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電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

プレシャス・カルテット山形公演を聴く(1)

2013年07月26日 20時55分04秒 | -室内楽
7月25日(木):平日の夕方の演奏会は、幸いにお天気もまずまずで、気温は26度くらいでしょうか。文翔館議場ホールの会場は、いつもの縦型配置ではなくて、ステージを中央北側に取り、座席が左右(東西)に広がったスタイルです。お客様の顔ぶれも、山形弦楽四重奏団の時とは少々異なっており、小さいお子ちゃまたちの姿も見られました。これはプログラムのせいもあるのでしょうか。マニアック路線というよりも、少しだけお楽しみ方向にもシフトしつつ、音楽上の課題に取り組む演奏会を目指しているのでしょう。



プログラムは、A5判の一枚もので、表面には演奏曲目、裏面にはメンバーのプロフィール等が書かれています。いわゆるプログラムノートのような曲目解説はありません。
メンバーは、第1ヴァイオリンが加藤えりなさん、第2ヴァイオリンは古川仁菜さん、ヴィオラが岡さおりさん、チェロが山響首席の小川和久さんです。
曲目は、

モーツァルト アイネ・クライネ・ナハトムジークより第1楽章
F.ブリッジ 「横町のサリー」「熟したさくらんぼ」
木島由美子編曲「やまがたのうたラプソディ」「映画音楽メドレー」
ガーシュイン 「ポーギーとベス」より「サマータイム」
ヴィヴァルディ「四季」より「夏」
メンデルスゾーン 弦楽四重奏曲第2番 イ短調 Op.13

というものです。当初は、メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲は第2番ではなく第1番が予定されていましたが、同じ山響メンバーからなる山形弦楽四重奏団の、わずか10日前に行われた第48回定期演奏会で同じ第1番を取り上げたばかり。そのため、第2番に変更することにしたらしいです。

最初はモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」です。安定感のある演奏に、一気に引き込まれます。続いて、F.ブリッジの「横町のサリー」「熟したさくらんぼ」の二曲。フランク・ブリッジという作曲家(*1)の名前は初めて知りました。この曲は、後で調べてみたら1916年の作品のようですが、聴いていては大戦間期の英国の濃厚な香りがしました。アル・カポネと同時代のイギリスです。

続いて木島由美子さんの編曲で、「やまがたのうたラプソディ」。「千歳山かァ~らなァ~、紅花の種播いたヨ~」が「ヨォ~イサノマカァ~ショ~、エ~ンヤコラマァ~カセ~」に代わり、Vc-Vla-2ndVn-1stVn と移って四声で。曲想がガラリと変わり、「ヤッショーマカショでシャンシャンシャン!」から「めでためで~たァ~の~ォ、若~松さ~ま~よ~ォ」へ元気良く。これは楽しい。
同じく木島由美子さんの編曲で、映画音楽メドレーです。レーザーディスクで何度も繰り返し楽しんだ「マイフェアレディ」より「踊り明かそう」。1st-Vnの加藤さんが少しだけジャズ・ヴァイオリン風味を取り入れて。ところが次の曲とその次の曲の名前が出てこない。メロディはそらで歌えるのに題名が出てこないのは、なんとも歯がゆい。うにさ~ん(*2)、この曲の題名、な~に?
次のは「寅さん」ですね~。これは意外にも弦楽四重奏に似合うのですね!驚きです。最後は、ダッダララッタ~タ ダッダララッタ~タ チャラ~ラララ~ン。「007」のテーマ!
いや~、中高年にはなんとも口惜し楽しいひとときでした(^o^)/

そしてガーシュインの歌劇「ポーギーとベス」から「サマータイム」。もともとは気だるく物憂げな気分の曲ですが、赤に黒の花模様や藤色やピンクのドレスがお似合いの三人のレディが発する雰囲気は健全で、黒ずくめの小川さんも紳士的でしたので、米国南部というよりは東部ボストンあたりの雰囲気の上品な「サマータイム」でした。でも、崩れた退廃的ムードよりも、こういう雰囲気のほうが実は好きだったりして(^o^)/

びっくりしたのが前半最後のプログラム、ヴィヴァルディ「四季」の3曲目、「夏」の第3楽章。これはもう、1st-Vnの加藤さんがまなじりを決して挑む激速テンポで、四人の気迫が伝わるすごい演奏。思い切りのよさと技巧とが見事なプレスト楽章となって、圧倒的でした。

以上で、前半のプログラムを終わります。続きはまた明日。

(*1):フランク・ブリッジ
(*2):うにの五線ノートから…~作曲家・木島由美子さんの楽しいブログ

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山形弦楽四重奏団第48回定期演奏会でハイドン、清瀬保二、メンデルスゾーンを聴く

2013年07月16日 21時12分27秒 | -室内楽
三連休の最終日、雨の晴れ間をみて梅を収穫・出荷し、スモモの大石早生を収穫しました。その後、少しばかり休養して、夕方から文翔館議場ホールへ。本日は山形弦楽四重奏団の第48回定期演奏会で、ハイドン、清瀬保二、メンデルスゾーンを取り上げた、次のようなプログラムです。

(1) ハイドン:弦楽四重奏曲 変ロ長調 Op.55-3
(2) 清瀬保二:弦楽四重奏曲 変ロ調 (1951)
(3) メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲第1番 変ホ長調 Op.12

18時ぎりぎりに会場に到着すると、ちょうどプレコンサートが始まるところでした。オーボエの斎藤真美さんとヴィオラの田中知子さんが、「オーボエとヴィオラのためのアダージョと10のヴァリエーション」を演奏しました。オーボエの音色は、高音域はもちろんですが、ヴィオラと一緒に響く中低音が意外に魅力的なのですね。作曲家の名前も話したのですが、ぼんやりしていたため、残念ながら聞き取れませんでした。たしか、ジョージ・ナントカいう人だったと思います(^o^)/

開演前に、今回の担当である中島光之さんがプレトークをします。例によってカンニングペーパーなしの見事なトークで、今回の三人の作曲家が、それぞれ56歳、51歳、20歳のときの作品であることから始まり、宮仕えを終えて自由な身になるころのハイドンの音楽の伸びやかさや、貴族院議員の父親を持つという境遇にあって、ベートーヴェンの室内楽作品に接して音楽を志した清瀬保二の人間性、あるいは恵まれた境遇で最高の教育を受けた若いメンデルスゾーンのことなど、作曲に至る境遇なども説明します。今回のパンフレットに収められたプログラム・ノートも中島さんで、作品に関する情報を簡潔に網羅しながら、作曲家・演奏家・聴衆という関係を印象深くまとめています。このあたりは、作曲家であったお母さんが亡くなられた際に作品を整理するという役割を果たした、その時の経験がにじみ出ているのではと感じます。

例によって、ステージ左から、第1ヴァイオリンの中島光之さん。ダークグレーのシャツに、黒っぽい地に白いプリントのネクタイ姿で、ご挨拶の役割があったためかと思われます。その右隣が第2ヴァイオリンの今井東子さん。エメラルドグリーンのドレスがとてもよくお似合いです。その右が、首回りと手首に白いラインが入ったシャツ姿の、チェロの茂木明人さん。左端が、いつも通り黒ずくめのヴィオラの倉田譲さん、というメンバーです。

