くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「無菌病棟より愛をこめて」加納朋子

2012-03-28 21:40:33 | エッセイ・ルポルタージュ
 仙台の書店にて加納さんの新刊を発見! は、嬉しいのですが、なんと白血病を宣告されて入院されていたのだとか……。この闘病記「無菌病棟より愛をこめて」(文藝春秋)、読んでいていろいろいろいろ考えさせられました。
 何度か書いていますが、わたしの友人みえっちさんは悪性リンパ腫で亡くなています。彼女闘病の様子が、この本を読んでいると思い出されてならないのですよ。
 治療中の食べ物のこととか、髪の毛のこと、身体のむくみ、口内炎、発症の様子もよく似ています。わたしたちは手紙のやりとりをしていたのですが、治療の辛さがよく書いてありました。
 もっとお見舞いに行けばよかった。今になってそう思うのも申し訳ない話なんですが。
 加納さんがお友達と会うことでかなり励まされるのが分かるのです。みえっちさんもブログに、わたしと会った日のことを「ともたちパワー」と書いてくれました。残念ながら亡くなった後しばらくしてブログも閉鎖されたのですが、つながらないと分かっていてもリンクは外せないのです……。
 息子も血小板が減少して治療を受けたことがあり、語られる病棟の様子はよく分かりました。点滴につながれているので、バッテリーが切れそうになると警告音が鳴るんですよね。大急ぎで病室に戻ったこともよくありました。
 加納さんはこの点滴を「テンちゃん」と呼び、管だらけの入院生活をユーモアを交えて語るのです。辛いことがそれは山積みでしょうに、物書きとして綴らずにはいられない性のようなものに動かされる気持ちが、伝わってくるのです。
 白血病というと、若い人が闘病するイメージだと言い、同じ時期に入院している子たちは「ちゃん」づけで自分だけ名字だと嘆いたり。
 家族の皆さんの様子もとてもあったかくて、頼りになるお姉さん、移植のためにストイックな生活をしてくれる弟さん、まんがを貸してくれる妹さん、心配しているお父さん。そして留守中の家事を引き受けてくれるお義母さん。何よりも貫井さんの支えが心にしみました。文学賞の授賞式も欠席し、ふとした言葉からもお二人の絆が感じられます。子供さんは男の子?  「炎が消えたよう」という台詞につっこむのが個人的には好きですね。
 具合が悪くても連載まんがの続きが気になったりテレビがアナログであることに疑問をもったり、味覚障害でどんなものならおいしく味わえるか試したり。入院患者なのにやたらと元気がよかったり。
 弟さんが骨髄ドナーになってくれたこと、無事に成功したこと、本当によかった。読みながら、みえっちさんが移植後肺炎をおこしてしまったことが、頭のどこかに引っかかっていて、ふと寂しさが突き上げます。血液がキメラ状になっているという説明も当時聞きました。
 「七人の敵がいる」、文庫になりましたね。ドラマにも。時間は流れているのだなと思いました。わたしは幸い入院経験は出産時しかないのですが、フロッグスがいいという情報は覚えておこうと思います。このまま何もないといいんですけどねー。


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