2019年9月26日(木) 7pm サントリー
トゥール ルーツを求めて ~シベリウスをたたえて~ (1990) 5
ニルセン フルート協奏曲 12+7
フルート、エマニュエル・パユ
(encore)
ヴァレーズ 比重21.5 4
Int
シベリウス 交響曲第6番ニ短調Op.104 9-5-4-10
シベリウス 交響曲第7番ハ長調Op.105 -19
パーヴォ・ヤルヴィ 指揮 NHK交響楽団
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空前絶後の激演といえよう。
宇宙の鳴り。シベリウス7番。コーダに至って鬼気迫る鬼形相と化したパーヴォ、渾身の圧巻フィニッシュ。N響の極上精度で奏でられたシベリウス、もはや、ウルトラハイパフォーマンス、草木もなぎ倒す圧巻のマンモス演奏でした。
中間部練習番号L(下記4)からの圧倒的なブラスセクション怒涛の咆哮。マンモスコスモスユニバース、何と言っていいかわからない。強烈な響きの世界に我を忘れる。そしてその火照りが冷める間もなく弦の歌が続く。強烈な弦のしゃくりあげスウィング(5)、この弦の歌に悶絶失神。驚異的なハーモニーがさらに続いていく(5.1)。あまりの美しさにもう一度我を忘れる。
このあたり、白眉白眉の大絶景演奏でした。アンビリーバブルパフォーマンス。
トロンボーン・ソロ1回目(60小節目から)はソロをあまり浮かび上がらせずアンサンブル的進行、直後のティンパニは強弱記号が無い中、強烈に鳴らす。このあとのウィンズがまた絶妙(1.3)。
2回目のソロのあとのティンパニは譜面の指示通りpからデクレシェンド。1回目との対比がわかりやすいし、クライマックスに向かっているんだなと気づかせてくれる。
まあ、誉めだすときりが無い。明るくぶ厚く透明で、切れば飛び散る充満エネルギー。切り尽したわけですから。全部満喫、もう、ブラボー以外無い。筆舌に尽くし難い絶対演奏。
シベリウス7番私的分解図
演奏は約20分。交響曲とは言いながら自由な曲想で進む。主にテンポや雰囲気が変わるところを羅列してみる。
1. Adagio ティンパニの弱音pによる導入。
1.1 (22小節目) mezza voce弦楽器による流れるようなメロディーライン。
1.2 (60小節目)トロンボーン・ソロ。
1.3 (71小節目 練習番号D)ティンパニの打撃。
2. (練習番号Fの前後)Un pochett meno adagio ~poco affrettテンポ徐々にアップ。
3. (練習番号J)Vivacissimoスケルツォ風。
4. (練習番号L) Adagioトロボーンのソロに導かれ金管の彷徨。
5. (練習番号Nから13小節目)Allegro molto moderato 流れる弦と木管。
5.1 (練習番号T)弦の驚異的なハーモニー。素晴らしい。
6. Vivace さらなる加速。
7. Presto シベリウスのギザギザ音。
8. Adagio トロンボーン再帰。
8.1 (練習番号Y)ティンパニ弱音炸裂
9. (練習番号Z) Largamento全金管炸裂。
10. Affettuoso 最後の準備。
11. Tempo I
(1)抑え気味のティンパニに続いて2分の3拍子で弦が先を急ぐように上昇する。
(1.1)すべるような長い長い弦楽器主体の柔らかなフレーズ。飛行機から見る眼下の流れる雲。魔法のじゅうたん。そして曲想は一気に盛り上がり最初のクライマックスをむかえる。
(1.2)圧倒的なトロンボーン・ソロ。
(1.3)しかし真のクライマックスはこのあとにやってくる。トロボーンを引き継いだホルンがシベリウス的イディオムのショートフレーズでこのメロディーラインを切り上げた直後だ。強烈なティンパニの一撃。スコアに強弱記号はない。それに続く木管の鬼気迫るユニゾン。これこそが真のクライマックス。
(2)テンポは加速を2度重ね、
(3)スケルツォ風のヴィヴァーチェシモにはいる。
(4)トロンボーン・ソロに導かれ、大伽藍の圧倒的な金管の彷徨が始まる。まるで宇宙が共鳴しているようだ。そして再度スケルツォ風にもどりすぐに、
