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駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇宙組『大海賊/Heat on Beat!』

2024年10月28日 | 観劇記/タイトルた行
 相模女子大学グリーンホール、2024年10月23日16時半。

 17世紀後半、カリブ海のスペイン領サンタ・カタリーナ島がイギリス海賊の首領エドガー(瑠風輝)によって襲撃された。両親を海賊たちに殺された総督の息子エミリオ(芹香斗亜)は追っ手を逃れ、ひとり海に飛び込む。奇跡的に漂着した先は、ラッカム船長(松風輝)率いる海賊船エスペランサ号が根城とするトルツカ島だった…
 作・演出/中村暁、作曲・編曲・録音音楽指揮/吉田優子、作曲・編曲/南安雄、西村耕次、鞍富真一。2001年月組初演、15年星組再演のミュージカル・ロマン。

 初演の感想はこちら、再演はこちら
 再々演発表に、再演発表時同様に「なんであんな駄作を!?」と叫びましたとも…みっちゃんのときは、下級生時代に出演していた思い出の作品だから、という理由が一応ありましたが、キキちゃんは…なんで? 星組時代、出てましたっけ…?? 初演の大空さんフレデリック大尉(泉堂成)のすんばらしいビジュアル以外に見どころない作品だと思うんですけど…(暴言)
 というわけで、一回でええやろ、とマチソワ手配しなかったのですが、もしかしたら二回観ていたらまた印象が変わったのかもしれません…
 いや、初日はみんなベタ褒めしていて、ホントかよ?と思っていたらホンはママで作品としては微妙なままだったよ、とも聞けたので、安心して(?)覚悟しつつ席について、そして本当になんの手も入れられていない暗転祭りに唖然としたのですが…
 イヤ主題歌が、最近の再演全ツあるあるの、歌詞ママでメロディだけ変えるという気持ち悪い手の入れ方をされている、というのはありましたが…あとはまんまですよね? いや映像で何度も見返したり見比べたりしていないので、ちゃんとした比較論評ができなくてすみませんが…むしろ暗転の数が増えたのでは?と思ったくらいです。こんなに20回も30回も(言い過ぎでしょうが、でも10回はしていましたよね?)暗転してました?? 現代演劇は場面転換のシームレスを目指しているものだと私は考えていたんですけど…違うの? いくら全ツ用でセット照明その他に制限があるんだとしても、もうちょっと工夫できないものなの?? ヒロインが上手袖からサササッと出てきて一言台詞言うだけで10秒で引っ込む、とかの場面があっていいものなの??? 私はあそこで本当に本当に絶望的な気持ちになったんですけれど…
 でもなんか、そういう目をつぶりがたい、あるいは目を覆いたくなるような演出の惨状とは別に、キキさくがなんか、ホントーに、よかったんですよね…!
 冒頭のただ立ってるだけのキキちゃんエミリオに、素直に「かっけー…!」って声が漏れましたし、貴族のボンボン時代をあまり子供に作っていないのもよかったな、と思いました。もう立派な青年で、ただ世間知らずのお坊ちゃんなだけで、気は優しいけれど弱くはなくて、その後めきめき成長して…というのがわかりやすかったし、納得度が高かったです。どのお衣装も似合っちゃってカッコいいのがまたすごい。ブーツオンブーツというか、スターブーツの甲にさらに革が当ててあるってなんやねん、って靴も履きこなしちゃうトップスター力に、改めて平伏す思いでした。金髪ウェイビーロングの美しさもたまりませんでしたし、とにかくどんな役であれ話であれ(オイ)成立させてしまうトップスター力、大事…!と震えまくりました。あっぱれだったと思います。
 さーちゃんも、エレーヌ(春乃さくら。しかし主要人物がエミリオエレーヌエドガーってみんなエから始まるのはわざとなのか、それとも中村Aが真性のバカだからなのか? 普通は変えるよ、紛らわしいだろ!? キャラのネーミングの基本のキだよ!!)みたいな書き込みのないザッツお姫様なだけのヒロインって、上手い娘役がやるとかえってカマトトっぽくなってつらいんだけど(といって下手な娘役がやっても棒で成立しないお役なのですが)…みたいなことを心配していたのですが、さすがそんなことはなくて、でも愛らしく美しく、私は大変満足したのでした。どのドレスもこれまた素敵でしたしね。ずっと地味だよもっと描けよと思っていた舞台化粧もアイメイクがやっと華やかになって、お姫様ビジュアルが作れていたと感動しました。エレーヌの印象的だったソロやエミリオとのデュエットソングが改変されていないのもよかった。ラストの小舟の仲では腹筋によるポーズキープ力が試されているのでしょうが、微動だにしておらず素晴らしかったです。
