電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

藤沢周平『隠し剣秋風抄』を読む

2016年11月03日 06時02分21秒 | -藤沢周平
文春文庫で、藤沢周平著『隠し剣秋風抄』を読みました。初出は『オール讀物』誌で、私が大学を出て就職し、関東某県で暮らしていた頃に執筆発表されていた作品のようです。単身赴任の頃に読み、このたびは十年ぶりくらいの再読になりました。

第1話:「酒乱剣石割り」。そうそう、酒乱というのは、こういうタイプです(^o^)/
第2話:「汚名剣双燕」。臆病者の汚名を着てしまったが、それは理由あってのこと。かつての剣友と決着をつける時です。
第3話:「女難剣雷切り」。醜男で間が悪い惣六の話です。
第4話:「陽狂剣かげろう」。はじめは狂気を真似ることで乙江との別れをやり過ごすつもりでしたが、佐藤半之丞は乙江の早逝を知るや、お上に一言恨みを言おうと城中で刀を抜きます。
第5話:「偏屈剣蟇ノ舌」。人が右だと言えば左と言うタイプの偏屈者に、暗殺者に頼んでいるのではないと言いながら情報を仕込んだら、結末はどうも思い通りにいくとは限らなかったようです。
第6話:「好色剣流水」。好色漢というのはいるものです。自分はそれほどではないといいながら、常に女性の方に寄っていくタイプ。でも、今回は相手が悪かった。相打ちが精一杯か。
第7話:「暗黒剣千鳥」。家老によって暗殺を命じられた5人のうち4人までが殺され、三崎修助だけが生き残ります。表向きの縁談の華やかさとは裏腹に重苦しい結末ですが、藤沢周平作品らしく、ひたむきな娘が少し明るい希望をつないでいるようです。
第8話:「孤立剣残月」。上意討ちの命を受けて討ち取った男の弟が、帰国したあかつきには小鹿七兵衛と果たし合いを申し込むらしい、という情報が届きます。相手は、梶派一刀流の名手とのこと。果たし合いの後の夫婦の描き方は、なかなかいい場面です。
第9話:「盲目剣谺返し」。こちらは、映画「武士の一分」の原作になった作品です。文春文庫で296頁~331頁まで、わずかに36頁の短編です。映画では、キムタクこと木村拓哉の、有段者らしい剣さばきの見事さに驚きました。原作の方は、簡潔な描写の中に、三村新之丞と加世の夫婦のすれ違いと再会を描きます。確かに、味わい深い、印象的な幕切れです。


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2 コメント

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おはようございます (こに)
2018-04-04 08:00:33
今日も暑くなりそうな名古屋です。

いつまでも褪せることのない藤沢周平の世界でした。
キムタクへの偏見が映画の良さにフィルタをかけてしまったかも。ただ、私の周囲には同じ感想を持った人も多く肯いてしまったのでした。
画像の帯「文春文庫ビッグ4」が気になりました♪
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こに さん、 (narkejp)
2018-04-04 20:06:04
コメントありがとうございます。原作と映画化された作品とを比べると、想像力の余地の分だけ原作のほうが分があるようですね。キムタクについては、当方は「動くキムタク」を初めて見たレベルですので、剣道有段者らしい所作に感心しました。原作は、やっぱりいいですね~。
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