(5)弦楽器と木管による流れるような音楽が始まる。なんと素晴らしい弦楽器のハーモニー。
進むにしたがい曲は少しずつ刻みが短くなり始める。中低弦の刻みをベースにヴァイオリンの流れるハーモニー。
(5.1)ここで我々はまたしても忘れがたい弦の響きに遭遇するのであった。
(6)音楽はさらなる加速をしながら、
(7)最後のプレストに突入する。シベリウス特有の執拗な弦楽器の刻みの中、
(8)アダージョで例のトロンボーン・ソロが再帰する。1.2と同じ進行だが、
(8.1)このあとの真のクライマックスの再帰。つまりティンパニの強打ならぬ弱音叩き。スコアではここはピアノからデクレシェンドするトレモロと書いてある。
(9)音楽は急速にブラスの響きが急降下し、ウルトラ超フォルテッシッシッシモで、八分音符をかなでる。擬音で言うと、グワッ、という風に聴こえる。
(10)弦が長い音をクレシェンド、デクレシェンドしながら最後の、たった5小節だが、内容てんこ盛りのクライマックスを導く。
(11)弦がシンコペーションを繰り返すなか、ブラスセクションがメゾピアノから一つの音をクレシェンドしはじめる。その最後の炸裂音、彷徨のなか、全ての弦がユニゾンで二つの音、全音符+2分音符、2分音符、をブラッシングしながら終わる。
これも是非。
1251- シベリウス交響曲第7番 演奏は曲を超えた。異形の絶演!ムラヴィンスキー&レニングラード・フィル
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ところでこの7番は最近の流行かどうか6番との連続演奏で行われた。といっても実際は6番の1,2,3楽章は一服し、終楽章済んで一呼吸して7番のコトリとしたティンパニで入っていく。
パーヴォのシベリウスは上記の7番の位相と同モード。音圧が鮮やかに多層化していて何層もありそうだ。正確にこなすオーケストラのべらぼうなスキルにはアングリと口を開けてしまう。こういったあたりの高技術での表現が可能なのがこのオケ。パーヴォの指示だろうし、そのままプレイできてしまう集団にひれ伏すしかないなあ。それと細やかなパウゼ、フレーズの変わり目であまり長く取ることは無いが、響きを確かめ次の音をイメージする、この間が絶妙、音楽が生きているという実感です。
3,4楽章は緩急自在で蛇腹のように速度が変わり音楽が連れてうねりとなる。ここの後半楽章の微熱からの加熱、激しい6番でした。そして印象的な静へ収束し7番に繋がっていく。
6番の第2楽章冒頭のティンパニのタタンという開始。7番冒頭で思い出しますね。
寂寥感、熱、凝縮された精密ハイテンションパフォーマンス、連続する演奏に納得。
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前半最初はトゥールの作品。5分あまりの曲。
激から静に至るもので、冒頭からブラスの短い連続するクレシェンドが激しく進行、コントラバスは大海のうねりがシベリウス的イディオムで流れる。つまるところ、インストゥルメントの束ではシベリウス的で、総体としてみればトゥールの鳴りとなっているのだろう。輝かしいN響サウンドが実に香ばしい。作品としてはもう少し長く楽しみたい作品。A little bit too short
前半2曲目はパユを迎えてのニルセン。
世の中にこんな面白い協奏曲なかなか無いだろうと思う。フルートのカデンツァにアカンパニする楽器が最初にティンパニ、そして次々と楽器が変わって行き、セクションがフルートに順番に絡む。実にユニーク。いかにもニルセンらしいという話しでもあるのかな。
パユのデカい自信満々の吹きが息つく間も無く次から次へと。極めて美しいニルセン。それに伴奏オケの精度が高くて解像度が高く、ソロとの分離がよくわかる。双方の動きが手に取るようにわかる。驚くほど透明ですね。
お仕舞はトロンボーンが奇妙に萎れるように終わる、最後までユニークなニルセン。堪能しました。
ということで全4曲、出来栄え麗しく、満腹満足感、大100パーセント。
ありがとうございました。
おわり