さて、第1曲目:ハイドンの弦楽四重奏曲 変ロ長調 Op.55-3 です。Wikipedia では第62番とされているだけで、残念ながらまだ解説のページは作られていません。
第1楽章:ヴィヴァーチェ・アッサイ。ハイドンらしい、緊密なアンサンブルです。第2楽章:アダージョ・マ・ノン・トロッポ。思わず聴き惚れてしまいます。2nd-Vnで静かに終わります。第3楽章:メヌエット、第4楽章:フィナーレ、プレスト。1st-Vn の役割は大きなものですが、曲中で VcとVla に 2nd-Vn が加わり、フーガみたいになるところなど、いかにもハイドンらしくていいですね~。

この時期のハイドンは、四人のアンサンブルがとても緊密で、1st-Vn だけに負担がかかる古いスタイルではなくなりつつあるように感じます。チェロの役割などは、もう少し活躍してもよいように思いますが、そこは Beethoven の登場を待つことになるのでしょう。

第2曲目は、清瀬保二の弦楽四重奏曲 変ロ調、1951年の作曲だそうです。
第1楽章:アレグロ。非常に訴える力のある音楽と感じます。曲想は明るくはなく、喩えは変ですが、風の又三郎が烈風の前に立っているような孤高感を感じます。第2楽章:アンダンテ。1st-Vn の奏でる旋律は、どこか民謡的な要素もあり、懐かしさを覚えます。とりわけ、チェロに移った旋律や、祭りのエネルギーのような推進力を感じさせる部分などは、感傷的な緩徐楽章ではありません。最初の主題を繰り返して静かに終わります。第3楽章:アレグロ・モルト~ヴィヴァーチッシモ。情熱的、エネルギッシュな楽章ですが、悲劇性も感じます。思いきったような、印象的な終わり方です。まったく初めての曲ですが、共感するところが多くありました。

ここで、15分の休憩です。皆さん、それぞれに立って休憩して来られたようです。



後半は、メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第1番です。Wikipedia には、残念ながらこの曲も解説がありません。
第1楽章:アダージョ・ノン・トロッポ~アレグロ・ノン・タルダンテ。静かで確かな始まり。第2楽章:カンツォネッタ・アレグレット。なるほど、カンツォネッタです。第3楽章:アンダンテ・エスプレッシーヴォ。「夜の室内楽」の番組テーマ音楽候補になりそうな美しい緩徐楽章。第4楽章:モルト・アレグロ・エ・ヴィヴァーチェ。ダイナミックで情熱的。中間部の 2nd-Vn がいい味。ヴィオラとチェロがロマンティックな響きを聞かせます。そして、合唱が注目を集める「マタイ受難曲」の器楽パートで、言葉のないヴァイオリンが切々と心に訴えかけるように、1st-Vn が存在感を示します。

アンコールは、同じくメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第2番の第3楽章から。
残念ながら、演奏会レポートはここで力尽きました。眠くて眠くて(^o^;)>poripori
でも、10月19日(土)の第49回定期演奏会のチケットは、しっかりと購入してきました。
(^o^)/
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モーツァルト「弦楽五重奏曲第4番ト短調」を聴く

2013年06月30日 06時38分59秒 | -室内楽
通勤の音楽に、再びモーツァルトの弦楽五重奏曲を聴いておりました。今回は、第4番ト短調、K.516です。自宅でゆっくりと耳を傾けると、あらためて「なんてすてきな音楽なのだろう」と感嘆します。

この曲は、第3番ハ長調と並行して作曲され、完成したのは約一ヶ月後の1787年5月16日だそうです。モーツァルトは31歳。歌劇「フィガロの結婚」を初演しプラハでの大ヒットを経て、父親レオポルトの死と歌劇「ドン・ジョヴァンニ」の作曲の時期です。交響曲の第40番と41番の関係と同様に、第3番ハ長調とは対照的な「モーツァルトのト短調」の曲。

第1楽章:アレグロ、ト短調、4分の4拍子。第1主題の不安と憂いと焦燥感などの表情が、実に印象的な始まりです。暗い夜に、シャーロック・ホームズとワトスンが馬車に揺られて急行するようなドラマの一場面に、BGMとしてピッタンコの曲想かも。
第2楽章:メヌエット、アレグレット、ト短調、4分の3拍子。メヌエットと緩徐楽章の配列順序に「おや?」と思いますが、曲想からみて、やっぱり第1楽章とこの第2楽章を続けたほうが良いのかもしれません。ト短調・急~ト短調・緩~変ホ長調~ト短調です。
第3楽章:アダージョ・マ・ノン・トロッポ、変ホ長調、4分の4拍子。五人とも弱音器をつけているのでしょうか、優しい緩徐楽章です。途中のひそやかな転調も、実に効果的。好きですねえ、こういう音楽。
第4楽章:アダージョ~アレグロ。ト短調、4分の3拍子の長い序奏のあと、ト長調、8分の6拍子のロンドへ。曲中、テンポを変え、音域を変え、中心となる主題がずっと鳴っているように感じます。

大胆な転調、細やかで鋭いリズム。主題は心にするりと入ってくるような印象的なもので、悲哀を感じさせます。多感な若い時代ならば、思わず背後に何か深刻なドラマを想像してしまいますが、悲哀の深刻さだけを誇張すると、モーツァルトの音楽が別なものに変わってしまいます。明と暗、喜びと悲哀が入り混じった色調で、バランスを取って奏でられるのがモーツァルトの音楽だろうと思いますが、この曲はバランスが悲哀の方に大きく振れた曲なのでしょう。

演奏は、スメタナ四重奏団にヨセフ・スークがヴィオラ奏者として加わっています。全曲の録音の中では、第3番とともに一番最初に録音されており、1976年の6月に、プラハのスプラフォン・スタジオで収録されたPCM/デジタル録音です。DENON のデジタル録音の中でも、比較的早い方に属し、スプラフォン社との共同制作になっています。制作担当はエドゥアルト・ヘルツォーク、録音担当はスタニスラフ・シーコラとクレジットされており、この頃はまだヨーロッパ録音もよちよち歩きの時期だったのかもしれません。LP:OZ-7065、CD:COCO-70430 です。

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久良木夏海ファーストチェロリサイタルを聴く

2013年05月06日 15時13分44秒 | -室内楽
ゴールデンウィークの日曜日、山形市の文翔館議場ホールにて、山形交響楽団新入団員のチェリスト久良木夏海(くらき・なつみ)さんのファースト・チェロ・リサイタルに出かけました。良いお天気に恵まれ、ようやく温暖な陽気となりましたので、会場はほぼいっぱいになっておりました。

開演前に、ごく暗い藍色というのか、青みがかった黒色のドレスの久良木さんが、楽器のことや曲目のこと、本日の出演者などを紹介します。チェロの場合、開放弦の最低音はハ音(C)で始まります。ハ長調は、楽器が良く鳴り、はつらつとした前進する音楽になる、とのこと。本日の曲目については、ボッケリーニのチェロ・ソナタは、当初、ピアノ伴奏を考えていたのだそうです。たまたま山響首席客演指揮者の鈴木秀美さんにボッケリーニの話をしたら、この曲はもともとチェロと通奏低音のための曲なんだよ、と丁寧に教えてもらって、しかも信頼できる筆写譜を送ってもらって、これはチェロ二丁で演奏するしかない、と決意し、山響の先輩の渡邊研多郎さんとの共演になった、とのことでした。なるほど!ベートーヴェンは愛といっても家族愛のような少し大きな愛を想定したこと、プロコフィエフについては、「人間ーそれは誇らかに響く」という表題を考えていたことなどを、少しはにかみながら話をしました。

