評価 (3点/5点満点)
味の素の元副社長で全社のDXを指揮してきた著者が、内向きで忖度文化が蔓延していた味の素の意識を前向きで自発的にした苦闘が描かれています。
・パーパス経営とDXの導入により、味の素の企業文化・風土を変えた。
・具体的には、「夢の持ち方」とその実現の方法としての「変革」。
・会社・組織の夢と個人の夢が同心円になるように運営する。
・現実の仕事のやり方を少しずつ修正しながら、ある転換点を迎えると未来の仕事のやり方に変わっていく。この転換点をいかにして作るか。
日本企業や大企業にありがちな忖度文化や内向き組織から、いかに全社最適に変革できるか。
味の素の実話は、大いにヒントになると思います。
【my pick-up】
◎仲良しグループから脱却するためには「異質」が必要
日本企業は同質の考えと価値を有する人間のみで構成されている組織がいまだに多く、加えて忖度文化が浸透しているため、違う考え方やその組織の文化に合わない発言や意見を「異質」のものであるとして、排除する傾向が強い。このような組織は「内向きの組織」と言えます。自分とは違う人・ノーを言ってくる人たちは自分と敵対する存在ではなく、アドバイスをくれる人だと理解することがまずは重要です。自分たちと同質でない相手の意見も、考え方やものの見方が違うだけで、目指すゴールは同じだということに気がつけば、議論はむしろ深まります。
◎「やった感」に組織は踊らされてしまうもの
DXが「ただの手段」であることに早く気がついた。事業が縦割りであることが原則の日本企業では、それぞれの事業特性に合わせてデジタルやITツールを特殊化させがちで、非常に複雑なシステムになってしまいます。これに対して世界のDX先進企業では、デジタルやITツールはできるだけ標準的で誰もが簡単に使いこなせるものを積極的に導入しています。「事業部ごとのDXプロジェクト」が乱立すると、情報やデータを全社で統合して共有し利用するというDXの成果を上げるために最も必要な基本的な思想が普及しません。自分の事業部の最適化さえ考えればいいとする会社の文化を変えなければいけません。