電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

佐伯泰英『一矢ノ秋~居眠り磐音江戸双紙(37)』を読む

2012年01月28日 06時02分47秒 | -佐伯泰英
佐伯泰英著『居眠り磐音江戸双紙』シリーズも、第37巻となりました。『一矢ノ秋』という題名からみて、敵に一矢を報いる戦いの季節ということでしょう。坂崎磐音クンは、あまりに強すぎて、もう天下無敵というところで、弱点と言えば、おこん・空也という家族ができたこと。だからこそ、紀州高野山の奥にある姥捨ノ郷に隠れ住み、しばらく時を待っていたのでした。

第1章:「春の章:桜鯛さわぎ」。まずは江戸の様子から。品川柳次郎・お有夫婦に懐妊のきざしあり、媒人となってもらった奥医師・桂川甫周国端さんに診察を願います。結果はもちろんおめでたですが、磐音からの書状も届いており、義父にあたる金兵衛さんに秘かに伝えるために、苦心の演技をします。でもね~、これだけべらべらと喋っているのですから、ちょいと立ち聞きすれば、全部バレバレだと思うんですけどね~。

第2章:「夏の章:早苗蜻蛉」。いっぽう、姥捨の郷での磐音主従の生活は、姥捨雑賀衆とともに田植えの準備でした。これも、雹田平一味が姥捨ノ郷を突き止めていないためです。ところが、雑賀衆の儀助親方らの一行が、一の口付近で遺体となって発見されます。相手は19人で、頭分は唐人らしいとのこと。追う者と追われる者、滝つぼを背に、6人対19人の激闘です。

第3章:「秋の章:ぴらぴら簪」。こちらは江戸。品川お有の懐妊で、岩田帯の祝の席におなじみの顔ぶれが集まります。由蔵さんが遅刻とは珍しいと思ったら、なるほど、手代は松平辰平クンの変装だったのですね。たしかに、皆さんに情報が伝わり便利ではありますが、磐音に縁のある人たちがこれだけ集まっているのに、お庭番などが盗聴していないのは不思議です。
松平辰平クン、ひそかに佐野家に趣き、佐野善左衛門と面会するのですが、雹田平一味が京にいると聞き、京都に向かって出立してしまいます。なんと短兵急な人でしょ!利次郎クンが霧子さんにぴらぴら簪を買ってくるなんて、純情ですね~。いっぽう京都では、雹田平の根城を町奉行所が訪れて追い出してしまい、かわりに根城に選んだのが茶屋本家の北側にある古い貸家。実はこの家に通じる地下道があって、動静が筒抜けになるという仕掛けでした。シャーロック・ホームズ『赤毛連盟』も真っ青の情報戦は、雹田平側の敗け(^o^)/

第4章:「冬の章:七人の侍」。田沼意次の愛妾おすなが自ら高野山詣でをして姥捨ノ郷に隠れ潜む坂崎磐音親子を抹殺しようと伝えてきます。透視能力を持つ雹田平が、京都で磐音たちと対決しようと待つところへ、思いがけず佐野善左衛門が乗り込んで来ます。佐野家の家系図を横取りされ、田沼家の家系図を偽造するのに使われてしまったのですから、怒りはおさまりません。でも、相手が悪かった。雹田平はただの系図屋ではないようです。ここで佐野善左衛門が切られては、田沼の失脚の主役がいなくなってしまうと思ったか、作者はここで奥の手を出して来ます。正義の味方登場!という場面は、いかにもテレビ的。そして、戦いの舞台は別に設定されることに。

第5章:「再び春の章:決戦」。この章は、せっかくですので伏せておきましょう。雹田平ばかりかおすなまでも、「おのれ、憎っくき坂崎磐音~!」という運命になるかどうか、お楽しみに、としておきます。



しかし、雹田平の透視能力は、仏教各派の経文の向こうには届かないのだそうな。うーむ、ということは、壁の裏側に書かれた経文には、誤字脱字は無かった、ということだな(^o^)/

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2 コメント

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Unknown (Aki_1031)
2012-01-30 00:39:33
読了、お疲れ様でした!
なーんか色々あっけなかったですよねえ…。
正直、物足りないというか(←爆弾投下)。
一番良かったのは柳次郎クンでしたvv

ところで、お写真のお山はどこですか?
鳥海山とかだったら…素敵っ☆
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Aki_1031 さん、 (narkejp)
2012-01-30 06:29:14
コメントありがとうございます。作者の体調もすぐれない時期に書かれたものかもしれませんね。品川柳次郎・お有夫妻がいい味でしたね。
写真は、新庄市など最上地方側から見た鳥海山です。
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