恐山あれこれ日記

院代(住職代理)が書いてます。

彼女のわかり方

2009年05月20日 | インポート

 元「スケ番」、その後紆余曲折の果て、この春から看護師として出発した女の子との会話。

彼女「方丈さんさぁ、『普通』って大変なんだねえ。私、やっとわかってきたよ」

私「そう。そう思う?」

「朝チャント起きて、チャント仕事に行って、帰ってきて寝る。それでチャント三度ご飯食べる。大変だよ。みんな偉いよねえ。私がムチャしてたころ、他の人はみんなこんな大変なことしてたんだね」

「でも、君もあの頃、やらずにはいられなくて、一生懸命『不良』してたんだろ? 楽しいばかりでやっていたわけではあるまいに」

「うん。それはそうなんだけどさあ・・・・。でも、やっぱり、偉いよ」

「身にしみてわかった?」

「ホント、身にしみた。それがわかるのに、こんなに回り道して、ばかみたい。やんなっちゃう」

「でもね、君みたいに『普通』の意味がわかる人はそんなにいないさ。とても大事なことだと思うよ」

「またあ、変な慰め方するう」

「違う。共感してるの」

 こういう会話ができるとき、坊さんやっていてよかったなと、ちょっと思うわけです。

追記:次回「仏教・私流」は6月16日(火)午後6時半より、東京赤坂・豊川稲荷別院にて行います。