恐山あれこれ日記

院代(住職代理)が書いてます。

言葉の反射神経

2007年03月24日 | インポート

 しばらく前、驚くような電話がかかってきました。とある民放が放送予定のバラエティ特番に、コメンテーターで出ないかというのです。始めは冗談かと思ったのですが、まじめな話なので、二度びっくり。相手も、ダメでモトモト、という雰囲気でしたので、丁重にお断りしました。

 相手は「バラエティなんかはダメでしょうかね」と言っていましたが、私は別にバラエティだからダメだというわけでもないのです。またテレビは全部お断り、というのでもありません。ただ、私にはテレビという媒体が基本的に合わないのだと思います。

 数少ないテレビ出演の経験から言って、テレビで何か言うには、思考というよりも、むしろ反射神経が必要でしょう。考えてものを言うには、沈黙、すなわち「間」が必要ですが、テレビ的には、この「間」は決定的にまずいでしょう。テレビに必要なのはテンポのよさであり、これを掛け合いでやるには、尋常でない言葉の運動神経のよさが求められると思います。バラエティなら尚更のこと、思考回路をショートカットするくらいのワザが要るでしょう。

 これをやれるのは、芸人として訓練されているか、もともと豊富な知識の蓄えがあって、即座に頭の引き出しから需要のあるコメントを出せるくらいの、力量あるインテリでしょう。私には、まず無理な話で、断るのが無難な選択です。

 もう一つ、私の抱える問題は、どうみても反射神経で対応することは無理です。テレビでいくら反射神経を鍛えてもらっても、当方にはさほど得るところはなく、人生残り時間を考えると、そろそろ時を惜しむべき頃合になりました。

 ところで、この話を弟子の一人にしたら、彼いわく、「やっぱり。師匠はテレビ向きですから」 なんだそれ?