恐山あれこれ日記

院代(住職代理)が書いてます。

番外:アンタは本気か?

2020年04月08日 | 日記
 7日の記者会見で、首相は国民に他人との接触を7~8割減らすことを「要請」した。この首相と政権の愚昧さは、あの一言でわかる。

 それだけの接触減らしは、街頭にほとんど人がいない、イタリアのロックダウンに匹敵する措置でしかできない。それは要するに、仕事をするなということである。そんなこととが、個人の意志(「自粛」)でできるわけがない。

 生活必需品供給と社会運営に不可欠な機能・設備に関するものを除く、全業種・全企業に操業・営業を停止させ、公共交通機関を大幅に減便することが不可欠である。それは「要請」することではなくて、「命令」することである。

 それを行うためには、停止から生じる損失を全面的に国家が補償しなければならない。そうでなければ、誰もこんな苦境を承服できるはずがない。

「7~8割」が冗談ではなく本気なら、直ちに法律を改正するか新たに立法して、強制力を持ったロックダウンに踏み切るのが政治家の責任である(今となっては全国規模で必要だろう)。それは、当然、首相職を賭けた政治的決断であるべきなのだ。

 現首相の愚かな記者会見は、人の命と経済の損得を天秤にかけて、まともな決断もできずに「玉虫色」の内容を羅列しただけである。

 相当数の人の命を犠牲にして、そこそこの経済的損失にとどめるか、あるいは甚大な経済的損失を覚悟して、できるかぎり人命を守るか。そのどちらかである。どちらにしても、政治的責任は免れず、辞任の覚悟は当然だ。

 その覚悟がまるでないから、あんな生ぬるい言葉しか出てこないのだ。昨日の記者会見をどれだけの人間が見ていたと思うのだ。前代未聞の厳しい局面に向けて、人びとの決意を促し、勇気を鼓舞する言葉を発することができないのは、最後に自分が悪評に塗れて辞任する覚悟を持たないからだろう。

 危機において覚悟の無い指導者を持つのは、我々の最大の不幸の一つである。

 私の言うことのほうが極端で愚かなのであろうか。
 
 しかし、自分の身の上で考えれば、他人との接触を8割断てば、同居家族しか残らない。それは、いま喧伝されている「おうちにいよう」ということだろう。

 私が言いたいのは、「おうちにいよう」とお願いするのではなく、「おうちから出るな」と命令しないかぎり、8割は無理だということだ。

「おうちから出るな」と政治家が本気で言うなら、「首を賭けろ」と私は思う。