集英社ヤングユーコミックス。
父親とのふたり暮らしに耐えかねた雅樹は、家出して祖父の住む洋館を訪れる。その庭には亡き母にうりふたつの少女がいて…親子四代にわたる愛と憎しみの年代記。
ジュネ系の同人誌からプロメジャー誌デビューした作家ですよね。アンソロジー同人誌持ってます。すみません(と誰にともなく謝る)。
冒頭の、アラブだかどこだかのことわざ
「明日できる事は今日するな」
を知っていたので笑ってしまいました。私自身は
「今日できることなら明日の分もしちゃえ」
ってタイプなんですが。
一番評価しているのが、信夫さんやダイゴローの存在です。
つまり、同性愛者は何もはかなげな美少年ややんちゃ少年ばかりじゃなくて、中年親父もマッチョマンもいるんだぜ、ってことをきちんと描いてくれた点です。
しかも彼らのラブシーン(この文脈でこの言葉を使うとすごーくエッチでイヤだな)がまた色っぽい。そこいらのへなちょこボーイズ・ラブ漫画の描き手と読み手、反省するように。卑屈と偽善と興味本位と的外れのあこがれとで同性愛を扱うのは本当に失礼なことなんだからね。ダイゴローの実家での肩身の狭さが現実です。後にダーリンとなろうとも、初対面ではきっぱり
「安心しろお前は好みじゃない」
というダイゴローこそが本物です。
人は本当に、愛し方を教わらないと覚えられないのだけれど(竹宮恵子『風と木の詩』のテーマですな)、不幸にして子供の頃に教わらなかったとしても、周囲の人間に恵まれれば、成長過程でも、大人になってからでも学べます。春佳はまっすぐに育ちました。雅樹もまた春佳を育て、巣立たせたことで(瑞穂やダイゴローや、数々の女たちの助けを得ながら、ですが)真に学んだと言えるでしょう。
『天国の樹』でシリーズが再開したとき、雅樹がすっかり父親そっくりになっていたのがおかしかったなあ。
たくさん漫画を読んでいるとよくあることですが、この三人の不思議な家庭像は渡辺多恵子『ファミリー!』のレイフの家を思い起こさせますね。ひところジェイが好きでしたよ。
九条さんのエピソードなんかもジャニスを思い起こさせます。剽窃だとかオマージュかだとか言いたいのではなく、くり返し語られるモチーフというものがあるということです。佐保子さんがいる天国の花や小鳥と聞くと萩尾望都の『はるかな国の花や小鳥』を思い出してしまうワタシです。
漫画としてはちょっとモノローグが多いというか、ネームで全部言い過ぎちゃうところがあるのはもったいないですね。でもこの作家の感性が好きです。ラブコメとかすっとんだギャグとかも好きでうまいんだけど、本当はせつなくてドロドロの暗い話が好みなんだろうというところが私と同じです(笑)。
ただひとつ納得いかないのは、『花盛りの庭』のエンディングかな。じいさんが自殺しようと屋敷に火を放とうと自由だけど、信夫さんを道連れにしていい理由はないと思うぞ。じいさんが正しくないと、雅樹はじいさんを恨んでもよくなるわけで、“物語”としては美しくまとまらなくなるはずなんですが。まとまってしまっているのは何故なんでしょう。納得いかないのって私だけ? (2001.3.8)
父親とのふたり暮らしに耐えかねた雅樹は、家出して祖父の住む洋館を訪れる。その庭には亡き母にうりふたつの少女がいて…親子四代にわたる愛と憎しみの年代記。
ジュネ系の同人誌からプロメジャー誌デビューした作家ですよね。アンソロジー同人誌持ってます。すみません(と誰にともなく謝る)。
冒頭の、アラブだかどこだかのことわざ
「明日できる事は今日するな」
を知っていたので笑ってしまいました。私自身は
「今日できることなら明日の分もしちゃえ」
ってタイプなんですが。
一番評価しているのが、信夫さんやダイゴローの存在です。
つまり、同性愛者は何もはかなげな美少年ややんちゃ少年ばかりじゃなくて、中年親父もマッチョマンもいるんだぜ、ってことをきちんと描いてくれた点です。
しかも彼らのラブシーン(この文脈でこの言葉を使うとすごーくエッチでイヤだな)がまた色っぽい。そこいらのへなちょこボーイズ・ラブ漫画の描き手と読み手、反省するように。卑屈と偽善と興味本位と的外れのあこがれとで同性愛を扱うのは本当に失礼なことなんだからね。ダイゴローの実家での肩身の狭さが現実です。後にダーリンとなろうとも、初対面ではきっぱり
「安心しろお前は好みじゃない」
というダイゴローこそが本物です。
人は本当に、愛し方を教わらないと覚えられないのだけれど(竹宮恵子『風と木の詩』のテーマですな)、不幸にして子供の頃に教わらなかったとしても、周囲の人間に恵まれれば、成長過程でも、大人になってからでも学べます。春佳はまっすぐに育ちました。雅樹もまた春佳を育て、巣立たせたことで(瑞穂やダイゴローや、数々の女たちの助けを得ながら、ですが)真に学んだと言えるでしょう。
『天国の樹』でシリーズが再開したとき、雅樹がすっかり父親そっくりになっていたのがおかしかったなあ。
たくさん漫画を読んでいるとよくあることですが、この三人の不思議な家庭像は渡辺多恵子『ファミリー!』のレイフの家を思い起こさせますね。ひところジェイが好きでしたよ。
九条さんのエピソードなんかもジャニスを思い起こさせます。剽窃だとかオマージュかだとか言いたいのではなく、くり返し語られるモチーフというものがあるということです。佐保子さんがいる天国の花や小鳥と聞くと萩尾望都の『はるかな国の花や小鳥』を思い出してしまうワタシです。
漫画としてはちょっとモノローグが多いというか、ネームで全部言い過ぎちゃうところがあるのはもったいないですね。でもこの作家の感性が好きです。ラブコメとかすっとんだギャグとかも好きでうまいんだけど、本当はせつなくてドロドロの暗い話が好みなんだろうというところが私と同じです(笑)。
ただひとつ納得いかないのは、『花盛りの庭』のエンディングかな。じいさんが自殺しようと屋敷に火を放とうと自由だけど、信夫さんを道連れにしていい理由はないと思うぞ。じいさんが正しくないと、雅樹はじいさんを恨んでもよくなるわけで、“物語”としては美しくまとまらなくなるはずなんですが。まとまってしまっているのは何故なんでしょう。納得いかないのって私だけ? (2001.3.8)
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