評価 (3点/5点満点)
この本では「眼前可視化」というノウハウを紹介します。
会議・商談時にリアルタイムに目の前で議事録を書きながら「議論を可視化しながら会議を進行する」というシンプルな方法で、これにより議論を深め、蓄積していくことを目的としています。
いかに言葉の定義が曖昧であるのか、論理が破綻しているのか、目的や手段が混在しているのか、同じことの繰り返しなのか・・・
参加者の目の前で話したことをその通りに書いていくと、このような欠点・歪み・ノイズに気づくと思います。
生産性向上の第一歩ですね。
【my pick-up】
◎決める会議とは?
私が在籍していたころのリクルートでは会議とは「決める場」であることが大半で、決めることが仕事という言葉が多くの先輩方の胸に刻まれていました。したがって、会議の司会進行・ファシリテーション(円滑に進める)役はその会議で1番大きな決裁権を持つ役職の高い人物が担うことが当たり前となっていたのです。これに付随して、参加メンバーも厳選されることになります。決める立場の人だけ呼んで、決められない・意志がない人は参加させない。意見を言えない人・意志がない人に対しては「なぜあいつを呼ぶんだ?」となってしまうくらいの雰囲気でした。
◎誰が眼前可視化を実行するのか?
社長や役員が参加する会議の場合は、社長はさすがにないとしても若手ではなく、その間くらいのナンバー3~4の役員クラスが眼前可視化をするのが好適です。ある種のカルチャーとして「議事録取るのは若い子」という不文律があります。これは、議事録を取る仕事の重要性が低いという認識がベースになっています。今回の眼前可視化は「議事録を取ることとは全く別、議論を進めるためのテクニック、ツール」という位置づけであり、非常に重要な業務だということを念頭に、誰が担当するのかについて決めてもらえればと思います。
◎問題発生要因を特定しないことの死活問題
そもそも問題発生要因は何か、なぜ成果が出ないかという観点で物事を見ていない人・組織は「振り返る」という概念も持ち合わせていません。振り返りが甘い企業は実は多く、運任せの場当たり的な判断と実行で何とかなってきてしまっている場合は、特にその傾向が強い。また振り返りノウハウそのものが欠如しているケースもあります。振り返りとは、事前にしっかりと計画を策定していないとできません。当初想定していたスケジュール・タスク・成果に対し、部署別、個人別に何がどこまで到達したのかという結果の整理と、なぜそういう結果になったのかという要因分析が必要なのです。
振り返ることなく、元気ゼロの状態から一定期間が経過し、体力が少しずつ回復してくると問題発生要因の特定、前回の途中放棄について振り返ることなく次の打ち手の議論が始まってしまう傾向があります。「打ち手を議論していると仕事している気になってしまう病」とでも名付けましょうか。打ち手の成果分析をせずに打ち手ばかりの議論が横行します。こういう場合の議論は自分たちの視界・経験・価値観の中で立案し続ける傾向が強く、問題発生要因を特定せず振り返りもしないくらいの水準に止まりがちです。
◎誰が何に何時間使っているか
多くの企業で「多くのメンバーが現在の業務でいっぱいいっぱい、人が足りない」という現象が起きています。ただ実態を詰めていくと、1人当たりの売上や利益にまだまだ伸びしろがあるのに、そういう声が出てしまっていることがわかります。生産性を見直す手立てはないのでしょうか?地味だが非常に有効な手段として、各人が何をどれくらいの時間を使ってやっているのかについて可視化することをおすすめしています。実際にやってみると、不要な業務がこれでもかというほど出てきます。
各人が多忙で人が足りない→採用だ!と短絡的な意志決定をしてしまう場合にもたくさん遭遇してきましたが、これは本当にムダです。人を増やす前にやるべきことがあるはずです。きっちりパフォーマンスを最大化できる運営を敷いた上で、それでも人を増やす必要があるのか否か。採用の前にやるべきことって、結構あるのです。
・必要のない会議に出ている
会議の中で多いのが、参加者はとにかく多い、意見を言っているのは数名、その他の傍観者はメモも取らずただ情報共有の意味で参加させられている・・・というようなものです。会議は議論するためのものであり、情報共有なら他の手段でOKと割り切ることが重要です。
・ブラインドタッチ、単語登録、雛形使いまわしなどを徹底していない
メールを作成する時に毎回同じ文章を手打ちしており、単語登録を通じて一発で言葉が出るようにしていないとか、ブラインドタッチがそもそもできていないとか、基礎行動を軽視している場合は驚くほど多いです。
・本人がやるべきことと、そうではないことの切り分けができていない
外部に委託して変動費化した方がよい業務も内製化してしまっているという場合もあるでしょう。「私がやるべき仕事だ!」と思って取り組むのと「私じゃなくて他の人がやった方が上手くいく仕事をたまたま私がやっている」と思いながら行うのとでは、成果も違ってくるはず。