本日の出演者について、ピアノの大伏啓太さんは、出身は福島市だそうで、高校と大学の一つ上の先輩なのだそうです。とくにベートーヴェンとプロコフィエフは、チェロから始まり、ずいぶん緊張するのだそうで、サポートするピアノの役割は大きなものがあるのだとのこと。渡邊研多郎さんは、このたびオールド・チェロを購入したそうで、倍音がきれいに響くとのこと。ついでに渡邊さんが参加するピアノ三重奏「トリフォーリオ(Trifoglio)」の宣伝(*1)もかねて話をしました。

さて、演奏が始まります。
最初の曲目、ボッケリーニのチェロソナタ第2番G.6ハ長調では、久良木さんが向かって左に、渡邊研多郎さんが右に座ります。第1楽章:アレグロ。通奏低音はチェンバロやピアノとは限らない。練習できる期間はごく短かったのでしょうが、二本のチェロで演奏されるボッケリーニの音楽は、なかなかいいものですね!第2楽章:ラルゴ。ゆったりと歌われるチェロの音色を堪能しました。第3楽章:アレグロ・モデラート。高音の速いパッセージで、通奏低音との対比がとてもチャーミングです。かと思うと中低音を存分に鳴らして、喩えは変ですが、波のうねりが寄せてはかえすようにcresc~decrescし、音楽を盛り上げます。

二曲めは、ベートーヴェンのチェロソナタ第4番、Op.102-1、ハ長調です。大伏さんがピアノに向かい、譜めくりの女性がわき後方に位置します。ピアノの前、ステージ中央に久良木さんが座り、演奏が始まります。
第1楽章:アンダンテ~アレグロ・ヴィヴァーチェ。チェロがゆったりと演奏を開始すると、ピアノが静かにこれを受け、アンダンテの序奏部がゆったりと提示されます。やがてアレグロで決然とベートーヴェンらしい主部の音楽が始まります。久良木さんと大伏さんの演奏は、自信を感じさせる安定したものです。
第2楽章:アダージョ~テンポ・ダンダンテ~アレグロ・ヴィヴァーチェ。チェロの低音の魅力を存分に聴かせるときには、ピアノが分散和音で寄り添います。チェロとピアノとが、交互に前に出たり控えめになったり、確かにベートーヴェンではピアノの役割が格段に重要性を増しているようです。それと、ベートーヴェンは力強いフォルテを効果的に聴かせるため、ピアノの(弱い)部分がとても魅力的で、うまいと感じます。

三曲目は、ヒンデミットの無伴奏チェロソナタ、Op.25-3 です。たぶん、初めて聴く曲です。Wikipedia によれば、1923年の作品らしい。第一次世界大戦が終わって、関東大震災やヒトラーのミュンヘン一揆が起こるなど、不安定な大戦間期の時代でしょう。
(1) Lebhaft, sehr markiert, mit festen Bogenstrichen はやいテンポで奏される無調的な曲です。
(2) Massig schnell, Gemachlich Durchweg sehr leise ときどき裏声のような表現をまじえながら、どちらかといえば静かな曲です。
(3) Langsam 不思議な緊張感のある響きです。
(4) Lebhaft
(5) Massig schnell, sehr scharf markierte Viertel
最後のあたりは、今どこの部分なのか、まったく見失っておりました(^o^;)>poripori
細かく動く速い曲が、一転して力強い表現に戻り、最後はボン!とピツィカートで終わります。

15分の休憩のあと、プログラムの最後はプロコフィエフのチェロソナタOp.119ハ長調です。今回はこれが目当てでやってきたと言っても過言ではない、本日期待の曲目(*2)です。
第1楽章:アンダンテ・グラーヴェ。チェロの出だしは、深い音色、いい音です。ピアノも遠くでこだまするように。ギターのように弦を指でかき鳴らすようなところもあり、中音域で伸びやかな旋律が始まると、ああ、晩年のプロコフィエフらしい叙情性が感じられます。もちろん、その背後には極度の緊張感があるとしても、ピアノが奏でる旋律には幻想的なものがあり、それを低音域で受け止めるチェロは、大人の風格と言うか、まことに大きな存在で、曲の終わりは澄んでいます。これは、実に充実した名曲だと思います。
第2楽章:モデラート。ピアノが童話的なメロディーを奏でると、チェロがピツィカートでこれに答えます。リズミカルで、実に楽しい。曲想が朗々としたものに変わると、チェロの魅力がいっぱいに展開されます。そして、再び童話的でリズミカルなところが再現されて、終わります。
第3楽章:アレグロ・マ・ノン・トロッポ。テンポは若々しくイキの良さを感じさせるもので、ピアノもここぞとばかり主張します。達者なピアニストだったプロコフィエフらしいものですが、チェロの魅力も存分に伝えます。気宇の大きな深い呼吸の旋律は、無類の美しさを感じます。
全体に、力強さ、情熱、技巧、エネルギーなどを感じさせてくれる演奏で、本当にこの曲を堪能しました。

そして、アンコールは「鳥の歌」。これも良かった~。



ところで、晩年のプロコフィエフは、密告と粛清と流刑のスターリン体制下で、若い時代の破壊的なモダニズムからは遠ざかり、平明で童話的で幻想的な要素が多くなりますが、これを圧制への妥協や後退と見るのはいかがなものかと思っています。残酷な独裁者や阿諛追従する俗物たち、そして恐怖政治に幻滅し絶望したからこそ、未来を作る若者や子どもに希望を託そうとした結果なのではないか、というのが私の想像です。病床で書かれたにもかかわらず、若い演奏家たちのフレッシュな演奏から感じられるこの曲の持つ力強さや、「人間ーそれは誇らかに響く」という言葉は、そうした想像を許す面があると感じます。

(*1):山形交響楽団コンサート情報:団員による演奏会
(*2):プロコフィエフ「チェロソナタ」の魅力~「電網郊外散歩道」2007年12月
(*3):鈴木秀美さん、久良木夏海さんも出演した、井上頼豊生誕100周年記念コンサートの「鳥の歌」~期間限定:2013年12月29日(カザルス誕生日)まで

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モーツァルト「弦楽五重奏曲第3番」を聴く

2013年05月05日 06時01分56秒 | -室内楽
このところ、通勤の車中でモーツァルトの弦楽五重奏曲をシリーズで聴いています。先週からずっと、ヨセフ・スーク(Vla)とスメタナ四重奏団によるCDで、第3番を聴いておりました。言わずと知れた、堂々たるハ長調K.515です。1787年の4月19日に完成されたとありますが、DENON の COCO-70430 または LP の OZ-7065 のA面です。

第1楽章:アレグロ、ハ長調。チェロが上昇する音型を奏でる中で、第1ヴァイオリンがこれを受けますが、すぐに役割を交代し、こんどはヴァイオリンが低い音から上昇する音型を奏する中で、チェロがヴァイオリンと同様の旋律を歌います。このあたり、繰り返される旋律と音色の対比が、とてもおもしろい。ハ長調の響きも、単純に明朗快活というだけでなく、適度な陰影を織り交ぜながら、充実した音楽を聴かせます。
第2楽章:アンダンテ、ヘ長調、4分の3拍子。ヴァイオリンとヴィオラの陰影豊かなかけあいが美しい。スークのヴィオラが独立して見事な音楽を聴かせます。一本多く加わったヴィオラを堪能できる楽章です。
第3楽章:メヌエット、アレグレット、ハ長調、4分の3拍子。ゆったりしたテンポで奏される主題は和声的で、メヌエットとは言いながらも舞曲の性格はごく薄く、のんびりとしたものです。
第4楽章:アレグロ、ハ長調、4分の2拍子。軽やかで晴朗なヴァイオリンの主題で始まりますが、五つの弦楽器がそれぞれの声部で複雑に絡み合い、多彩な響きを聴かせながら、リズミカルな運動性の楽しさも味わうことができます。対位法的な処理などの専門的なところは、素人音楽愛好家の手には余りますが、この楽章の充実ぶりは、モーツァルトが弦楽五重奏曲という分野で達成した代表的な成果と言うべきでしょう。



