電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

半藤末利子『夏目家の糠みそ』を読む

2012年10月30日 06時01分37秒 | 読書
お目当ての本を探すには、ネットは便利ですし、新刊の書棚の前で眺める時間は書店派の喜びです。一方、開架式の書架の中から、思いがけない一冊を見つけ出す楽しみは、図書館利用者の醍醐味と言えます。

図書館で見つけた一冊、半藤末利子著『夏目家の糠みそ』を読みました。奥付けには、2000年5月23日、第1版第1刷、PHP研究所、とありました。著者については存じ上げませんでしたが、なんでも夏目漱石の孫にあたるのだとか。私にとっては、名前は明示されていないけれど、某出版社に勤務し作家となった半藤氏といえば、『昭和史』の半藤一利氏しか知りません。ハハァ、半藤一利氏の奥様で、夏目漱石の孫に当たる随筆家なのだな、と納得しました。

第1章:「夏目家の糠みそ」は、夏目漱石の孫として、親から伝え聞いていることや、父母のこと、漱石の縁者としてのエピソードなどを綴られます。また、門下生の間で起こった、漱石の娘・筆子をめぐる恋のあつれきで割を食ったらしい父・松岡譲に対する思いなどが印象的です。
第2章:「餌箱のある庭」は、母の介護をめぐる半藤家の日常を主題とした文章が多く、母と娘の関係や、食物の味などに関連した越後長岡の思い出などが中心となります。
第3章:「五十二年前の中学生」は、若かりし日々の出来事を中心に、旧制長岡中学が戦後に男女共学となり、ごく希少な女子生徒として特別モテにモテた話などが愉快です。
第4章:「わが町」は、引越しの話などを含みながら、居住した町の隣人や町内会、あるいは商店街などの人間模様を綴ります。うーむ、これだけ率直に描かれると、中には気分を害する石頭も出てきそうなものですが、そこはやっぱり「夏目漱石の孫」の威力がモノを言うのでしょう。人畜無害の当方などは、オソロシくって、隣人や町内会の人々などを具体的に描いたりなどはとてもできません(^o^)/

本書の中で、たいへん有意義で、思わず備忘録に書き抜いたページがありました。84頁、「母に伝授された(糠みその)手入れの仕方と増やし方のこつ」です。

(1) 樽かほうろうの入れ物で保存すること。
(2) 茄子の色が綺麗に上がるように、鉄の古銭などを数枚入れること。
(3) 肉や魚の煮汁の残りを入れること。鯛の頭などを入れてもよし。
(4) 水気が増して来たら糠と塩を足し、その時一緒に出し昆布と大豆一掴みを入れる。
(5) 春秋は夜食べる分は朝に漬け込むこと。真夏は三、四時間位漬ければ充分である。
(6) 長期に使わない時は、塩と糠をたっぷり上に撒き、密閉しておくこと。
(7) 使わない日も一日一回はかきまぜること。

うーむ、なるほど。乳酸発酵の見事なメインテナンス・管理の仕方ですね。単身赴任の頃に、自分でポリ袋に味噌とヨーグルトを混ぜたものを入れ、キュウリやナスや人参などを漬けて食べていたものです。また、家でも老母の糠みそ漬けを美味しくいただいています。ぜひ一度、自分で作った野菜で、試してみたいものです。


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2 コメント

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Unknown (さちこ)
2012-10-30 20:55:56
こんばんは。
なんで、1000円札かと思いましたが、なるほど。
朝晩が冷えますね、そちらは大分温度が低いのでしょうね。
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さちこ さん、 (narkejp)
2012-10-31 06:14:35
コメントありがとうございます。朝晩はだいぶ冷えますね。最高気温は20度を切り、最低気温が一桁になりました。寒いはずですね。早朝などは、ストーブの出番です。
1000円札は、夏目漱石の出番を作るためです。デザインが変わったのはいつ頃だったのか、とんと記憶にありませんが、しばらく前なのでしょうか。
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