音楽を構成する年齢ではないというべきなのでしょうか。キタエンコ指揮モスクワ・フィルのサポートも力強いものです。1984年のライブ録音ですが、まだアナログ録音です。

両者には、繰り返しの有無などの違いもあるのかもしれませんが、これだけタイプのことなる演奏であっても、ショパンのピアノ協奏曲はその性格を見誤ることはありません。時に激しく、時にたゆたうように展開される音楽に、思わずほぅっとため息をつきます。子供たちが家を離れ平均年齢65歳となった家族は、高畠ワイナリーの「まほろばの貴婦人」という甘口の赤ワインをいただきつつ、クリスマス・イヴを過ごしました。

■アラウ盤
I=20'45" II=11'18" III=10'16" total=42'19"
■キーシン盤
I=17'54" II=8'09" III=9'03" total=35'06"
コメント (10)    この記事についてブログを書く
« 「電網郊外散歩道」三年目に入る | トップ | これはすごい!~Wikipediaの... »

10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
おはようございます。 (kju96)
2006-12-25 06:16:59
シュパンとワイン
素敵なクリスマスですね。

ピアノ協奏曲1番 ロマンチックで良いですね。
第一楽章がやはり印象的。
20歳の頃のショパンは、大いに悩んでいた頃
2番目の恋をしていた頃でしょうか?

ブログも3年目に入られたのですね。
凄いですね。
相変わらず辞めようか・・迷っています。
長く続ける秘訣を教えてください。

楽しいブログ拝読させていただきます。
アラウは初めて買ったショパンでした (mozart1889)
2006-12-25 08:35:49
おはようございます。
アラウのこの演奏、2番とのカップリング2枚組で、ショパンの協奏曲を初めて買ったLPでした。
懐かしいです。大家風の堂々たるショパンでした。安定感バツグンで、豊かな響きが大好きです。色々な演奏を聴いてきましたが、アラウのショパンを聴くときが最も心休まる気がします。これ、刷り込みでしょうか。
良いショパンだと思います。
ありがとうございます&おめでとうございます (stonez)
2006-12-25 08:39:41
おはようございます、コメント&TBをどうもありがとうございました。
タイプの180度異なる、と言ってもいいような両者の演奏の様子がよく伝わってきました。トータルの演奏時間も随分と違うものですね。私はアラウのショパンは未聴ですが、ベートーヴェンのピアノソナタを聴いて、速くなくても恰好良い演奏があるんだな、ということを知り興味を持ったところですので、この演奏もいずれ聴いてみたいなと思います(^^