カーステレオで聴くのもいいけれど、連休でゆっくりした機会に自室のステレオ装置で聴くのもいいものです。心が安らぎます。もっとも、音量があまりにうるさすぎて猫たちには迷惑らしく、早々に退散していきました。まあ、アホ猫にモーツァルトというのも、文字通り「猫に小判」のようなものなのでせう(^o^)/

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久良木夏海ファーストチェロリサイタルのチケットを入手する

2013年05月03日 06時02分05秒 | -室内楽
山形交響楽団の定期演奏会では、パンフレットとともに、様々な演奏会のチラシがどさっと配られます。本当はぜんぶを聴きたいところですが、仕事があり野暮用があり、さらには週末農業の予定が入る現状では、スケジュールの合間をぬってチケットを入手する必要があります。四月には、インフルエンザや地域行事の関係から、シベールアリーナでの川上一道さんの演奏会や、文翔館での館野ヤンネさんのリサイタルなどを、泣く泣く諦めたものでした。

では美しい五月には?
まずは、ゴールデンウィークの5月5日(日)、18時より、文翔館議場ホールにて、久良木夏海ファーストチェロリサイタルのチケットを入手しました。(全席自由、2000円。当日は2500円とのこと。)久良木さんは山形交響楽団の新入団員で、このたび初のリサイタルを開催するらしい。そのプログラムが、「ハ長調のボヤージュ♪」と題された

ボッケリーニ チェロソナタ第2番G.6ハ長調
ベートーヴェン チェロソナタ第4番ハ長調Op.102-1
ヒンデミット 無伴奏チェロソナタOp.25-3
プロコフィエフ チェロソナタOp.119ハ長調

という意欲的なものです。ピアノが伏啓太さん、チェロに山響の渡邊研多郎さんも共演するようで、チェロ好き、室内楽好きには、これが聴かずにいられようか(いや、いられない:反語)というだけでなく、プロコフィエフのチェロソナタを山形でナマで聴くことができるという、実にまたとない機会です。

また、5月28日(火)には、19時から自由学園明日館講堂にて東京公演も予定されているようです。若い演奏家の意欲的な挑戦を後押ししたいものです。

【追記】
ピアノは「犬伏」啓太さんと書きましたが、間違い。大伏啓太さんでした。てっきり山響コンサートマスターの犬伏亜里さんのご親戚かと勘違いしておりました(^o^)/
たいへん失礼をいたしました。
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ファゴット&ストリングス「室内楽の夕べ」を聴く

2013年04月09日 06時05分33秒 | -室内楽
新年度に入って二週目、あわただしさは続きますが、合間をぬって演奏会を聴きました。ファゴット&ストリングス「室内楽の夕べ」と題する演奏会です。夕暮れの文翔館議場ホールでは、すでにかなりのお客様が入場しておりました。そして、いつものステージには八本の照明と円周状に衝立が置かれ、反響板の役割を果たすようです。

本日の曲目は、

(1) カール・シュターミッツ ファゴット四重奏曲第2番
(2) ジャン・バリエール デュオ・ソナタ
(3) フランツ・ダンツィ ファゴット四重奏曲第3番
   (休憩)
(4) フェリーチェ・ジャルディーニ 3 Duetti a Fagotto e Viola concerta
(5) フランツ・シューベルト 弦楽三重奏曲 D.471 B-dur
(6) フランソア・ドゥヴィエンヌ ファゴット四重奏曲 ト短調 Op.73 No.3

というものです。クラシック音楽を好んで聴くようになって、すでに半世紀近くなりますが、LPやCD等で耳にしたことのない、初めての曲ばかりです。その意味では、きわめてマニアックな選曲のプログラムです。これを聴かずにいられようか、いやいられない(反語)というわけでした。

ステージには、左からファゴット、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが座ります。ファゴットの高橋あけみさんとヴァイオリンの犬伏亜里さんは、いつもの黒い演奏会用衣装ではなくて、春らしい柔らかさを持つスタイルで、ヴィオラの成田寛さんはえんじ色のシャツと、いくぶんカジュアルさを意識したようです。ところが、チェロの小川和久さんは、すごい!男子中学生か高校生の運動会応援団用学ランかと見紛うほどに、背中に赤い刺繍を背負った黒い上着です!思わずのけぞりました(^o^)/

でも、演奏が始まれば、そんな雑念はすっ飛びます。
第1曲、カール・シュターミッツの「ファゴット、ヴァイオリン、ヴィオラとチェロのための二つの四重奏曲・第2番」です。第1楽章:アレグロ。ヴィオラの音色が魅力的なものであることを、あらためて再確認しました。第2楽章:ロマンツェ。ファゴットから始まります。いつもは裏でリズムを刻む役割が多いファゴットが、美しい音色と旋律を聞かせます。第3楽章:プレスト。オープニングの曲にふさわしい、軽やかな音楽です。

第2曲は、ファゴットとチェロでジャン・バリエールの「デュオ・ソナタ」です。左にファゴット、右にチェロという配置です。第1楽章、アンダンテ。もともとは2本のチェロのために書かれたソナタだそうですが、木管楽器のファゴットと擦弦楽器のチェロという低音楽器どうしの音色の対比も面白い。第2楽章:アダージョ。よく歌い、訴える力もある緩徐楽章です。短いけれど、すてきな音楽です。第3楽章:プレスト。一転して速い音楽に変わります。

第3曲、フランツ・ダンツィの「ファゴット、ヴァイオリン、ヴィオラとチェロのための三つの四重奏曲・第3番」です。楽器の配置はシュターミッツと同じ。第1楽章ではファゴットとチェロという低音楽器どうしのかけあいもあって、チェリスト作曲家らしさを感じさせます。ヴァイオリンとヴィオラが軽快な動きを見せる楽章です。第2楽章、ラルゲット・ノン・トロッポ。ファゴットが旋律を奏で、弦が三拍子のリズムを刻む始まりです。ヴァイオリンとファゴットが、美しい短調の旋律をかけあいで奏するところもステキです。第3楽章、メヌエット、アレグレット。3拍子の舞曲にあわせて踊る中で道化が口上を述べる、そんな役回りをファゴットが演じます。けっこう雄弁に口上を述べているようです。第4楽章:アレグレット。四人の奏者がそれぞれに独立した動きを見せながら、しかも緊密なアンサンブルを聴かせます。

