電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形交響楽団第183回定期演奏会を聴く~「浄夜」と「田園」

2007年08月26日 07時18分46秒 | -オーケストラ
8月25日の土曜日、山形県民会館で、山形交響楽団第183回定期演奏会を聴きました。指揮は、2000年から数えて五回目の登場という、首席客演指揮者の阪哲朗(ばん・てつろう)さん。プレ・コンサート・トークでは、常に新しいものを求める山響の姿勢に共感を示し、特に飯森範親さん就任後、方向性が定まったように感じる、とのお話でした。
今回のプログラムは2曲だけで、シェーンベルクの「浄夜」とベートーヴェンの交響曲第6番「田園」という渋いものです。阪さんの話では、「田園」交響曲を若い指揮者はやりたがらないのだそうです。第5番や第7番のような力強さだけではいかない。ある意味で内向的な喜びと感謝を表さなければいけないからでしょうか、とのこと。シェーンベルクは、文章で言えば「・・・です。」と言い切らない、どこまでも続くような無調の音楽や、十二音技法を作った人です。この「浄夜」という曲は、調性音楽にピリオドを打った、と位置づけられる曲ではないか。耳あたりは良いし、きれいな音楽です、とのこと。
ベートーヴェンの「田園」と言うけれど、もともとの標題は「パストラーレ」、「牧歌」であって田んぼじゃありません。ウィーンの風ということで、小鳥の声もあり、スカッとさわやかな田園になれば、とのことでした。

第一部、弦楽セクションの登場。みなさん、黒のドレスにタキシード姿です。指揮台をはさんで第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが並び、その奥に左側がチェロ、右側がヴィオラが配置されています。コントラバスはいつもの反対側、左手奥に並びました。
シェーンベルクの「浄夜」は、オリジナルの弦楽六重奏ではなく、後に作曲者自身が改作した弦楽合奏版です。なんともいえない求心的な演奏。最後の余韻が静かに消えて行くのを待って、最初にためらいがちな拍手、そして指揮者の手が完全に下がるのを待っていたかのように大きな拍手。う~ん、生の演奏で「浄夜」を聴けるとは思わなかった。それだけでも充分満足ですが、演奏も弦楽セクションの意気ごみを感じました。

休憩の後、ベートーヴェンの「田園」です。配置はやはりコントラバスが左に位置するのはシェーンベルクと同じですが、今度は正面奥に木管、金管、右にティンパニが入って、いつもの山響フル出演。
第1楽章、田舎へ着いたときの愉快な気分。県民会館の椅子の固さも忘れ、心地よい気分に浸ります。
第2楽章、小川のほとりの場面。ほんとに標題音楽らしい楽章。木管楽器で小鳥の声を模したところなど、聴いていて楽しいし、演奏者を見ていても楽しい。
第3楽章、村人たちの楽しい踊り。スケルツォ楽章。
第4楽章、雷と嵐。演奏中にティンパニ奏者が張りを確かめ、音程を調整している様子がよく見えて、嵐の場面が視覚的にもよくわかります。
第5楽章、牧歌-嵐の後の喜びと神への感謝の気持ち。たしかに、力強いベートーヴェンは音楽の力から表現しやすいのでしょうが、喜びと感謝の音楽は、若さにまかせた音楽作りからは難しいのかもしれません。

拍手が続き、今回はアンコールが出ました。「ピチカート・ポルカ」です。「田園」で文字通り「嵐のように」活躍したティンパニ奏者が、今度は小さなグロッケン(というのかな?)で小味の利いた演奏を披露、聴衆も大喜びで、皆さん満足して帰宅の途につかれたことでしょう。副題どおり「ウィーンの風」を感じた、いい演奏会でした。

今回は、帰省中の息子と出かけましたが、充分に満足した様子、帰宅して私のCDコレクションから、ブーレーズ/NYPの「浄夜」とスウィトナーの「田園」を取り出して聴いていた模様です。山響ファンがまた一人増えました(^o^)/
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4 コメント

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私も (kanon)
2007-08-26 09:53:12
昨夜は主人と一緒に県民会館におりました。
浄夜、美しかったですね!
田園は生で聴いたのはとても久しぶりで、楽しい気分になりました。
実は私もブーレーズのCDを持っているんです♪今日は棚から引っ張り出して聴いてみようかな?
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ヨーロッパの田園には田んぼはないですね (balaine)
2007-08-26 18:11:31
阪さん山響、素敵でしたね?飯森さんとはやはり味が違いました。
阪さんのお母様は新庄のご出身と伺いました。京都生まれの阪さんですが、なにかと山形に縁のある方のようです。
私は、演奏会後の懇親会に出席し酒田に戻ったら夜中の1時過ぎ。
そして、今日は地元でブラームスの「田園」と言われる「交響曲第2番」を演奏しました。自分の演奏はぼろぼろでしたが、楽しい演奏会でした。
ベートーベンの「田園」には、「人間」がたくさん出てきますが、ブラームスの「田園」は、どちらかというとアルプスの山波、なだらかな丘陵地帯の麦畑など景色が主体で「人」はあまり登場しないように思います。どちらも美しい曲で、聴けば聴くほど本当に名曲だな~と思います。
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kanon さん、 (narkejp)
2007-08-26 20:45:07
コメントありがとうございます。浄夜、田園、いい演奏会でしたね。ブーレーズの浄夜も、美しい、いい演奏。ベルクの抒情組曲も、しばらくぶりです。なにやらもう秋の気配です。
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balaine さん、 (narkejp)
2007-08-26 20:57:04
ご夫妻でのコメント、ありがとうございます。椅子は固いが、いい演奏会でした。それにしても、懇親会後に酒田に戻ったのが夜中の1時過ぎ、翌日にブラームスの2番とは、なんともタイトなスケジュール。お元気ですね!これから秋はブラームスがよく似合う季節になりますね。
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