河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2735- ハイドン62番、ベートーヴェン32番、シューベルト21番、シュテファン・ヴラダー、ピアノリサイタル、2019.9.21

2019-09-21 23:03:28 | リサイタル

2019年9月21日(土) 7pm トリフォニー

ハイドン ピアノ・ソナタ第62番変ホ長調Hob.XVI52  8-7-5

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第32番ハ短調Op.111  9-16

Int

シューベルト ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調D960  24-9-3-7

(encore)
リスト コンソレーション第3番変ニ長調S.172-3  5


ピアノ、シュテファン・ヴラダー



それぞれの作曲家のピアノ曲のラスト作品を並べた。こういう聴きかたにはあまり慣れていない。余計な観念が入り込みそう、という無意識のこばみがあるのかもしれない。そういうことがいつの間にかワイプアウトされて極上作品と演奏に、最終的には、浸りつくしました。

ヴラダーの雰囲気はストイックというほどではないが、それと端正な趣きがブレンドした所作ですかね。人は何を考えているのかわからないものだ、というところもあるかな。


ハイドンの初楽章は運命終楽章冒頭のような音型で動く。肌触りの良いもので、ちょっとしたねじれも感じるのは、やっぱり、形式を越えてくるような世界を垣間見れるからか。新たな形への挑戦というよりも、それまでの蓄積物のインテグラルな感じ。
アダージョの中間楽章は聴いているうちに不思議とベトソナ30番のスケルツォが頭の中を駆け巡る。とっても濃い作品と知る。

ベトソナ。いわゆる、中間楽章が無い状態で冒頭のカオスから最後のクララティに至る道筋を追う。今は32番の最初の和音はあまり好みではない。それはそれとしてヴラダーの音を聴こう。
道筋、ナチュラルな位相の転換。極めて明快なタッチでベートーヴェンの線が描かれていき、32番が晴れていく。お仕舞はむしろリアリティな響き。消えゆく現世ではないのだね、ヴラダーさん。
そして、物凄く長い空白。この緊張感。なんだかいろんなものがあった。思考が音になって作曲家の頭の中が現実化した。


後半のシューベルト。毎度のセリフ、で、シューベルトの場合、頭の二つの楽章で言いたいことをほぼ言い尽くしている。今日は2,3,4楽章連続演奏。初楽章と第2楽章のムードがよく似ている。濃い、濃い。垂直タッチがきれいで浮遊していくようだ。このように美しい演奏を聴くと未完成シンフォニーの事もよくわかるものだ。
どこまでも長い第1楽章、澱みのない世界はリタルダンド的なものを排したプレイで、しなって崩れることがない。この張り詰めた音とフレーズ。神経の先々まで血が通っている。
いつまでも聴いていたいシューベルトでしたね。
素敵な内容、ありがとうございました。
おわり


 


2734- キプロスの女王ロザムンデ、讃歌、マクリーシュ、栗友会、新日フィル、2019.9.21

2019-09-21 22:43:37 | コンサート

2019年9月21日(土) 2pm トリフォニー

シューベルト 劇音楽「キプロスの女王ロザムンデ」D797 より
序曲  8
第3幕への間奏曲  8
バレエ音楽第1番  8
バレエ音楽第2番  6

Int

メンデルスゾーン 交響曲第2番変ロ長調Op.52讃歌   60
第1部 シンフォニア  8-7-7
第2部 +8+3+2+4-4+4+5+3+5

ソプラノ、馬原裕子
ソプラノ、相田麻純(Ms)
テノール、清水徹太郎
合唱、栗友会合唱団

ポール・マクリーシュ 指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団


マクリーシュと言えば都響を振った公演が忘れがたい。今度は新日フィルをこれまた素晴らしいプログラムで振ってくれた。

シューベルトのロザムンデ。10曲中4曲をピックアップして演奏。思いの外、規模が大きく聴きごたえ満点でしたね。
素晴らしく柔軟なオーケストラ・サウンドが魅力的。ソロ、アンサンブル、合奏、どれをとっても陰影がそこはかとなく同じようでもあり、うつろい、移り行きの呼吸が生き物を感じさせてくれる。シームレスで曲線が揺れ動きながら進むさまは極美であり、どこまでもいつまでも続いてほしい、終わってほしくない。シューベルトが今更ながらに息を吹き返す。指揮者とオーケストラの一体感、作品愛、お見事でした。なんだか全部聴きたくなった。
10型対向。

讃歌。シンフォニアと第2部で60分の大曲。
馴染みのあるトロンボーン節が割とさっぱりと速めに始まる。コクのあるシンフォニア3曲、実によい流れ。何かモノローグ風味で静謐。聴き手の心をまずは鎮めてくれる。
第2部に入り、合唱の線が見事に決まり美しい。バランスも良いもの。そしてなによりもオーケストラと同じく表情の味わいが深い。リブレットを見ながら聴き入る。この日のテクストはマクリーシュ改訂による英語版。そのせいかどうか、響きがまろやかさを醸し出している。極上の演奏によって作品を改めて知る。愉悦の極みですな。
これら合唱、そして、上に抜けるような独唱共々、ウェットな清涼感、メンデルスゾーン節、もはや、堪能の言葉しかない。
極美演奏会ありがとうございました。メンデルスゾーンの讃歌はもっともっと演奏されて然るべきものですね。お陰様で作品の良さが心に染み渡りました。繰り返しになりますが、シューベルトのキプロス女王ロザムンデはあまりの美演に丸ごと聴きたくなりました。
12型対向Cbは右左2本ずつ。

美しい演奏、ありがとうございました。
おわり