ここで、15分の休憩。余談ですが、休憩の終わりのチャイムは、マイクで拾った時計の音ではなかろうか?実は秒針の音が聞こえていましたので。



4人目の作曲家は、フェリーチェ・ジャルディーニです。曲は「3 Duetti a Fagotto e Viola concerta」とありますが、なんと訳せば良いのやら。ファゴットとヴィオラの協奏的な三つの二重奏曲?はて?
しかし、ヴィオラとファゴットの二重奏曲なんて、実際に聴くことができる機会はそうそうあるものではありません。ステージにはヴィオラの成田寛さんが左側に、ファゴットの高橋あけみさんが右側に立ち、二人の立奏です。高橋さんは、楽器を支えるストラップをたすき掛けにかけて、まるで今から「八重の桜」に出演するような風情です。第1楽章:アンダンテ。ヴィオラとファゴットの音色が、実にしっくり合う。元々は二本のヴァイオリン、あるいはヴァイオリンとチェロのための曲か、と解説にはありますが、元々がこの編成であったかのように、双方の楽器の特徴を発揮して、実に魅力的です。第2楽章:アダージョ。くつろいだファゴットの音色、重音でヴィオラが寄り添います。このあたりの呼吸も、いいなあ。第3楽章:テンポ・ディ・メヌエット・グラツィオーソ。「メヌエットのテンポで、優美に」くらいの意味でしょうか。ファゴットという楽器は、相手をうまく引き立ててしまうと感じます。ヴィオラという地味な音色の楽器も、うまく魅力を引き立ててしまいます。自分の個性をよく心得たしっかり者の役どころといったところでしょうか。

5人目は、フランツ・シューベルトの「弦楽三重奏曲 D.471」です。高橋あけみさんはお休みで、弦の三人の演奏。1楽章のみの短い曲で、若いシューベルトらしい、途中の転調も印象的な、親しみ深い音楽です。でも、とてもマニアックな選曲には違いありません。

最後は、フランソア・ドゥヴィエンヌの「ファゴット、ヴァイオリン、ヴィオラとチェロのための四重奏曲、ト短調 Op.73 No.3」です。再び高橋さんが加わり、本日のフルメンバーで。第1楽章:アレグロ・コン・エスプレッシオーネ。ファゴットを中心とする四重奏曲です。ヴァイオリンもヴィオラもチェロも緊密なアンサンブルを聴かせますが、何といってもファゴットがエスプレッシオーネに活躍します。こんないい曲があったんだ~!第2楽章:ファゴット、ヴァイオリン、そしてヴィオラが主題を歌い、チェロがピツィカート。弦楽がこれを引き継ぎ、哀傷の情感を歌います。背景にファゴットが静かに音を添えます。やがて再びファゴットが戻ってきて、この楽章を閉じます。第3楽章:ロンド、アレグレット・ポコ・モデラート。短調のロンドです。ヴァイオリンもしっかり見せ場を作り、ファゴットと弦トリオや、ファゴットとヴァイオリンなど、多彩な組み合わせで聴かせどころを用意しています。なかなか充実した音楽でした。

来場したお客様の人数は、決して「非常に多い」とは言えませんが、よく考えれば、こんなマニアックな選曲でも、山形の聴衆はしっかりと聴いてくれました。これは、驚くべきことではないでしょうか。高橋あけみさんが最後に挨拶したときの「アタシが欲張りなものだから、盛り込みすぎてこんな時間になってしまいました。アンコールはできません、スミマセン」の言葉に、聴衆は笑いの中で拍手をしていました。一生懸命な演奏家を聴衆があたたかく受け止める幸せな演奏会を象徴するような情景でした。う~ん、いい演奏会を聴きました!

【追記】
チェロを「撥」弦楽器と書いてしまっていましたので、擦弦楽器に訂正しました。ギターは指で撥(はじ)いて音を出しますが、チェロは弓で擦って音を出します。ある日のアクセス記録を調べていたら、この記事にずいぶんアクセスがあり、文中の間違いに気づきました(^o^;)>poripori

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モーツァルト「弦楽五重奏曲第2番」を聴く

2013年04月08日 06時05分49秒 | -室内楽
この春、通勤経路は大きく変わり、時間帯によっては大渋滞が予想されるルートを通過しなければなりません。そこで、長距離通勤だった従来と変わらない時刻に出発しております。この時間帯ならば、比較的スムーズに通過でき、通勤の音楽も心安らかに聴くことができます。先週は、ヨセフ・スークがヴィオラで加わるスメタナ四重奏団の演奏で、モーツァルトの弦楽五重奏曲第2番ハ短調K.406(516B) を聴いておりました。

Wikipedia によれば、この曲は、1782年に作曲された管楽セレナードK.388(384b)を、5年後の1787年に弦楽五重奏曲に編曲した作品なのだそうです。基となった管楽セレナードは、歌劇「後宮からの誘拐」との縁が深い作品のようで、2本ずつの Ob,Cl,Fg,Hrn という編成で、実質は五声の、暗く深刻で緊迫した曲風であったとされています。作曲時の年齢は26歳、編曲した時期の年齢は31歳、父レオポルトが死去し、歌劇「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」などを作曲し、オペラ作曲家として活躍していた時代です。

第1楽章:アレグロ・ディ・モルト、ハ短調。暗く重苦しい主題で始まります。まるで悲劇の幕開けか、あるいは囚われの淑女が運命を嘆くアリアを歌う場面を想像してしまうような雰囲気です。チェロの活躍も顕著で、LP添付のリーフレットで、大木正興氏は、「プロイセン王のチェロの演奏の喜びを考慮にいれている」と考えています。そして、CDに添付のリーフレットでは、結城亨氏が「暗く激しいドラマ」と表現していますが、まさにそんな雰囲気です。
第2楽章:アンダンテ、変ホ短調。曲調は一転して優しい叙情的なものになります。木管アンサンブルによく似合いそうな音楽です。
第3楽章:メヌエット・イン・カノーネ、ハ短調。「カノン風のメヌエット」という意味でしょうか。カノン風に追いかけながら繰り返される音楽は緊張感のあるもので、カーステレオでこの楽章だけをリピートしていると、ふしぎなぐるぐる感にとらわれそうです。トリオ部は、明るいハ長調に変わります。
第4楽章:アレグロ、ハ短調。暗い主題と八つの変奏、コーダという構成を取り、ヴァイオリンとヴィオラが互いにリードを交替しあうような形で曲が進み、ハ長調のコーダで明るく結ばれます。

この曲が弦楽五重奏に編曲された理由として、第3番・第4番と一緒に出版するためではないかとされている記述もあり、「後宮からの誘拐」で割愛した音楽を流用し、ドラマティックで充実した弦楽五重奏曲に生まれ変わらせたのかもしれません。

CDはクレスト1000シリーズ中の1枚で DENON COCO-70514、LPのほうは OZ-7064B という型番のものです。1981年の6月に、プラハの芸術家の家でデジタル録音されており、制作はエドゥアルト・ヘルツォークとクレジットされています。チェコのスプラフォン社との共同制作になる録音です。

参考までに、演奏データを示します。
■スーク(Vla)、スメタナ四重奏団
I=9'16" II=4'29" III=4'47" IV=6'07" total=24'39"

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ファゴット&ストリングス「室内楽の夕べ」のチケットを入手する

2013年04月07日 06時00分20秒 | -室内楽
4月8日の月曜日、夜19:00から、山形市の文翔館議場ホールにて、山形交響楽団メンバーによる室内楽コンサートが開かれます。山響定期でチラシをもらって以来、楽しみにしてきましたが、問題なのはチケットの入手でした。

これまでは、多忙と長距離通勤とのダブルパンチで、魅力的な演奏会でもチケットの入手が難しい状況でしたが、この春からは県都に通勤となり、このへんの状況は大きく変化しました。土曜の昼、仕事帰りに富岡楽器に立ち寄り、チケットを入手することができました。前売券は、一般が 2,500円、学生は 1,000円。

この演奏会、次のようなプログラムとなっています。

F.ダンツィ ファゴット四重奏曲 変ロ長調 Op.40 No.3
F.シューベルト 弦楽三重奏曲 D.471 B-Dur
F.ドヴィエンヌ ファゴット四重奏曲 ト短調 Op.73 No.3 他
【演奏】
 高橋あけみ(Fg), 犬伏亜里(Vn), 成田寛(Vla), 小川和久(Vc)

