電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ブラームス「ヴァイオリン・ソナタ第2番」を聴く

2016年01月27日 06時03分20秒 | -室内楽
このところ、ヘンリク・シェリングのヴァイオリン、アルトゥール・ルービンシュタインのピアノで、ブラームスの「ヴァイオリン・ソナタ第2番」を聴いております。

ヘンリク・シェリングは、私の若い頃にはレコード会社のドル箱スターの一人であり、廉価盤中心の購入希望リストには登場しないバイオリニストでした。当時のレコード雑誌の新譜評などを読むと、シェリングの演奏は「精神性」が高く、その反面、例えばルッジェーロ・リッチなどの演奏は技巧ばかりで空疎だ、といったような言説がまかり通っておりました。もちろん、今はリッチの演奏が空疎だとは思いませんけれど、たまにFM放送などでJ.S.バッハの無伴奏や、ヴァルヒャとのソナタなどを耳にする機会はあっても、じっくり繰り返し聴く機会には恵まれず、シェリングはいつしか忘れ去ってしまった演奏家でありました。

ところが、時は流れて私自身が還暦を過ぎた頃に、シェリングの録音の一部がパブリック・ドメインになっている(*1)ことを知り、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ全集を入手することができました。これまで主として聴いてきたのは、イツァーク・パールマン(Vn)とウラディミール・アシュケナージ(Pf)によるEMI録音です。やわらかく優しい表情のパールマン盤にくらべて、シェリングとルービンシュタインの演奏の、表情がずいぶん厳しくいかめしいことに驚きます。別の言い方をすれば、愛想のない表情と言ってもよいかもしれない。ルービンシュタインに対して、正々堂々とわたりあっている感じもします。なるほど、当時の評論家氏は、こういうのを「精神性」と評していたのだな、と理解しました。

■シェリング(Vn)、ルービンシュタイン(Pf)盤
I=8'16" II=6'06" III=5'49" total=20'11"
■パールマン(Vn)、アシュケナージ(Pf)盤
I=8'20" II=6'41" III=5'08" total=20'09"



パールマン盤に添付のリーフレットの解説によれば、ブラームスのこのソナタは、トゥーンに滞在中であった1886年の夏に作曲されたもので、この時期の平安と充実を反映するものなのだとか。そうであれば、シェリング盤のほうは、もう少し柔和な表情でも良さそうに思いますが、反面、いかめしい表情の中にチラリと見せる含羞こそブラームスにふさわしいと思ったりもします。おもしろいものです。

(*1):シェリング/ブラームス「ヴァイオリン・ソナタ第2番イ長調Op.100」~クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~より


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2 コメント

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歳とともに好みも変わる (パスピエ)
2016-01-27 09:55:33
おはようございます

ブラームスのヴァイオリン・ソナタというと2番が地味な存在でしょうか?
私は暫くの間は1番と3番しか聴かなかったものでした。
しかし数年前にスーク/カッチェンの演奏を聴いて2番の良さを教えてもらいました。
以後、ブラームスのソナタというと1番か2番になってしまいました
大好きだった3番、今の私にとっては少し饒舌すぎるようです。
パスピエ さん、 (narkejp)
2016-01-27 18:45:06
コメントありがとうございます。ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第2番、地味ながらなかなかいい曲ですね。一目惚れというよりも、後からじわっと良さがわかるタイプの音楽と思います。年齢とともに好みも変わるということ、ほんとにその通りですね。私の場合、若い頃は迫力あるオーケストラ音楽に偏重していたのが、歳とともに小編成の室内楽の比率が増してきています。もしかすると活力の減退かとも思うのですが(^o^;)>poripori
明日は山形弦楽四重奏団の定期演奏会で、ハイドン、シューベルト、バルトークを聴く予定です。今から楽しみです(^o^)/

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