電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

香月美夜『本好きの下剋上』第5部「女神の化身XI」を読む

2023年06月03日 06時00分36秒 | -香月美夜
TO出版刊の単行本で、香月美夜著『本好きの下剋上』第5部「女神の化身XI」を読みました。サクランボ収穫作業期間中、雨降りで一日作業を休止し、ちょうどよい休憩日となった読書タイムです。

外患誘致の罪を犯し、ランツェナーヴェの王族をユルゲンシュミットのツェントに据えようと企んだアーレンスバッハを蹴散らしたフェルディナンド&ローゼマインを中心とするエーレンフェストとダンケルフェルガー連合軍は、なんとか敵勢力を撃退することに成功しますが、問題はトンチンカンな対応で危機にまるで対処できなかった王族の扱いです。次期ツェント候補だったジギスヴァルト王子はこともあろうにフェルディナンドの責任を問おうとする姿勢を見せ、それは女神が降臨し神々の力をまとっているローゼマインの怒りを買うハメに。王族への対応はエグランティーヌが仮のグリトリスハイトを得て次期ツェントに就任することでなんとかまとまりますが、問題はアドルフィーネの離縁話よりも、メスティオノーラの嫌がらせ(?!)で記憶の一部をなくしてしまっているローゼマインの神々の力をどうやったら消費し尽くすことができるのか、ということです。そのために、いろいろ試してみるプロセスが笑えます。とくに、エピローグにも取り上げられている、カンナヴィッツの海の再生と「お魚ヒャッハー!」事件のあたりが、実になんというか、ローゼマインらしい。結局のところはエアヴェルミーンの髪の毛だった木の枝を起点とする古代の大規模魔術で全体を再生してしまうところが、作者のファンタジックな想像力に驚嘆し賛嘆するとともに、ある意味、半ば驚き呆れるところです(^o^)/

さて、長い物語も次巻で完結することとなります。すでに完結しているWEB版本編では、ローゼマインが記憶を取り戻すシーンあたりが大きなヤマ場になるところですが、作者は単行本ではだいぶ加筆していますので、単にそれだけでは終わらず、周辺のさまざまな動きもかなりたっぷりと描かれるはずです。刊行予定は2023年冬とアナウンスされています。古希を過ぎたジイさんを夢中にさせているいささか風変わりなライトノベル、完結編の刊行が今から楽しみです。

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