本書出版年度の『史学雑誌 回顧と展望』は、「の関連史料を博捜しながら、その生業に特質を見出し、権門や地域社会との関係を明らかにしている」(「日本(中世)」“三 社会経済史”、’穢れと社会集団”項、三枝暁子執筆、93頁)と評する。評文が短いのは当然として、同書が分析視角としても手段としても使っていない「権門」「地域社会」という概念や用語を持ち出してそれを評価の基準にするというのは如何なものか。それ自体の評価としては意味はないと思う。これでは実質上なにも評していないに等しいからだ。学術的な批判(つまり意義の評価)なら、議論が推測で終わる場合が見られること、証明不可能な仮定の上にさらに仮定を重ねていること(第二部の「豊臣秀吉」)、また索引がないこと(学術書としてこれは致命的な欠陥だろう)など、いくつかあっただろうに。
(山川出版社 2012年4月)
(山川出版社 2012年4月)