くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「消えてなくなっても」椰月美智子

2014-05-05 19:34:26 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 メディアファクトリー「幽」からの単行本なので、ジャンルはホラー……なのかな?
 萩尾望都が推薦していると聞いて借りてきたのですが。
 11ページでもう「しかけ」がわかってしまったので、伏線と描写をひたすら読みました。
 中学時代「ヘリック」と呼ばれて敬遠されていた水野あおの(男性)。このあだ名は「屁理屈」からきているらしくて、友達に何か言い返されるのが嫌だったから、相手をおとしめるためにやりこめる。言わないと自分の価値がないように思えたのだそうです。
 しかし、青年期を迎えたあおのは非常な潔癖症になり、その強迫観念に仕事も手につかなくなります。
 床山のおばあちゃんに教えてもらった、河童山のキシダ治療院に向かいます。
 治療院の節子先生は、どうやら不思議な能力があるらしく、他の病院や施設では匙をなげるような患者も引き受けています。そこに、なぜか同居することになるあおの。そして、そこにはひとつ年上のつきのという女性も一緒に住んでいるのでした。
 悪いものを背負ってきた患者の孝美は、憑き物が落ちたあと先生の弟子のような存在となります。
 また、庭にやってくる河童のキヨシ。彼と親しくなり、庭の木や草の名を覚えて穏やかに過ごす毎日。

 ここから先はネタバレです。
 わたしとしては、つきのとあおのに血縁があったり、二人の両親が不慮の事故で亡くなったりするのは、正直好みではありませんでした。それまでのゆったりした表現とくらべても急ぎ足の気はします。
 「つきよのあおいさる」を生かすための選択なのでしょうか。
 自然の中の情景や、先生や村の人たちの様子などは繊細で素敵だし、孝美に語りかける「そういうこと、しないほうがいいの。ぜんぶ自分に返ってきちゃうから」という台詞も、胸を打ちました。
 ただ、わたしには「しずかな日々」が最高傑作という意識があって、どうしてもそれを越えないのですよね……。
 

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