北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

スローライフ掛川を調べた卒論

2006-01-24 23:20:44 | Weblog
 なんだかんだいっても雪は降るもので、毎日少しずつ降っています。常夏の国からの観光客の皆さん、いまならほぼ確実に雪の降る姿が見えますよ。


 今日は
■卒論のテーマは掛川のスローライフ です。

【卒論のテーマは掛川のスローライフ】
 掛川で一度だけあった事のあるI君から「卒論が完成しましたのでお送りします」というメールとともに卒業論文が送られてきた。

 三年間の助役生活を終えた私と入れ替わるように掛川のスローライフ界に現れたのがI君だった。彼は掛川出身で地元の大学に進学したのだが、卒論のテーマを探しているうちにスローライフ掛川の関係者の元へと導かれるように入っていったのだ。

 掛川のスローライフの関係者であれば大抵は運命の赴くままに「なだれ込んでくる」人たちを待っている。しかし世の中の人たちは二通りに別れていて、その瞬間に運命に身を任せて踏み出せる人と、思いとどまって後戻りする人のどちらかだ。

 I君の運命は偶然にもそこから先になだれ込んだ事で広がりを見せ、その結果としてNPO法人スローライフ掛川の存在を知り、どうやってその活動が成立してきたかという過程から、それがまちづくりの中にどのように活かされているか、そしてそもそも何の縁もなかった人たちがいつの間にか繋がっている事の価値をどう考えるか、といった点に興味をもち、そのことが卒業論文のテーマになったのだ。 

 タイトルは「NPO法人スローライフ掛川における社会関係資本の蓄積─つながりがもたらす価値とは何か─」である。まさに私が掛川で唱えてきた事を社会学的にまとめてくれた一書になっている。

 我々自身には当たり前になってしまっている暗黙知を、論文という形で公開知にしてくれたという意味でこの論文はわがNPOにとってもこれまでの活動の総括として最適な位置を占める事になるだろう。

    *   *   *   * 

 さて彼の論文から本人の承諾を得たのでいくつか抜き出してみよう。

 「『スロー』という言葉は、そのあいまいさによって参加者の幅を限定せず、多角的な参加を可能にしながらも、ゆっくり、ゆったりという言葉から連想される一定の方向性を活動に与えている」

 ☆これは「スロー」の持つ曖昧さがかえって多くの人のその人なりの共感を持って迎えられているという意味だ。あまりかっちり目的主義になりきっていないのが良いとも言える。

 「スローライフ掛川ではスローライフの普及を活動の内容としているが、『ファースト』の価値を否定しているわけではない。メンバーは普段忙しい生活を送っているし、ファーストフードも食べる。スローライフに絶対的価値を見出しているわけではないし、まちを良くするためにしゃかりきになって活動しているわけでもない。スローライフ掛川の人々はファーストな世界に生きながらも、スローであることに価値を見出してNPOに参加しているのだ」

 「メンバーいわく『なんちゃって』な活動なのだという。スローな価値やまちづくりに対して非常に熱いメンバーは多いが、それを『広めなければ』と力むのでなく、自分がいいと思うことや好きなことを自分のスタンスでやっている。したがってスローライフというものに対してメンバーそれぞれの認識が一致しているわけではない。むしろばらばらといっても良いくらいだ。スローライフ掛川のメンバー間のつながりは、スローライフという一点に関しては非常に緩やかなつながりであるといえよう。特に決まりごとがないことで参加者個人によってスローライフを様々な形で解釈することができ、様々な興味関心を持った人が集まるための求心力となっているのだ」

 ☆…といっても、それぞれがお互いに共感をもちながら活動をしているから、協力するところは大いにするし、決してそっぽを向いて自分勝手に行っているわけではない。その距離感が心地よいのである。

 私の知人も登場しているぞ。

 「O氏は肴町という掛川の中心街に生まれ育ち、掛川の街のコアな部分に精通した人物である。掛川で最初にスローライフの運動が始まったとき、実は彼は「街の外の人間が何をしているだ」と冷ややかな目で見ていたという。しかし、前助役の小松氏と神社のことに対する興味から知り合うこととなり、佐藤氏と出会った。そして活動の内容を知り、掛川の街のためになるなら、と活動を支えることとなった。だが、彼はNPOの会員ではない。中に入ってしまうと活動を伝えようとする言葉が安っぽくなってしまうと考えたからだ。あえて中に入らず、外から見てその活動がいいことをしていると街中の人に伝えていうと考え、影ながら大きなサポート役となっている」
 ☆ふふふ、随分なほめられようですね。一見フーテンの寅さんみたいなんだけど。

 「また、コンセプト事務所はスローライフ掛川のネットワークの中心として大きな役割を果たしている。コンセプト事務所ではスローライフ掛川に興味を持ってやってきた人を受け入れるだけでなく、中まで引き込んでしまう。スローライフ掛川の人々が『なだれ込み』という言葉を使って表現することであるが、スローライフ掛川のネットワークは外に開かれていながらもそこにやって来た人を閉じたネットワークの中に引き込んでいく」

 「また、やってきた人も自ら選択して入り込んでいく。このような形でスローライフ掛川とそこに対して興味を持って訪れた人同士が互いに関心を持ち合うことで、スローライフ掛川のネットワークは拡大しながら閉じていっているのである。それによって『オープン型』ネットワークの特徴である外部の多様な情報にアクセスしやすく、グループの交渉能力が高いという利点を持ちながら、同時に『クローズ型』ネットワークの特徴であるコミュニティ内の結束が強く、規範が成立し、情報の共有が促進される状況が生み出される」

 ☆我々自らはなかなかそこまで見えないものだが、外部からの新鮮な目で見たままの感想は我々にとっても新鮮だ。NPOの活動経過をいずれ本にするときが来たら、これをリライトすればそれまでの経緯がはっきりと浮かび上がるだろう。

 普段の活動をいちいち文章にしようと思うと相当な労力を必要とするが、だれかが義務感や責任感を感じてこのような形で適当なタイミングで記録を取っておいてくれるという事は本当に意義深い事だ。


 天はその瞬間に必要な人を必要な場所に送り込んでくれるものである。I君、本当にありがとう。 

コメント (7)
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