電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

モーツァルト「交響曲第30番ニ長調」を聴く

2019年03月26日 06時01分05秒 | -オーケストラ
このところ、通勤の音楽として繰り返し聴いていたのが、モーツァルトの交響曲第30番ニ長調、K.202(186b) です。飯森範親指揮、山形交響楽団による「モーツァルト交響曲全集」よりNo.9のCDで、2014年2月のモーツァルト全曲演奏定期演奏会(*1)の際にデジタル録音されたものです。



添付リーフレット中の、萩谷由喜子さんによる解説によれば、作曲された年代は1774年5月5日、ザルツブルグで完成とありますので、イタリア旅行で吸収した様々な音楽的成果を持ちながら、コロレド大司教との軋轢に悩まされる18歳頃の作品とみられます。同年に作曲された第29番とともに、いわゆる「ギャラント・スタイル」の、優美で美しい音楽となっています。自らの才能と技量に自信を持ち、皇帝をはじめ高位の人々の賞賛を得た自負を自覚する18歳の青年の、自由な音楽活動への熱望は、まだ軽快優美なギャラント・スタイルの影に隠れて、顕在化してはいない模様。

第1楽章:モルト・アレグロ、ニ長調、3/4拍子。
第2楽章:アンダンティーノ・コン・モト、イ長調、2/4拍子。弦のみで奏される緩徐楽章。
第3楽章:メヌエット、ニ長調、3/4拍子。
第4楽章:プレスト、ニ長調、3/4拍子。

楽器編成は、本来は Ob(2),Hrn(2),Tp(2)に弦五部 となっていますが、実際は9-8-6-5-3の弦楽のうち、チェロにFg(1)が加わり、低域の増強と弾むようなリズムのキレを高める効果を狙ったようです。その効果はたしかに現れており、純度の高い響きに快活なリズムが快いものです。

飯森+山響の演奏は、ノン・ヴィヴラートの古楽奏法やHrn,Tp等、オリジナル楽器を積極的に取り入れるなど現代の潮流に沿いながら、あまり攻撃的に速すぎないテンポで、優雅に丁寧に、活力を持って表現しています。定期演奏会で取り上げ練りあげた音楽を、音響の良い山形テルサホールで録音するという丁寧な作業で作られた全集だけに、全体が高い水準を保つものになっていると感じますが、この祝典的で明るい気分を持つ第30番などを聴くと、ほんとに好ましいものです。

実際の演奏会で初めて接した曲を、同じ演奏会の録音で何度も繰り返して聴くという経験は、実に良いものです。親しみを持って、おなじみの曲のレパートリーに加えることができます。

参考までに、演奏データを記します。
■飯森範親指揮、山形交響楽団、(EXTON:OVCL-00630-9)
I=8'44" II=6'01" III=4'26" IV=4'58" total=24'09"

(*1):山響モーツァルト定期Vol21でピアノ協奏曲第9番と交響曲第30番他を聴く〜「電網郊外散歩道」2014年2月
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