評価
(3点/5点満点)
時間生産性向上コンサルタントの若林雅樹さんが、簡単に実践できる業務の効率化のノウハウを紹介します。
タイトル「メールはすぐに返信するな」の意味は、メールをチェックする回数を、1日2回に制限するだけで、自分の業務にかけられる時間が増え、さらには、集中して取り組めるようになるということです。
とにかくいろいろな方法を試すようにしましょう。仕事術へのアンテナが高くなり、他者の仕事術をたくさん試したくなってくるはずです。そして、簡単なことを着実にやる習慣が身につき、画期的な成果につながります。
本書の中で私は、合理的な会議のやり方(第5章)が秀逸だと感じました。会議で確実に成果を出すための実践的なポイントが、ほぼすべて網羅されています。以下の【my pick-up】で、特に重要を思われる個所をまとめました。
【my pick-up】
◎会議の目的を明確化して、ゴールを考え抜く
たとえば、課や部の定例会議は目的が不明確になりがちです。「毎週(隔週で)会議を開催する」と決めたら、なかなか後戻りができなくなります。仮に情報共有のための会議であったとしても、「今週は、特に共有すべき情報がない」という週もあるでしょう。そのときには勇気を持って、会議を開催しないことをおすすめします。「毎週開催することになっているから、なんとなく」というスタンスで開催してしまうと、会議は形骸化していきます。「参加しても時間のムダ」と参加者が感じれば、内職をしたくなるでしょう。居眠りする者も出てくるでしょう。ですから、会議開催にあたっては、常に目的を確認し、そぐわなければ会議を開かないことにしましょう。会議の目的が、いつも明確であれば、会議は形骸化しないのです。
◎ゴールから逆算してアジェンダを作成する
議論すべき内容を特定できたら、アジェンダ(議題をまとめたもの)を確定していきます。議論すべきことを細かく逐一アジェンダに書き記してもいいのですが、雑多になりそうなときは、マイルストーンを記載するにとどめておきましょう。A4用紙1枚にまとまり切らないアジェンダは、読まれない可能性が高くなります。メールや社内のネットを使って会議を依頼するのであれば、画面でスクロールが発生しない長さを目安にしましょう。アジェンダに記載する内容が決まったら、それぞれの所要時間を見積もって、会議全体の所要時間を出します。
所要時間の見積もりが終わったら、「アジェンダ通りに会議が進めばゴールにたどり着くか」をチェックします。会議のシミュレーションととらえていただいても結構です。このチェックをするかどうかで、会議の質が大きく変わってきます。
◎必要な人員を選出する
責任者がいれば十分です。ただし、責任者に、「担当者の○○さんに聞かなければわからない」ということがないかどうか確認しておくと、より安心です。他部署の人のことは、わからなくて当然です。この手間を惜しまないことが会議成功のポイントです。絶対避けなければいけないのが、会議が始まってから、「これは○○さんじゃないとわからないよ」という状況に陥ることです。その瞬間、会議の存在が無になります。
◎会議の論点を洗い出す
それぞれのアジェンダで反対意見を言いそうな人を洗い出します。自部署から反対意見が出るのは準備不足にほかなりません。そうなると、反対意見は他部署からしか出ないことになります。
反対意見を言いそうな人を洗い出したあとは、その人たちからどのような反対意見が出てくるかを予想してまとめます。次に、その反対意見にそなえて、「切り返し」を用意しておきます。通常、反対意見で多いのは、工程(時間・人)、コスト、タイミングにかかわることです。ただし、自分一人ですべての反対意見に切り返す必要はありません。○○については上司から、△△については先輩から説明してもらうなどと、戦略的に考えておけばOKです。「あとで調べておきます」という発言が出てしまったら、その会議の進展は、それ以上望めません。
◎議事録を共有する
会議に参加した人も、不参加だった人も、読んで瞬時に、「何が決まったのか」「次に何を行うのか」が理解できるようにします。パッと見て、この2点がわからない議事録は、残念ながら形骸化しています。
議事録を作成したら、遅くても、翌日までに共有します。議事録の共有が遅くなったせいで、会議の決定事項が覆るということが、ごくたまにあります。議事録は、なるべく早く共有して、決定事項を確認しておきたいのです。また、逐語録を作成する必要は、まったくありません。
◎ネクストアクションの進捗管理を行う
ネクストアクションが、何らかの対応を要するものである場合には、「こちらから催促しなければ、相手は動かない」を心得てください。「対応しない人が悪い!」と文句を言うのではなく、「しっかり動いてもらうところまでが会議主催者の責任である」と認識して、何とかしなければならないのです。
ひとつの目安ですが、ネクストアクションを依頼している人数の桁数がひとつ増えれば、クッション数(本当の期限よりも前の期限)もひとつ増やすのがおすすめです。10人未満であればワンクッション、10人以上であればツークッション、100人以上であればスリークッションです。このクッションは便利です。「期限が過ぎているので急いで対応してください!」と言えるようになるからです。つまり、仕事の緊急度を高められるのです。