くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ホテル・コンシェルジュ」門井慶喜

2013-04-12 20:34:15 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 門井さんにしてはぬるい気がします。設定はすきなんだけど。
 「ホテル・コンシェルジュ」(文藝春秋)、老舗ホテルポラリス京都を舞台に、新人受付の麻名とエグゼクティブスイートに長期滞在する桜小路清長、そしてベテランコンシェルジュ九鬼銀平が謎を解きます。
 普通コンシェルジュといえば、チケットの手配とか観光名所の紹介をするものなんですが、桜小路清長は伯母の家から盗まれたらしい仏像の行方を尋ねます。しかし、伯母宅を見聞した結果当の伯母が隠したとわかる。どうすればいいのかという問題に変わっているのです。
 この伯母さんが強烈。「歩く圧政」と呼ばれています。清長がなかなか大学を卒業できないのはぼんやり家にいるからだとホテルポラリスに部屋をとってくれるんですが、なにかあるとその資金を打ち切ることをほのめかして頼みごとをするんです。
 「共産主義的自由競争」がおもしろかった。ウォッカバーのマスター串灘さんの人生がこれまた強烈です。KGBに勤めていたんだって。黒パンを賽の目に切って塩水をくぐらせてオーブンで焼き、木の実と合わせたおつまみがおいしそう。
 九鬼さんの回転の速さはとてもいいんですけど、回を追うごとに情けなくなる清長、と思っていたら、伯母さんに就職させられて思いもよらない仕事につき……。人って変わるものなのね、と見直したのも束の間。
 うーん、いつもの門井さんキャラではないような気もします。わたしはうんちくが好きなのかも。