恐山あれこれ日記

院代(住職代理)が書いてます。

開山しました。

2011年05月10日 | インポート

F1000034  5月5日、今年の恐山開山から5日目、ある参拝者グループに申し上げた挨拶です。

 皆様、今年もお参りお疲れ様でござました。まことにありがとうございました。例年ですと、今年もおかげさまで無事開山の日を迎えることができました、と冒頭ご挨拶させていただくところでございますが、私ども恐山一同はいま、とてもそうは申し上げることができずにおります。

 実を申しますと、3月の大震災の被災地は、ほぼ全域が恐山に熱心な信心をいただいている地方になります。

 多くの犠牲者、行方不明の方々、家と仕事を一瞬にして失った皆さん。それを思い、これを考えると、たとえ肉親を偲び、供養する気持ちがどれほど切実でも、未だその地での追悼もままならず、この恐山までお参りいただくまでには、まだまだ時間がかかるだろうと思います。

 開山に際し、私どもは犠牲となられた方々にお位牌を捧げ、1日より毎朝、被災地の「早期復興・万難消滅」を祈願し、「東日本大震災殉難歿(没)故者諸精霊」のご供養を行っております。

 しかしながら、個々のご遺族や被災の方々のお気持ちに添えるように祈願・供養をすることは、今後長い歳月を要するものと存じております。

 それでも、すでにこの5日間に、家族は無事だったものの、漁船と漁具の一切を失った漁師のご夫婦や、家族を亡くされた女性が一人で、お参りにみえられました。

 また、関東の寺のご住職が、「私の寺でお勤めするのはともかくとして、やはり恐山でご供養するのが一番だろうと思って」とおっしゃって、塔婆供養をなさっていかれました。

 このような方々の想いを今後どのように受けとめていくのか、私どももこの先長く、試行錯誤を続けていくことになるでしょう。

 どうか皆様におかれましても、この後本堂でお勤めしますそれぞれのお家のご供養の際には、心のどこかで、震災犠牲者の御霊に思いをはせてご焼香いただければ、当恐山といたしまして、まことに有り難く存ずる次第でございます。