電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

青木やよひ著『ベートーヴェンの生涯』の人名索引からわかること

2010年06月28日 06時04分06秒 | クラシック音楽
平凡社新書の青木やよひ著『ベートーヴェンの生涯』は、たいへん興味深く充実した好著です(*)が、索引の充実も特徴的で、担当編集者の気合と誠意を感じます。その中で、人名索引を眺めているうちに、おもしろいことに気がつきました。様々な人物に対する言及の度合いには、著者である青木やよひさんの目を通してではありますが、L.V.ベートーヴェンとの関わりの度合いが反映されているのではないか、という仮説です。さっそく、数えてみました。

第1位 モーツァルト 31
第2位 ゲーテ 26
第3位 ハイドン 24
第4位 カール 19
第5位 シントラー 18
第6位 ナポレオン 17
 同 アントーニア・ブレンターノ 17
第8位 フェルディナンド・リース 16
第9位 シュパンツィヒ 13
 同 セイヤー 13
 同 シュテファン・フォン・ブロイニング 13
第12位 ヴェーゲラー 12
 同 ズメスカル 12
 同 ネーフェ 12
 同 ベッティーナ・フォン・ブレンターノ 12

という具合です。数字は、索引に掲げられた頻度を表し、同じページで2度登場しても1と数えられます。また、ゲーテの「167-171」のように、複数ページにまたがって頻出する場合は、167,168,169,170,171と5ページ分に数えました。

なるほど。モーツァルト、ゲーテ、ハイドン、甥のカール、ナポレオン、アントーニア・ブレンターノなどの顔ぶれは納得できます。シントラーの第5位というのは、多分に著者が何度も指摘するマイナス評価の言及のせいであり、位置づけとしてはセイヤーやヴェーゲラー、ズメスカルらと同等とみなしても良いのでは。そうすると、

(1) 音楽的な紐帯の点で・・・モーツァルト、ハイドン
(2) 同時代の文化・思想の面で・・・ゲーテ
(3) 社会の時代背景を説明・・・・ナポレオン
(4) 肉親や恋愛面から・・・カール、アントーニア
(5) 友人知人、協力者など・・・その他

などが関わりの深い人々ということになります。

現代の目から見ると、J.S.バッハがないという点が奇妙といえば奇妙ですが、ベートーヴェンとバッハが同時代ではないことにくわえて、メンデルスゾーンやシューマン、ブラームスといったロマン派の作曲家たちによるバッハ復興運動の功績が大なのかもしれません。

(*):青木やよひ『ベートーヴェンの生涯』を読む~「電網郊外散歩道」2010年1月
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