電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

佐伯泰英『梅雨ノ蝶~居眠り磐音江戸双紙19』を読む

2009年04月15日 05時43分19秒 | -佐伯泰英
当方が読み進む速度と作者が新刊を発表する速度がつりあい、一進一退の双葉文庫『居眠り磐音江戸双紙』シリーズ第19巻、佐伯泰英著『梅雨ノ蝶』を読みました。

第1章「番頭殺し」。神田三崎町佐々木玲圓道場の改築は、いよいよ完成に近付き、こけら落としの剣術大会の準備が進められます。その間にも、佐渡金山から悪人どもが抜け出したとか、火事騒ぎに殺人事件と、色々と大変です。
第2章「不覚なり、磐音」。佐々木道場の師範である本多鐘四郎が、依田お市と祝言をあげ、依田家に婿入りすることになっておりますので、佐々木先生は磐音に養子になってくれと頼みます。豊後関前藩へ戻る気はなし、さりとて用心棒稼業の長屋ぐらしでは、おこんと所帯を持ってやっていけるのか。思い悩む磐音は、刺客につい不覚を取り、負傷してしまいます。中川淳庵が適切に処置したので大丈夫とは言うものの、おこんさんは気が気ではなく、寝ずの看病です。発熱による昏睡状態から脱した後の磐音とおこんの会話は、ひたむきな愛情が感じられて、よい場面ですね~。
第3章「怪我見舞い」。今津屋吉右衛門の前で、金兵衛に佐々木玲圓の養子になる話をしたら、金兵衛さん、

「吉右衛門様、おこんは町娘ですよ。お武家のお嫁にはなれませんよ」

と悲鳴を上げます。そりゃそうでしょう、その気持ち、よくわかります。しかし今津屋さんは、おこんをどこか武家方に養女に出し、佐々木家の養子になった磐音と祝言を挙げればよいと知恵を出します。な~るほど!
しかし見舞客の顔ぶれは多彩ですなぁ。それなのに、早々に試合をするなど、トンでもありませんぞ、磐音クン!
第4章「千面のおさい」。佐々木道場の剣術大会の準備が着々と進む中で、盗賊・庚申の仲蔵一味が、千面のおさいという女を使って竹村武左衛門に接触を図ります。さらに、今津屋のお佐紀は懐妊の様子、当座のクライマックスに向けて、粛々と物語は進みます。
第5章「41人目の剣客」。全編、これ佐々木道場の剣術大試合の経緯かと思ったら、違いました。最後に二つほど、庚申の仲蔵一味のエピソードと、磐音に不覚を取らせた男との結着が残っておりました。

なるほど、幕府と縁の深い佐々木家の養子となれば、磐音は将軍家、特に世子家基にぐんと近付くわけですね。そうなれば、反家基派の某田沼父子との確執の真っ只中に飛びこむことになり。一介の浪人に過ぎない男をなぜむきになって倒そうとするのか、という、対立の背景と言うか、必然性が大きくクローズアップされてくることになるわけです。な~るほど。
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