 よくよく聞くと最初のソロから、海というか海の向こうの、あるいはここではないどこかの、自由に自分らしく生きていける世界への憧れを歌っているんですよね。だからエミリオとの出会いと語らいから恋も生まれるわけで、そこをもうちょっと足したホンにしたら、今のフェミニズムにも合致するしさらにいいヒロイン像になるのになあぁ…!と心底残念です。それがないと、この時代の政略結婚なんて貴族として当然のことなので、単にワガママ言ってるアタマの悪い小娘に見えちゃうじゃないですか。上級生娘役がいないもんで急に起用され出した、そしてそつなく上手くていいぞもっと使って!となっているここさくちゃん兄嫁マリア(湖々さくら)がとてもよかったので、ここの会話を膨らませるとか対比を描くとか彼女にも思うところがある、とかするとより深みも増すんですけれどねえ…例えば柴田脚本ならどんなに短い台詞でもそれを思わせるものが入っているものなんですよ、学んでよ!
 エレーヌが結婚させられそうになっているジェームス卿(でしたっけ?)は結局出てこないのだけれど、誰イメージなんですかね…以前ならすっしぃさんがヤラしく傲慢な中年男としてたっぷり憎々しく演じてくれていたのでしょう。まっぷーもりっつも分身できないからな…
 というわけでこのラブストーリー主軸はわりとちゃんとして見えましたが、あとはエドガーもキッド(桜木みなと)も別においしい役じゃないというか、ファンを増やす役じゃないなー、というのが気になりましたし残念でした。こってぃロックウェル(鷹翔千空)もなんか、別に…じゃないですか? 悪役としてしどころがないというか…
 あとはやっぱりホンですよねー…海賊に復讐したいから海賊になる、という支離滅裂さは、まあ海賊に拾われたんだから生き延びるためには海賊になるしかないよなってんで理解もできますが、そもそも作品としてこの時代の真の(真の?)海賊と諸外国の航海力による紛争とのまだら模様っぷりがどうにも上手く扱えていない気がしますし、国家の承認をバックに残虐非道をしまくる海賊より金持ちから奪うだけで人殺しはしない普通の(普通の?)海賊の方がちゃんとしてる…という理屈もかなり無理があるわけです。だからいいってこっちゃねーだろ、所詮犯罪行為だろ、って話ですからね。
 何より物語として、新船長選びのターンとかホント要らないと思うんですけど…なんで男って、どっちが強いか勝負だ!とか誰がトップか競争だ!みたいな話が好きなの? イヤ好きでもいいけど女はそれほどにはその話題に興味がない、ということを学習して作品を作れよ、って話です。だって観客はほぼ女性なんですからね。エミリオの復讐は、彼の望みだから観客も応援して観ますよ。でも彼が新船長になれるかどうか、には興味が持てないの。彼自身もそんなことはどうでもいいと思っているからです。そういう描写でしょ? いきりたっているのはキッドの方だけでさ。
 キッドと再度勝負させて強くなったところを見せたい、という意図はわかるけれど、エミリオの魅力はそういうところにあるのではない、ということを作家が理解していないことが嫌なのです。負けたキッドが潔くエミリオを支える側に回る、というのもいいけれど、でもキッドの魅力もそういうところにあるのではないと私は思う。だからエピソードとして不発なんですよ、そういう下手さが嫌なんです。
 アン(天彩峰里)がラッカムの実の娘ではない、という設定も空回りしていてもったいないんですよね…主人公であるエミリオとはなんら関係のない話だからです。いっそアンが孤児になった原因にエミリオ父(葵祐稀)が絡んでいた…とかにするとよかったのかも。好きな人が親の仇の息子…みたいな、ね。今、エミリオってアンにノー興味すぎてほとんど揺らがないので、ここのドラマも不発でもったいないんですよねー。ベリーショートのじゅっちゃんはとてもキュートで良き、なのですが…2番手格の娘役の役すら上手く書けないんだもん、やっぱ才能ないよ中村A。Dがバウデビューすることですし、もうショーに専念すればいいんじゃないかなー…
 ただ、こうしたもろもろを「やっぱり駄作のままなんじゃん」と思いながら観た観劇になったので、それを踏まえた上で、もう脳みそを振りきって没入して観る二度目があったら、ラストはひとり取り残され、それでも生きていかざるをえないエミリオ…みたいなせつなさにうっかり泣くぐらいは私もしたかもしれないな、とも思いました。それくらい、生徒は熱演だったと思うので…なので、リピートしている組ファンは意外に楽しく通えている演目になっているのではないか、とも思います。回る場所も曜日もだいぶ変則的な全ツでタイヘンでしょうけれどね…
 エミリオ母(水音志保)ですぐ酒場の女主人でバイトもたくさんしていたひろこが、どこでも綺麗で大活躍で嬉しかったです!

