goo blog サービス終了のお知らせ 

電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』を読む

2018年06月21日 06時03分00秒 | 読書
新潮文庫で、伊坂幸太郎著『ゴールデンスランバー』を読みました。元宅配マンで、数年前にアイドルが暴漢に襲われているところを助けたことで一躍有名になった主人公・青柳雅春は、現在はバツイチで失業中。学生時代の友人である森田森吾と会い、初の公選首相である金田貞義の暗殺で濡れ衣を着せられると告げられ、青柳は逃げることができましたが、森田自身は爆殺されてしまいます。

そこから始まる逃亡のドラマは、仙台市内に張り巡らされたセキュリティ・ポッドのために、携帯電話を使うたびに居所を突き止められ、間一髪で逃れるという繰り返しで、主人公の学習能力が低いのではないかとはらはらします。はたしてこの結末はどうなってしまうのかと思わず夢中になってしまう作品。2008年の本屋大賞受賞作で、映画化もされているようです。



「逃亡」のドラマとしては、吉村昭『逃亡』というのもありました(*1)が、なんといっても子供の頃に面白く観ていたテレビドラマ「逃亡者」の記憶が鮮やかです。

リチャード・キンブル。職業:医師。正しかるべき正義も、、時として盲(めし)いることがある。彼は、身に覚えのない妻殺しの罪で死刑を宣告され、護送の途中、列車事故に遭って辛くも脱走した。…(中略)…彼は逃げる。執拗なジェラード警部の追跡をかわしながら、現在を、今夜を、そして明日を生きるために。

この時代の逃亡のドラマは、まだ途中で医者として人助けをする余裕がありました。しかしながら、現代においては「逃亡」はもっとずっと難しくなっているようです。携帯電話や監視カメラが広汎に普及し、「似ている」「おかしい」という理由ですぐに通報されてしまいます。本作のように、仲間に助けてもらう話ならばともかく、とても昔のような人助けを重ねるヒューマン・ドラマにはなりえないようです。

(*1):吉村昭『逃亡』を読む~「電網郊外散歩道」2011年11月

コメント (4)