ところで、コメント遅くなりましたが3周年おめでとうございます!私は更新もまばらで、続けていくことの大変さをひしひしと感じていますので、narkejpさんには本当に頭が下がります。これからも楽しみにしています(^^
kju96さん、 (narkejp)
2006-12-25 21:23:05
コメントありがとうございます。若いショパンの音楽、平均年齢65歳の家族にはいささか不似合いなものがありますが、そこはアルコールの勢いで(^o^)/
ブログを長く続ける秘訣ですか。さて、特別なものはないのですが、2005年6月4日に書いた、「続く理由 とだえる理由」という記事などは参考になりますでしょうか。あるいは、2006年9月16日や18日の記事「ブログサイトで更新を維持するちょっとした工夫(1)~(3)」などはいかがでしょうか。
もともと、パソコン通信の時代から、文字によるやりとりに親しんでおりましたので、特に苦痛に感じないのです。それでは、あまり参考になりませんね(^_^;)>poripori
mozart1889さん、 (narkejp)
2006-12-25 21:28:32
クラウディオ・アラウの演奏は、ほんとに堂々としていて、安心感がありますね。ショパンに限らず、「子供の情景」など、シューマンも好きな演奏です。山響の演奏会の関連で、中村紘子さんの演奏にコメントしましたが、アラウの同じ演奏があったとは、うっかり見落としてしまいました(^_^;)>poripori
stonezさん、 (narkejp)
2006-12-25 21:35:41
コメントありがとうございます。キーシンという少年のその後は、残念ながら演奏を聞いていませんが、きっと素晴らしい演奏家になっていることでしょうね。アラウのベートーヴェンは、まだ聞いたことがありません。なんとなく、堂々たるベートーヴェン、という感じがします(^_^)/
更新の件、ときどき苦し紛れにひねり出すウルトラC級の反則技はまだばれていないようですね。別名、秘技Wikipediaの術、というのですが(^o^)/
オケに乗って (balaine)
2006-12-26 13:41:41
いい曲ですよね。
今年、1月と3月の2回もショパンの1番のPコンに乗ることが出来ました。演奏会の曲目紹介のノートまで出しゃばって書いてしまいました。
昔、ピアノを習っていたので、ラフマニノフの2番、チャイコのPコンとともに憧れの曲です(私は弾けるようなレベルではありません)。
その協奏曲としてのオケ側に乗れると言うのも幸せなことです。
リンクしてあるのはその演奏ですが、第1楽章だけでも20分近くあるので、webにアップする関係上、5分ずつ位のブツ切りになっております。
もしもお暇でしたら、4/3分から続けて4/6分までお聞き頂くと第一楽章が完成します。私はフルートのトップです。
balaine さん、 (narkejp)
2006-12-26 22:30:28
コメントありがとうございます。酒田フィルの演奏、聴きました。フルート、緊張感もあったでしょうが、気持ちよかったでしょうね~。演奏する楽しみのある人がうらやましい限りです。もっとも、私の場合は才能も根気も楽器演奏には向いていないようですが(^o^)/
お好きなピアノ協奏曲、ショパンの第1番とラフマニノフの2番とチャイコフスキーと、ややスラブ系方向のロマンティック三選手ですね。私の場合はこれにシューマンとグリーグ、ベートーヴェンとブラームスいずれも1番、モーツァルトの20番、そしてプロコフィエフの3番とが加わり、全9曲、野球チームができま~す(^o^)/
Pコン (balaine)
2006-12-27 10:00:15
narkejp様、わざわざお聞き頂き恐縮です。
あの時は、有効姉妹都市のソルノク交響楽団と合同の演奏で、たった1日のリハ、そしてGP経ての本番。指揮はあちらの方でちょっと分かりにくい棒でした。管も弦も縦が揃わず、途中で崩れかけそうな所もあったり、ソリストとも合わず、ヒヤヒヤというかどたばたな演奏ではありましたが、ピアノが素晴らしいし、オケも部分的にはイケテル所もあったと思います。
Pコン、もちろん、私もあげた3つ以外にも色々好きです。
ベートーベンのPコン3番なんかも大好きです。ルドルフ・ゼルキンの演奏が一番好きです。
子供の頃ピアノを習っていた印象で、つい最近までモーツァルトはなかなか好きになれなかったのです。簡単そうに、楽しそうに聴こえるのに、演奏する方に取ってはとても難しく、「楽しそうに」「楽そうに」聞かせるのは至難の業。
そんな中、今年、TVとFMで視聴した、ジャズピアニスト小曽根真氏の『ジュノム(ジュナミ?)には、震えました。
賛否両論あるでしょうが、私にとっては「ああ、モーツァルトって、こういう音楽なんだ!」という新鮮な驚きを与えてくれました。
小曽根真さんは (narkejp)
2006-12-27 21:46:00
数年前、国民文化祭が山形で開催されたときに、井上ひさしさんが総合プロデュースで、小曽根さんがピアノを弾いて、山響と演奏会を開いたことがありました。私はちょうどその頃は夜間勤務の単身赴任だったので、残念ながら聞けなかったのですが、一流のジャズピアニストでありながら、クラシックの門をたたいて基礎からやり直した、という小曽根真さんのその意気込み、すごいなぁ、と思います。この話、以前N響アワーでも取り上げていましたね。私も一度聞いてみたいものです。

コメントを投稿

-協奏曲」カテゴリの最新記事