駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『姫が愛したダニ小僧』

2009年12月31日 | 観劇記/タイトルは行
 アートスフィア、2005年7月22日ソワレ。
 骨組だけの廃虚ビルを、ひとりの男が暗い顔で登っていく。彼の名は飯田(ラサール石井)、ここから飛び降りようと考えていた。だがゴミと見まがう服を着た、このビルに住むという男(後藤ひろひと)が飯田に不思議な話を語り始める。亡くなった祖母の遺品を受け取りに老人介護施設を訪れた祐一(ユースケ・サンタマリア)とエリ(佐藤康恵)は、そこで自ら「すみれ姫」と名乗る老婆(富田靖子)と出会い、船長と洗濯娘と呼ばれる…脚本・演出/後藤ひろひと。1988年にPiperによって初演された『Piper』がその後『姫と船長と洗濯娘』と改題されて二度公演され、四度目の再演。

 Piperという劇団を知らなかったのですが、実力者揃いで仰天しました。こんなに台詞の聞き取りやすかった舞台は久しぶりかもしれません。
 ただし休憩なし二時間半は長いし、冗漫な部分も多々ありました。でもおもしろかったですけどね。
 だけど一番不満だったのは主人公の祐一の造型かなあ。すみれ姫の妄想というかもうひとつの世界にすんなり入っていっちゃうエリとか、もともとちょっとヘンだった鯖田院長(松村武)とその手下(麗子役の大路恵美、絶品! モデル出身のアイドルタレントかと思っていましたが、このキャラはナニ!?)はともかく、普通の観客はやっぱりそんなにすぐには順応できないしこの世界のルールがよくわからないので、祐一にはもっと抵抗してほしいんですね。なのに「なんで?」と言っているだけでただ流されているだけで、キャラとしての魅力に欠けるんですよね。私ははっきり言ってこの公演はユースケを観に行ったのですが、これでは彼も演じようがなかったろう…と残念でした。ラストに楽しそうに『ダニーボーイ』を熱唱する姿が救いでしたが。

 もっと私の好みで言えば、何故祐一とエリが船長と洗濯娘なのか、というところもつっこんでほしいところ。もうひとつの世界に誘われてしまうってことは、現実の世界から浮き足だちかけているということなはずなので、たとえば離婚の危機にある夫婦であるとか、仕事にいき詰まっているとか設定があってもいい気がするのです。まあそんなの眼目じゃないと言われればそれまでですが…
 でも、ただのお祭り騒ぎじゃなくて、私はやっぱり何かの意味が、欲しいかなあ…
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