たぶん、まったく初めて聴く曲ばかりです。こういう演奏会が、実は楽しいのです。


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モーツァルト「弦楽五重奏曲第1番」を聴く

2013年04月01日 06時01分02秒 | -室内楽
このところ、通勤の音楽に、モーツァルトの「弦楽五重奏曲第1番」を聴いておりました。演奏は、スメタナ四重奏団にヨセフ・スークがヴィオラで加わるという、知名度抜群の組み合わせで、DENON のPCMデジタル録音です。

実はこの曲は、LPで全集を購入しておりましたが、まさかカーステレオでLPを聴くわけにはいかず、近年になってから同社のクレスト1000シリーズのCDを買い直し、車内で聴けるようになったものです。でもLPを捨てる気にならないのは、中高年の「もったいない症候群」のほかに、LP紙箱全集らしい充実した解説リーフレットがあるためでもあります。CDにも興味深い内容の解説があるのですが、質量ともにその充実度にはだいぶ差があり、もっぱらLPの解説を参考にすることが多いのです。

大木正興氏の解説によれば、第1番変ロ長調KV174は、1773年にモーツァルトがイタリア旅行から帰った直後に書かれたものだそうで、

作曲の直接の動機はミヒャエル・ハイドンのハ長調の五重奏曲を追跡したいという願いであり、当然、ミヒャエルの作品はその手本になった。ところがこの先輩は更にその年の12月に新しく別のト長調の曲を作った。モーツァルトはたちまちそれに影響されてこの曲を大幅に改作した。メヌエットのトリオは全面的に書き改められ、終楽章も変えられた。第1楽章、第2楽章、トリオ以外のメヌエット部は原曲のまま残された。やはり12月のうちのことである。モーツァルトがいかに自分の周囲の音楽に敏感な神経の持ち主であったかのひとつの好例に挙げられるだろう。

とされています。ふーむ、なるほど。音楽文化の先進地イタリアの空気を充分に吸収してきた若いモーツァルトが、意欲的に周囲の音楽を我が物とし、創作に励んでいる様子を想像すればよいのでしょう。

第1楽章:アレグロ・モデラート、変ロ長調、2分の2拍子。第2ヴァイオリンと第2ヴィオラとがリズムを刻む中で、第1ヴァイオリンが奏でる主題を、低い音で第1ヴィオラが受ける出だしがたいへん印象的です。
第2楽章:アダージョ、変ホ長調、4分の4拍子。やはりヴァイオリンとヴィオラの音色の対比が印象的な緩徐楽章で、優しい気分にひたります。
第3楽章:メヌエット・マ・アレグレット、変ロ長調、4分の3拍子。優雅なメヌエットですが、ここでもヴァイオリンとヴィオラとが協奏的に活躍します。
第4楽章:アレグロ、変ロ長調、4分の2拍子。二本ずつあるヴァイオリンとヴィオラとが、互いに存在を主張しながら対位法的に処理された音楽を奏でます。出だしのリズムがおもしろく、これが曲を支配するようで、聴いていて楽しくなります。

大木正興氏は、若いモーツァルトがこの一曲で弦楽五重奏曲の分野から離れてしまったことについて、二つの理由を推測しています。
(1) 書いても実利が伴わない。
(2) 室内楽の主流が、ハイドンによって完成された弦楽四重奏曲に移っていったこと。
これは、なるほどと頷けます。

参考までに、演奏データを示します。
■スーク(Vla)、スメタナ四重奏団
I=8(33" II=9'22" III=4'14" IV=6'03" total=28'12"

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R.シューマン「ピアノ四重奏曲」を聴く

2013年02月23日 06時02分11秒 | -室内楽
R.シューマンの「ピアノ四重奏曲変ホ長調Op.47」は、悩み深く嘆きとともにある暮らしの中で、思わず心に沁み入り、慰められるような音楽です。とりわけ第3楽章アンダンテ・カンタービレには、思わずリピート・ボタンを押してしまうでしょう。1842年の室内楽作品の中で、ピアノ五重奏曲に続いて書き初められ、最後に作曲されたもので、11月に完成したものだそうです。

第1楽章:ソステヌート・アッサイ~アレグロ・ノン・トロッポ、変ホ長調。
第2楽章:スケルツォ、モルト・ヴィヴァーチェ、ト短調。
第3楽章:アンダンテ・カンタービレ、変ロ長調。嘆きと慰めの音楽。チェロを奏するシューマンの嘆きに対し、ヴァイオリンによる慰めはクララさん?
第4楽章:フィナーレ、ヴィヴァーチェ、変ホ長調。

通勤の音楽として、また自宅で耳を傾けるのは、ピアノのジャン・ユボー、ヴァイオリンのジャン・ムイエール、フレデリック・ロデオンのチェロ、ヴィオラはヴィア・ノヴァ四重奏団員と表記されていますが、たぶんクロード・ナヴォーによる演奏で、1978年~79年にかけて、パリのノートルダム・リバン教会で収録されたエラート録音です。1981年度フランスACCディスク大賞を受賞した「シューマン室内楽全集」(6枚組)から分売された二枚組のCD。型番は、WPCS-11379/80というものです。

この「シューマン室内楽全集」は、LPの時代に、手元不如意につき買いそびれ、CDになって発売されたときにも優先順位を後回しにしたら廃盤になり、思い切ってそろえれば良かったと後悔したものでした。二枚組で部分的に入手できたときは、嬉しかったものです。できれば、残る「ヴァイオリン・ソナタ集」を見つけて購入したいものですね~。

ムイエールのヴァイオリンもすてきですが、ユボーのピアノがなんとも言えず魅力的な演奏です。シューマンのロマン性がいっぱいに花開いたような、香り高い演奏と言って良いでしょう。そうは言いながら、おそらく若い演奏家の方々はまた別な表現を模索していることでしょうし、1980年頃の代表的な演奏・録音を楽しみつつ、現代の若い演奏家のフレッシュな息吹も味わってみたいものだと、素人音楽愛好家らしい贅沢な願いを持っているところです。

■ユボー盤
I=8'57" II=3'14" III=7'37" IV=7'35" total=27'23"

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モーツァルト「ディヴェルティメント第17番』を聴く

2013年02月16日 06時04分42秒 | -室内楽
通勤の道路も、一時ほどの悪条件ではなくなりました。少し好天になれば、太陽の光に路面も本来の黒さに戻り、タイヤのグリップも復活します。ありがたい!