 ファンタスティック・ショーは作・演出/三木章雄。
 初演の感想はこちら、再演はこちら、三演はこちら
 アサコの退団公演をきりやんプレお披露目でやるのはまあいいとして、全ツとはいえまさおでまでやったのは「なんで? そんなにいいショーか??」とこちらも当時思いましたし、今回も「なんで? なんの所縁もないのに??」と思いました。プロローグの、白地に幅広ストライプのスーツは他のショーで出てくるたびに「ああ、ヒートンビー…」と思うくらいには印象的でしたが…娘役ちゃんのミニワンピなんてもう音校文化祭に使われてんじゃん、とか思っていたら今回新調されていてちょっと笑いました。イヤ新調自体はめでたいし、イメージを踏襲した新デザインでよかったんですけれど…
 とにかく、他になんかいい場面あったっけ? どうせいつものミキティのバラエティ・ショーだよね?? とこれまた気分アガらず席に着いたんですよ。でも…めっちゃよかった! ショーのためだけにも2回手配しておくべきだった!と後悔しました。ホントすんません…
 なんかね、別にやっぱり特になんという特徴もない、名場面があるわけでもないショーだとは思うんですよ。でも、合ってた。キキちゃんに、今の宙組の半分のこの座組に、合ってた。前回がまあフツーのレビューだったわけで、次は和物ショーなわけで、ここでやっておけてよかった、というのもある。キビキビしていてパンチが効いていてビートが派手でノリが良くて、楽しかったのです! あとは「あったあった、こんな場面!」と思い出してアガった、というのもありますが…とにかく、楽しかったです! 意外にも全ツ向きというか、初めてのお客さんが観ても楽しいものになっていたのではないかしらん…
 幕開き、板付きのキキちゃんのシルエットがもうカッコよくて、振り返ってライトで拍手!ってベタベタな流れなんだけどマジでちゃんとカッコよくて、ホント気持ち良く拍手できました。そして娘役ちゃんがここは全員ショートなのが踏襲されていて、キャー!でした。
 続くパンクガール場面は、プログラムを読んでもこれまでの設定が踏襲されていて、つまり夜中に部屋でヘッドホンで音楽聴きながらノリノリになっちゃっている娘とそれを叱る父親…というシチュエーションなので、例えばちゃぴとかは部屋着というかカジュアルな、あるいはロックファッションのお洋服だったはずです。なのにさーちゃんのお衣装は…あとで着替える暇がないということなのかもしれないけれど、これじゃ単に変なのでは? もえこってぃのロックスターは彼女の夢に出てきているんだもんね? それで夢の中で彼女自身もギンギラのお洋服になって現れた…って流れじゃないの? ハナからギンギラ着てどーする? まあここのさーちゃんがはっちゃけてて可愛かったのでいいんですけどぉ…
 続くトロピカル場面は…これまでもありましたっけ? ともあれキキちゃんにシンメで絡むじゅっちゃんとひろこが最高。6組のカップルがまあまあ若いメンツなのも最高。全ツだと特にショーで下級生は大忙しになるものですが、本公演ではできない経験がたくさんできることも確かで、こういうカップル振りが初めてだった下級生も絶対に多いはずです。とても良きでした。りっつの歌手は任せて安心。
 そしてずんもえこの「クンバンチェロ」からラテンの中詰め! ここもじゅっちゃんひろこ以下のラティーナがまあまあ下級生でみんながんばっていて最高! マンボのロケット、ベタで良き! そしてラティーノ・スペリオールなるキキちゃんに絡む男役の水色ダルマのフラガンシアはこってぃ、ましろっち、なる、のあん。みんな細かったなー、そして濃かったぞいいぞそれでこそだぞ! そして総踊りへ。
 いつの間にか抜けていたこってぃ、ましろっち、なるがジャズシンガーとしてつないで、3組のタンゴ、からのリベルタンゴで男役群舞、からのトップコンビのタンゴ、とても良き…!
 ずんちゃんとじゅっちゃんのシックな「枯葉」からのフィナーレも、どの場面もとても素敵でした。そして黒燕尾…! そうだった、この曲大好きだった、この振り以前もあったよ…!と懐かしさ、美しさに鳥肌が立ちました。パレードはエトワールをさーちゃんが務めて、娘役がまずざかざか降りてきて、次に男役、のパターン。全ツあるあるでこれも良きでした。
 芝居の酒場でバリバリ歌っていて仰天した結沙かのんに、渚ゆりも今回顔を覚えられた気がします。これくらいの人数だとまあまあ全員ちゃんと観られるのがいいですよね…!
 場つなぎというか、他のみんなの着替えタイムを捻出するためでもあると思うのですが、場面終わりにセンターなど数人が残ってリプライズというか、もう一節歌う、みたいなターンが多いショーな気がして、でもそれが絶妙にいい味を出していて、別に間奏曲とか要らないよね…と思ったりもしました。
 というわけで、わかりやすくメリハリがあり、ピックアップのパターンもまあまあいろいろあって、とても楽しく観てしまったのでした。やはり二回は観るべきだった…! 我が不明を恥じます。

 広島公演は無事に終わったようで、あとは九州ですね。旅行がてら行くお友達たちがうらやましい…まだまだ問題山積ですし、それは全国津々浦々にある程度は報道されているでしょうから客足に響いたりもしているのかもしれませんが、まずは事故なく、元気に、大楽までがんばっていただきたいです。そしてキキちゃんの退団公演がいいものでありますよう、祈っています…!






 

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