電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響第295回定期演奏会でモーツァルト、サッリネン、シベリウスを聴く

2021年09月27日 06時00分01秒 | -オーケストラ
月末の日曜日、午前中は立ち枯れたサクランボの樹を伐採し、運搬できるように短く切りそろえる仕事をしていましたが、チェーンソーのチェーンが外れてしまい、中断。しかも、取り付けたらチェーンの向きが反対でやり直しという落ちまで付きました。やれやれ(^o^)/


  (早く着きすぎたかな?)

昼食後に、山響こと山形交響楽団の第295回定期演奏会に出かけました。今回のプログラムは、

  1. モーツァルト:交響曲 第39番 変ホ長調 K.543
  2. サッリネン:クラリネット、ヴィオラと室内オーケストラのための協奏曲 作品91【日本初演】
  3. シベリウス:交響曲 第5番 変ホ長調 作品82
      広上淳一指揮 山形交響楽団、川上一道(Cl)、山中保人(Vla)

というものです。もともとは、オッコ・カムさんが得意曲を指揮するということで組まれたプログラムではなかったかと想像していますが、新型コロナウィルス禍のためにオッコ・カムさんが来日できなくなり、急遽、広上淳一さんが振ることになったという事情がありました。それにしては広上さん、都合により曲目変更などと言わずにそのままの曲目で実施です。さすがです。

1曲め:モーツァルトの交響曲第39番です。最初のチューニングが、いつものオーボエの音ではありませんで、おや?と思ったのでしたが、ああそうか、この曲はオーボエがないんだ、と納得。実はクラリネットの川上さんがチューニングを担当していたのでした。楽器編成と配置もいつもの対向配置ではありません。しかも、左から第1ヴァイオリン(10)、第2ヴァイオリン(8)、チェロ(6)、ヴィオラ(4)、その後方にコントラバス(4)と、弦楽5部がだいぶ増強されています。正面奥には、クラリネット(2)、フルート(1)、ファゴット(2)の木管群、その奥にホルン(2)、トランペット(2)の金管群で、右手にバロック・ティンパニというものです。演奏が始まると、ゆったりしたテンポ、重厚な表情付けで、オーケストラも増強の効果か、弦楽の響きに厚みと迫力があります。最近はすっかり馴染んでいる明朗活発快速な古楽スタイルではなく、むしろ古楽ムーヴメント以前のスタイルに近く、懐かしさを感じました。そういえば50年前の学生時代には、一番重々しい39番の演奏は誰の指揮によるものか、などとアホなことを調べていたものでした(^o^;)>poripori

続いて第2曲め、サッリネン(*1)の「クラリネット、ヴィオラと室内オーケストラのための協奏曲」です。実際は前日土曜日の夜の演奏会が日本初演だったわけですが、同じ第295回定期演奏会ですから、2日目の日曜日のマチネも日本初演の続きのようなものでしょう(^o^)/
楽器編成と配置は、Cl と Vla の独奏者2人と指揮者を中央に、10-8-5-6-4 の弦楽5部が囲み、正面奥にFl(2:うち1はPic持ち替え)、左側にスネアドラム、バスドラム、マリンバ、ヴィヴラフォン、カスタネットのパーカッションというものです。第1曲:「イルカの嘆き」。ヴィオラの独奏にクラリネットが加わり、遠雷のようなバスドラムの音が響きます。フルートとコントラバスが加わり、低い方から弦楽が、マリンバが、そしてヴィヴラフォンが入り、しだいに緊張が高まっていきます。フルートの音にかぶせてギィーッと言う音が鳴るのは、抵抗?悲鳴? 第2曲:「Les Jeux」フランス語?「ゲーム」というほどの意味でしょうか。ピッコロとフルート、弦、クラリネットで始まります。マリンバと弦のピツィカートが不思議な楽しさ、明るさを示します。中間部で独奏者二人の対話がありますが、再びリズミックな音楽が展開されます。第3曲:「雄牛のアダージョ」。ヴィオラとクラリネットの静かな重奏から、精緻な弦楽の響きにのってスネアドラムの激しい高まり、ときどきカスタネットが入るのはスペインの闘牛場を表すものか。スネアドラムも、皮だけでなくフレームを叩く音が効果的で、興奮すると和太鼓でも胴をたたく表現がありますので、類似の表現なのかもしれません。
いずれにしろ、初めて聴く日本初演の曲を堪能しました。クラリネットの川上さん、ヴィオラの山中さん、ともに山響の団員です。お二人の実力をあらためて認識すると共に、音楽をほんとに楽しみました。良かった〜!



20分の休憩の後は、シベリウスの交響曲第5番です。10-8-6-6-4 の弦楽5部に、正面奥には Fl(2)、Ob(2)、その奥に Cl(2)、Fg(2)、一番奥には Tp(3) と Tb(3:うち1はBassTb)、Tp の左側に Timp という配置です。モーツァルトでは古楽器を使用でしたが、シベリウスでは現代楽器を使用しています。このへんは時代考証を踏まえた選択でしょう。
第1楽章:Tempo molto moderato - Allegro moderato ゆっくりとした出だしは、北欧の大自然の夜明けをイメージします。軽やかなリズムで楽しそうに踊るような場面もあり、指揮する広上淳一さんはバンザイしたりジャンプしたりするような指揮ぶりです。「のだめカンタービレ」でチェコの指揮者コンクールに千秋と一緒に参加した小柄な日本人指揮者(名前忘れた)が年齢を重ねたら、失礼ながらこんなふうになるのかな、と想像してしまいました(^o^)/
第2楽章:Andante mosso, quasi allegro 木管とHrnで始まり、弦のピツィカートのところは小鳥かリスなどの小動物の動きを連想します。以前、シベリウスの交響曲第5番の記事を書いたときには、「鉄腕アトムの妹のウランちゃんが小走りに歩くような」と形容しました(*2)が、ほんとにそんな感じ。
第3楽章:Allegro molto - Largamente assai ゆったりとした旋律が堂々と立ち上がり、大きな波のように繰り返される感じは、ドラマチックな展開です。終わりの「これでもか」というアレは、何というか、実にインパクトがあります。

今回も、良い演奏会となりました。本来はオッコ・カムさんの指揮で山響の演奏が聴きたかったところでしたが、広上淳一さんの指揮で予定通り聴くことができて、ほんとに感謝です。新型コロナウィルス禍の中でも、県内のワクチン接種率が6割を超え、県内の感染者数が1桁で続いている昨今、少しは希望が見えてきたような気がします。芸術の秋、次は10月9日(土)のモーツァルトの歌劇「魔笛」、そして10月15日(金)の山形弦楽四重奏団の第81回定期演奏会だな。まだまだ楽しみは続きます。その分、野菜畑で、果樹園で、しっかり働かなければ(^o^)/

(*1): サッリネン Aulis Sallinen 1935年生まれのフィンランドの作曲家。Wikipedia の解説はここ。
(*2): シベリウス「交響曲第5番」を聴く〜「電網郊外散歩道」2011年9月

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