となれば、楽しい音楽を聴きたくなります。モーツァルトのディヴェルティメント第17番。ウィーン八重奏団員によるデッカ原盤のCDで、K30Y-1535 という型番のものです。たしか、鶴岡市から自宅に戻ることになったときに、今は亡きM君からいただいた記念の品です。キングレコードから1961年に発売されたLPレコードのCD化で、第1-Vnがボスコフスキーからフィーツに交代して間もない時期のものでしょう。1961年4月のアナログ録音で、なかなか好ましい録音だと思います。

第1楽章:アレグロ
第2楽章:主題と変奏、アンダンテ
第3楽章:メヌエット
第4楽章:アダージョ
第5楽章:メヌエット
第6楽章:ロンド、アレグロ

第3楽章のメヌエットは、昔の NHK-FM で、何かの番組のテーマ曲として使われていたと思いましたが、はて、何の番組だったか思い出せません。困ったものです(^o^;)>poripori

ディヴェルティメントとは「嬉遊曲」と訳すのだそうです。喜び遊ぶ曲!それは素晴らしい(^o^)/
少しの陰影を織り交ぜながらも、展開される音楽は愉しさにあふれたものです。演奏する人たちも楽しみながら、聴く方も屈託なく楽しむことができる、いかにもモーツァルトらしい素晴らしい音楽です。

さて、本日は山形交響楽団のモーツァルト定期の予定です。がんばって、確定申告の準備を進めましょう。
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山形弦楽四重奏団第46回定期演奏会でハイドン、紺野陽吉、ベートーヴェンを聴く

2013年01月15日 05時55分29秒 | -室内楽
外は大雪。山形市が属する東南村山地方は、大雪警報が発令されておりました。朝も除雪を行ったのだけれど、夕方にはまた積もリましたので、出かける前にまた除雪機を動かしました。一日に二回の除雪とは滅多にないことです。それでも、文翔館議場ホールで開かれた、山形弦楽四重奏団第46回定期演奏会には、ずいぶん大勢のお客様がお見えでした。



私が到着したときは、今まさに今井東子さんのプレトークが始まろうとしているところでした。以前の担当の時は、初めてで上がってしまい、声が後ろまで届かなかったようだと反省し、今回は後ろまで届くように心がけたい、とのこと。大丈夫、最後の列でしたが、なんとか聞こえました。今回は、演奏順ではなく、ハイドン、ベートーヴェン、紺野陽吉の順に解説を加えます。ハイドンは、エステルハージ候の死去後の様々なエピソードを、ベートーヴェンは、耳に快いばかりではないけれど、病が癒えた者の祈りのエピソードを、そして紺野陽吉は初演のことを解説します。全体に民謡調のもので、西洋音楽風の味付けがされているが、何の民謡なのか、山形でわかるのではないかと期待を表明します。

さて、いつものように、向かって左から第1ヴァイオリンの中島光之さん、第2ヴァイオリンの今井東子さん、ヴィオラの倉田譲さん、そして右端にチェロの茂木明人さんが座ります。本日の曲目は、次のとおり。

(1) ハイドン 弦楽四重奏曲 変ホ長調 Op.64-6
(2) 紺野陽吉 弦楽三重奏曲~生誕100年記念~
(3) ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第15番 ニ短調 Op.132

そして、演奏が始まります。

(1) ハイドン「弦楽四重奏曲Op.64-6」
第1楽章:アレグロですが、テンポは落ち着いたもので、柔和な感じの演奏になっています。その中では、チェロがけっこう主張しているように感じ、好感が持てます。第2楽章:アンダンテ。途中の曲想が変わるあたりから、四人の呼吸がぴったり合ってきたみたい。第3楽章:楽しいメヌエット、アレグレット。第1-Vnの中島さんが、こういうチャーミングな旋律を奏でているのは、失礼ながらパパ中爺みたいでおもしろい。超ハイポジションも、二回目は破綻なくぴたりと決まりました。第4楽章:フィナーレ、プレスト。緊密なフーガ?ハイドンらしい、晴朗で快活な、男性的な楽章です。良かった~。
全体に、お気に入りの「第三トスト四重奏曲」と呼ばれるOp.64の6曲の一つなだけに、聴いている回数も多く、欲を言えば第1楽章でも、第4楽章のようなハイドンらしい晴朗さがもう少し欲しかったかなと感じましたが、それにしてもこの曲を実演で楽しめるのは実にありがたい限りです。

(2) 紺野陽吉「弦楽三重奏曲」
第1楽章:アレグロ・マ・ノン・トロッポ。なるほど、基本的には西洋音楽の範疇にありながら、たしかに民謡風のところがあります。第2楽章:冒頭で、ヨーイイサノマカーセーが少し聞こえるような(?)アンダンテ・カンタービレ。第3楽章:アレグロ・マ・ノン・トロッポ・コン・レッジェーロ。ソーラン節みたいなところもある始まりです。互いに自己主張する弦楽三重奏のおもしろさがあります。

(3) ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第15番イ短調Op.132」
第1楽章:チェロから始まります。アッサイ・ソステヌート~アレグロ。実演は、録音とはだいぶ違った印象を受けます。もちろん良い方で、ボヤけない、充実した音楽であることが、ひしひしと伝わります。
第2楽章:アレグロ・マ・ノン・タント。この時期のベートーヴェンとは思えない優美さを持った楽章です。優しいスケルツォと言ったらよいのでしょうか、でもやっぱりベートーヴェンらしい力感を感じさせるところもあります。
第3楽章:とても静かなモルト・アダージョ。素晴らしい音楽の素晴らしい演奏でした。一人の中年男が、神に祈りを捧げている。曲想は少し変わってアンダンテに。モルト・アダージョに戻り、第2-Vnが歌い出すところは、とても味わいがありました。全体に、この長大な緩徐楽章は、聴く方にも何がしかの人生経験~たぶん、悲しみや苦さなど~が求められるのでしょう。再びアンダンテに戻り、第1-Vnが歌う旋律のステキなこと!中島さんも今井さんも倉田さんも茂木さんも、音楽に没頭して、ほんとに気持ちよさそうに見えました。いえ、ご本人たちは必死なのだと思いますが(^o^)/
四人の響きが作り出すハーモニーに思わず聴き惚れました。ただし問題は、ここで終わるわけではなくて、さらに第4、第5楽章へと続きます。
第4楽章、第5楽章:2つの楽章が続けて演奏されます。アラ・マルシア、アッサイ・ヴィヴァーチェ~ピウ・アレグロ~プレスト。そして最後はアレグロ・アパッショナート。まるでハイドンのような明朗な曲の出だしが印象的ですが、すぐに曲想は変わり、Piu Allegro に。さらに Presto に変わって、堂々たるフィナーレ・・・にはならない。そこがこの時期のベートーヴェンです。最後の楽章には、再び悲哀の色が現れています。

たぶん、精も根も尽き果てて、アンコールはなし。白鷹町方面に帰る方々は、帰りの雪の状況が心配で、とてもアンコールの余裕はなかったかもしれません。おそらく正解だったのではないでしょうか。

それにしても、良い演奏会でした。私にとっては、何といっても生のベートーヴェン!!素晴らしかった。続いて紺野陽吉。自らの作品を師に託して出征して行った若い作曲家の運命を思ってしまいます。ハイドンの第1楽章は、もしかすると後の2つの作品の重さに、やや引きずられた面もあったのかもしれません(^o^)/
いやいや、そんなことよりも、やっぱりカルテットのおもしろさを満喫できた、幸せな演奏会でした。

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山形弦楽四重奏団第46回定期演奏会が近づく

2013年01月12日 06時01分54秒 | -室内楽
山形弦楽四重奏団の第46回定期演奏会が近づきました。今回は、全曲演奏を目指すハイドンのほか、白鷹町出身で若くして戦没した作曲家、紺野陽吉の生誕100周年記念として、弦楽三重奏曲、そしてベートーヴェンの第15番というプログラムで、当地の地元新聞にも大きく取り上げられ(*1)、注目度はかなり大きくなっております。

作曲家の作品は、演奏家に取り上げられ、演奏されてはじめて聴衆に伝わり、受け継がれていくものだということ。そのことは、言葉の上では理解できているつもりでおりましたが、山形弦楽四重奏団の第一ヴァイオリン奏者の中島さんの記事(*2)などを読むと、痛切な思いを伴って感じられます。故佐藤敏直さんの手書きの楽譜を探し出すときの奥様のお気持ちも、きっと同じだったのだろうと推測するあたりも、まさにその演奏会に立ち会っていていた(*3)だけに、たいへん共感できるところです。

