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「江戸繁昌記 三編」を読む 68

(散歩道のヤナギハナガサ)

散歩道に雑草化して、よく見る花なのだが、今まで名前を知らなかった。今日、写真に撮って来て改めて調べると、意外に早く名前が知れた。単なる雑草が、名前を知ると仲間になれる。これは人間関係も同じだと思う。

島田市の同報無線で、警察署からとして、昨日夕方、警察署員を名乗る、アポ電が島田市内に集中してあった。詐欺に掛からないように、十分注意するようにという内容であった。

一日、家にいると色々な電話が掛かってくる。身に覚えのない電話には、自分からは名乗らない。詐欺電話だけでなく、あらゆる勧誘の電話には、「用はありません」「興味はありません」と、出来るだけそっけなく言い、向うの言葉を待たずに電話を切ることにし、励行している。たとえ真面目な勧誘であっても、そんなことに係わっている時間が惜しい。こういう時代だから、見当違いで、もし失礼があっても、許されるはずだと、女房にも同じ対応を勧めている。

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「江戸繁昌記 三編」の解読を続ける。「寄(よせ)」の続き。

一閃、迹(あと)を晦(くら)ます。次に衆卉を写す。或るは梅、或るは菊、また牡丹、また芙蓉、碧花、瓣(はなびら)を析(わけ)て、露に(しべ)看々(みるみる)破れ、青楓、影を改めて、霜葉漸く紅なり。破るゝ時、改むる処、観る者、眼眩(めくるめ)き、神(しん、=こころ)奪わる。一口、妙と叫ぶ。聴き得たり、祭礼曲鼓譟する処、双霊柱(トリイ)涌き、一殿宇湧く。紅白幟(のぼり)を竪て、大小燈を張る。賽人徃回、銭を抛(なげうち)て、福を祈る。既にして鼓声、漸く歇(や)み、人影頓(とみ)に減ず。
※ 一閃(いっせん)- ぴかっと光ること。ひとひらめき。
※ 衆卉(しゅうそう)- たくさんの草々。
※ 碧花(へきか)- 緑の葉と花。
※ 蘂(しべ)- 蕊。雄しべと雌しべ。
※ 青楓(あおかえで)- 緑の楓の葉。
※ 曲鼓(きょくこ)- 身ぶりや技巧に、種々の変化をもたせて打つ鼓。曲打ちの鼓。
※ 殿宇(でんう)- 御殿。殿堂。
※ 賽人(さいじん)- 神社・仏閣にお参りする人。
※ 徃回(おうかい)- ゆきめぐり。


夜、蓋し深し。遠々聞き得たり、叱咜(ワキヨレ/\)、人を避くる声、狐群排行徐々歩を進む。蒲席を荷い、炬火を啣(くわ)え、木を担(にな)い、竿を持す。俗談に所謂(いわゆる)狐の婚礼、これなり。纔(わずか)に双柱(鳥居)を出れば、狐、皆な化して、人と為る。席(蒲席)は挟筥(ハサミバコ)に変じ、火は提灯に変ず。竿は鎗に化し、木は輿に化す。奇々怪々、変妙に機神なり。燈滅し、狐殲(せん)す。
※ 叱咜(しった)- 大声をあげてしかること。
※ 排行(はいこう)- 列をつくってならぶこと。
※ 徐々(じょじょ)- ゆっくり進行したり変化したりするさま。
※ 蒲席(ほせき)- 蒲(がま)の葉で編んだむしろ。
※ 炬火(きょか)- たいまつ。
※ 機神(きしん)- いつわりの神。
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