goo blog サービス終了のお知らせ 

恐山あれこれ日記

院代(住職代理)が書いてます。

眉毛問答

2017年01月10日 | 日記
 遅ればせながら、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。

 年頭に当たって、思いつき禅問答シリーズ。

 禅の語録には、仏法を誹謗すると眉毛が落ちてしまう、という文句が時々出てきます。

 ある禅師が、夏の修行期間の最終日に修行僧に向かって説法をしました。

「この修行期間中、君たちのために説法してきたが、私の眉毛は落ちなかったかな?」

 ある修行僧が言いました。

「泥棒も実は内心ビクビクしていますからね」

 別の修行僧がいいました。

「いま、生えてきていますよ」

 もう一人が言いました。

「ここは通しませんよ」

 私はこの問答を次のように解釈します。

 禅師が「眉毛が落ちなかったか」と言うのは、言語化できない悟りの境地を言語化するのは間違い(仏法の誹謗)だと思うか、という問いです。

 最初の修行僧の言葉は、「悟り」そのものを言葉にすることは不可能だと自覚しつつも、敢えて言語化し続けるべきだという意味でしょう。

 次の修行僧は、言語化しない限り、仏法も悟りも、それが存在することさえわからない(生えてくる)と言っているのです。

 三番目の修行僧は厳しい。確かに言わなければならないが、言ったとしてもそれが他人に通じるかはどうかは、別問題だと言っているわけです。

 ならば、語る内容の妥当性は、語る当人が何を狙って、どんな方法で語るかを吟味してから、評価されるべきでしょう。