ベートーヴェン後期の15番とハイドンについても、山Qメンバーそれぞれに期するところがあるようで、定期演奏会を前に、気合が入っている(*4,*5)ようです。楽しみです。

私も、万難を排して出かけるつもりでおります。新聞記事の影響で、置賜地方のお客さんが多くなりそうな気もしますし、これは前売券を入手しておかねばなるまいと、本日は某富岡楽器に出向く計画を立てております。


(*1):山形新聞1/6に記事が掲載されました~「らびおがゆくVol.3」
(*2):作品を残す~「中爺通信」
(*3):山形弦楽四重奏団第29回定期演奏会を聴く(2)~「電網郊外散歩道」2008年12月
(*4):山形弦楽四重奏団第46回定期演奏会近し~「茂木日誌」
(*5):山形Q練習46-Vol.10~「東の散歩道」
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山形弦楽四重奏団第45回定期演奏会でハイドン、幸松肇、モーツァルトを聴く

2012年10月14日 11時16分44秒 | -室内楽
週末の土曜日、朝から某行事に参加し、なんとか午後には終わったので、夕方から山形弦楽四重奏団第45回定期演奏会に出かけました。会場の文翔館議場ホールに少し早めに到着し、18時15分からのプレコンサートを聴くことができました。

プレコンサートの演奏は、山形交響楽団に所属するお二人、斎藤真美さんのオーボエと田中知子さんのヴィオラの二重奏です。オーボエとヴィオラの音が、こんなに似合うものだとは、初めて知りました。曲はピアラ?の二重奏曲だそうですが、作曲家の名前も初めて耳にするものでした。なかなかすてきな音楽でした。

プレコンサートトークは、中島光之さんです。今回のプログラムでは、ハイドンとモーツァルトが貴族の使用人の身分を脱し、自由な音楽家として書いた作品であるという点で共通点があり、モーツァルトが先輩ハイドンに献呈した六曲の「ハイドン・セット」から第15番のニ短調の曲と、後輩モーツァルトよりも長生きしたハイドンが後年に書いたOp.71-1 を取り上げています。貴族の束縛下から自由になってと言いますが、貴族が悪いわけではなくて、モーツァルトの最初の大旅行の際には前任のザルツブルグ大司教の絶大な援助により実現したそうですし、ハイドンの音楽活動はエステルハージ侯爵なしには考えられませんけれど、と注釈を加えます。このあたりは、学習塾講師の経験もある中島さんらしい、さすがの「講義」ですね(^o^)/
ところで、当日は、幸松肇さんご自身が来形されており、直接お話をお聞きすることができました。「最上川舟唄」では、三つの民謡が合わさって成立したという経緯を踏まえ、実際に舟下りを体験して作曲したこと、「箱根八里」では雲助も登場するなど、楽しんで書かれたようです。前二作とはいささか違って、原曲を解体し、自由なイメージで作られたとのことでした。

さて、演奏が始まります。最初に白状してしまいますが、今回の定期演奏会は、素人音楽愛好家のささやかなライブラリの盲点をついた、「LPやCDを持っていない曲ばかりを集めた」プログラムになっています(^o^;)>poripori
そんなわけで、レポートとしてはいささか内容の薄いものになりますが、これは当方の個人的事情であり、演奏の内容をいささかも軽んじるものではありませんm(_'_)m

1曲めはハイドンの弦楽四重奏曲変ロ長調、Op.71-1 です。
第1楽章:アレグロ、第2楽章:アダージョ、第3楽章:メヌエット~アレグレット、第4楽章:フィナーレ~ヴィヴァーチェ、演奏時間は約28分。作品番号の若い曲の場合、風通しの良いシンプルな良さの半面、とくにチェロの活躍の場面などでいささか「歯ごたえ」に不満を感じることもあるハイドンの弦楽四重奏曲も、このあたりになるとぐっと音楽の充実を実感します。

続いて2曲めは、幸松肇「弦楽四重奏のための日本民謡第3番」です。
(1)「箱根八里」。チェロが歌うとき、気宇の大きさを感じます。途中に、リズミカルな部分が出てきますが、雲助というのはこのあたりかな?
(2)「佐渡おけさ」。ああ、おけさ節だとすぐわかる始まりです。どちらかというと哀調の音楽である原曲のイメージを受け継いでいるようです。チェロが旋律を歌うときや、ピツィカートでお琴や鼓のような効果を聞かせるところも。
(3)「最上川舟唄」。チェロと二丁のヴァイオリンが指でリズムを刻む中で、ヴィオラが歌い出す、あそこはほんとに見せ場で、堂々としていてかっこいいです。それを演奏するのが、「最上川舟唄発祥の地」大江町在住の倉田譲さんというところが、実によくできています(^o^)/
それを受ける第2ヴァイオリンも、いいですね~。「酒田~サァ行ぐ~サゲェ~」を1st-Vnが。ここも実にいいですね~。そして「ヨ~イサノマガセ~」等が四人のアンサンブル。急流も乗り切って、いいですね~!
(4)「鹿児島おはら節」。「花は霧島、タバコは国分~、燃えて上がるは~オハラハァ桜島~」ですね。「ヨイヨイヨイヤサ!」まで、東北の地ではあまり馴染みは深くないけれど、フィナーレにふさわしい曲となりました。

ここで15分の休憩です。うにさん(*)がおられたのは気づきましたが、芸術の秋とはいえ、聴衆は決して多いとは言えません。当方も、前売券を入手する機会もなく、妻を誘ってもいろいろあるようで、単身ばたばたと当日券を目当てにやってきた状態でした。チケットの入手先も、富岡楽器店と辻楽器店に限られますので、多忙な時期には「ほぼ無理」。ドタキャンがありうる不安定なスケジュールでは、メンバーの方々に直接依頼するというのも心苦しく、このあたりはなかなか難しいところです。



それでも、文翔館の無料駐車場(*2)には「仙台」ナンバーの車も見られ、けっこう遠方からのお客様もおられるようです。本当に貴重な演奏会ですので、大切にしたいものです。

後半は、3曲めのモーツァルトです。弦楽四重奏曲第15番、ニ短調K.421です。
第1楽章:アレグロ・モデラート。同じ古典派とはいえ、ハイドンとは異なる個性です。きめこまかな、充実した音楽。第2楽章:アンダンテ。緊張、集中、没入、といった語彙がふさわしいかも。第3楽章:メヌエット、アレグレット。2nd-Vn と Vla,Vc のピツィカートをバックに、1st-Vnがリズミカルに奏するあたりがやけに印象的。第4楽章:アレグレット・マ・ノン・トロッポ。あらためて言うのもなんですが、いい曲ですね~。

アンコールは、生誕150年を記念して、ドビュッシーの弦楽四重奏曲から第2楽章を。近代の精華とも言うべき曲の、活気ある音楽、気合の入った演奏でした。あらためて、いい曲だな~と感じました。うん、家に帰ったらドビュッシーを聴こう、と思いました。

だって、ハイドンのOp.71-1もモーツァルトの第15番も、CDもLPも持っていないんだもの(^o^)/

(*):うにの五線ノートから~山形在住の作曲家・木島由美子さんのブログ
(*2):文翔館の無料駐車場~ふだんは17時までですが、議場ホールで演奏会のある日は21時過ぎまで利用できるようです。

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