平成18年に60歳を迎える。六十と縦に書くと傘に鍋蓋(亠)を載せた形である。で、「かさぶた(六十)日録」
かさぶた日録
「江戸繁昌記 三編」を読む 66
庭の隅に、アマリリスの花が咲いた。畑に真っ赤なアマリリスが毎年咲くことは承知していたが、この花は今まで知らなかった。女房がご近所から頂いて、植えて置いたものらしい。
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「江戸繁昌記 三編」の解読を続ける。「寄(よせ)」の続き。
一楼数楹(はしら)、奥を当て座を設く。方一筵、高さを若干尺、隅に火桶を置き、茶瓶に湯を畜(たくわ)う。夜は則ち両方に燭を設け、客、席を争いて地を占む。一席は則ち、数月寓都の村客、一席は則ち、今年参藩(キンバン)の士類、五、六頸(くび)を交じえ、七、八臂(ひじ)を接す。新道の外妾、代地の隠居、伴(番)頭や手代や、男女雑居し、老少、位を同じうす。
※ 方一筵(ほういちえん)- 筵一枚分の四方。
※ 寓都(ぐうと)- 都に宿ること。
※ 外妾(がいしょう)- 自宅以外に住まわせているめかけ。
※ 代地(だいち)- 江戸幕府が江戸市中において強制的に収用した土地の代替地として市中に与えた土地のこと。
落語家一人上る。納頭、客を拝す。篦舗の剃出、儒門塾生、これを前座と謂う。旋々、湯を嘗(なめ)て舌本を滑(なめら)かにし、帕(テヌグイ)以って喙(くち)を拭(ぬぐ)う。(折帕、大いさ拳の如し)拭い一拭い。左右、燭を剪(き)り、咳(せきばらい)一咳。縦横、説き起こす手、必ず扇子を弄(ろう)す。忽(たちま)ち笑い、忽ち泣き、或るは歌い、或るは酔い、手を使い、目を使い、膝を踦(き)し、腰を扭(ねじ)り、女様、態を成し、傖語、鄙(ひな)を為す。仮声(こわいろ)倡(しょう、=遊女)を写し、虚怪、鬼を形す。世態、極めざるは莫(な)く、人情尽くさざるは莫し。落語の処、人をして絶倒捧腹に堪えざらしむ。
※ 納頭 -(意味不明)文脈からすると、「低頭して、客を拝す」という所だが。
※ 篦舗(へいほ)- 髪結い。
※ 剃出(すりだし)- 髪結いの弟子の称。
※ 儒門(じゅもん)- 儒学を教える所。
※ 舌本(ぜっぽん)- 舌の根。
※ 折帕(せつはく)- 畳んだ手ぬぐい。(手ぬぐいが落語では色々な役割をする)
※ 燭を剪る(しょくをきる)- 蠟燭の芯を切って明るくする。蠟燭は長くつけていると、芯に燃えかすがついて暗くなる。それを切り取って再び明るくする。
※ 膝を踦す(ひざをきす)- 片膝を立てる。
※ 傖語(そうご)- 田舎の方言。
※ 虚怪(きょかい)- にせものの妖怪。
※ 世態(せいたい)- 世の中のありさま。世間の状態。世情。
※ 絶倒捧腹(ぜっとうほうふく)- 抱腹絶倒。腹をかかえてひっくり返るほど大笑いすること。
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