恐山あれこれ日記

院代(住職代理)が書いてます。

「幸福」問答

2011年06月10日 | インポート

その1

「幸福感がないんですが、どうしたらよいでしょうか?」

「簡単な方法があります。『あの人たちと比べれば、自分なんか幸せなほうだ』と思うことです」

「なるほど。実に最悪の方法ですな」

その2

「幸せな時は短く、不幸な時は長い。なぜですか?」

「逆なら話になりませんよ。幸せな時間が長くなれば、誰もそれを幸せだとは思わないし、不幸が短ければ、それは娯楽と変わらんでしょう」

その3

「幸せになりたいんです。どうしたらなれるか、教えて下さい」

「それは金儲けの仕方を他人に質問するのと同じです。他人が教える方法は、すべて役に立ちません」

「そんなあ・・・」

「ひとつ、考えがあります。不幸にも、そして幸福にも耐え切る手段を身につけることです」

その4

「幸せって何ですかね?」

「答えるのは無意味でしょう。むしろ、どうして人は幸と不幸を分けたがるのか考えたほうがよいと思います」

「どうしてですか?」

「生まれてきた理由がわからないからでしょう」

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