電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

藤沢周平『神隠し』を読む

2009年04月07日 06時13分05秒 | -藤沢周平
新潮文庫で、藤沢周平著『神隠し』を読みました。昭和54年に刊行された短編集を文庫化したもので、時期としては直木賞受賞後に発表されたもののようです。ごく短いものが多く集められており、後年のものよりも、未発表初期作品集に収録されたものとの親近性が強いと感じられます。
「拐し」から表題作「神隠し」まで、11の短篇からなり、読んで心楽しいというよりは、リアルで切なく苦い味のものが中心です。
とりわけ印象的なのは、「疫病神」「鬼」「桃の木の下で」「小鶴」などで、とくにサスペンスふうの「桃の木の下で」は、意外性のある謎解きと解決が、珍しく少し甘さのあるロマンティックなハッピーエンドの形を取っているのが注目されます。
コメント