続けます。今回も「十二国記」シリーズ。
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「東の海神 西の蒼海」
今まででいちばん読みづらかったのは、戦略がメインになっているからなのか……。後半は大分慣れてスピーディに読めたけど。
私は延王尚隆が好きなので、彼の活躍ぶりはいいと思ったよ。でも、この人って割と虚無的なのだな、とも思った。それは六太も同じ。シニカルというかニヒルというか、何かを諦めているような感じ……うまく言えない。
自分の命をなげうって六太を助けようとする驪媚(りび)が泣かせる。自分の名声のために大義名分を掲げる斡由(あつゆ)も、卑怯な男だけど人間くさいというか……自分の中にもそういう一面はあるのかもしれないと感じた。一歩間違うと時代劇の悪代官だよねー。でも一応善政はしていた訳だし……そのままぼろがでなければ、人民に慕われていたのでは。まぁ、幽閉した父親の件があるから、遅かれ早かれ失脚していたんだろうけど。 それにしてもこのシリーズ、タイトルが似通っていて紛らわしい……私だけかな。慣れれば何ともないのか。今回ホワイトハート版なのは、古本屋で買ったから。こっちには山田章博のイラストがついているから、それを目安に購入できるけど、講談社文庫はこれまた似通った写真のカバーだし。目に付いた時に買っているので、重複しないように後ろの既刊案内を見て順番に選んでいる私……。
「風の万里 迷宮の岸」
新王としての迷いがある陽子、父が暗殺されても芳国公主としてのプライドが捨てきれない祥瓊(しょうけい) 、日本から流されてきた自分の不幸を嘆き続ける鈴。この三人の娘たちの成長がテーマ。
しかし、いじわるされる場面を読むと、ほんとにうめぇなぁ小野不由美、と思う。雪の中炭を買いに行かせられる祥瓊にも、ご主人の言うことに逆らえないまま、理不尽さを噛みしめている鈴にしても、辛いのがひしひし伝わってくる。でもその辛さを当たり前のものとして受けとめ、「どうして私だけ……」と思う気持ちを前向きに変えられるようになろう、とこの物語は伝えているように感じた。祥瓊が、先の王の娘であることを知った周囲の人たちが、あからさまな敵意を向けてくるなか、今まで彼女に
敵意を見せ続けていた沍姆(ごぼ)が、早馬をとばして命を救う場面と、鈴に対して清秀が父の死を語る場面が、特に印象深い。
「誰かが誰かより辛いなんて、うそだ。誰だって同じくらい辛いんだ。生きることが辛くないやつがいたらお目にかかってみたいよ、おれは」 今、この台詞を探して本を開いてみたら、見事にはまって読み返してしまった。すごい引力!
しかし、私って国家の仕組みとか町並みの描写って目では追っていてもあまり頭の中に入れていないかも。流し読み?
相変わらず楽俊がいい奴。陽子だけでなく、祥瓊も彼と出会うことで自分を見つめ直していくのだね。自分の「いたらなさ」に気づく三人娘の姿にほっとさせられもする。しかし、後半で自分の出自を名乗って、反乱を妨害しようとした人々を追い払う場面は、なんか「水戸黄門みたい……」と思った。
タイトルが似ている、と前回の感想に書いたけど、もしかして陽子が中心の話は「そら」とか、泰麒の話は「岸」とか、キーワードになっている? あれ? 「風」は? 私の思い過ごしかな。
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自分の辛さについて語る少年の場面は、はっとさせられました。今でもこのシリーズの中で最も好きな場面です。自分だけ、と思い込んではいけませんね。
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「東の海神 西の蒼海」
今まででいちばん読みづらかったのは、戦略がメインになっているからなのか……。後半は大分慣れてスピーディに読めたけど。
私は延王尚隆が好きなので、彼の活躍ぶりはいいと思ったよ。でも、この人って割と虚無的なのだな、とも思った。それは六太も同じ。シニカルというかニヒルというか、何かを諦めているような感じ……うまく言えない。
自分の命をなげうって六太を助けようとする驪媚(りび)が泣かせる。自分の名声のために大義名分を掲げる斡由(あつゆ)も、卑怯な男だけど人間くさいというか……自分の中にもそういう一面はあるのかもしれないと感じた。一歩間違うと時代劇の悪代官だよねー。でも一応善政はしていた訳だし……そのままぼろがでなければ、人民に慕われていたのでは。まぁ、幽閉した父親の件があるから、遅かれ早かれ失脚していたんだろうけど。 それにしてもこのシリーズ、タイトルが似通っていて紛らわしい……私だけかな。慣れれば何ともないのか。今回ホワイトハート版なのは、古本屋で買ったから。こっちには山田章博のイラストがついているから、それを目安に購入できるけど、講談社文庫はこれまた似通った写真のカバーだし。目に付いた時に買っているので、重複しないように後ろの既刊案内を見て順番に選んでいる私……。
「風の万里 迷宮の岸」
新王としての迷いがある陽子、父が暗殺されても芳国公主としてのプライドが捨てきれない祥瓊(しょうけい) 、日本から流されてきた自分の不幸を嘆き続ける鈴。この三人の娘たちの成長がテーマ。
しかし、いじわるされる場面を読むと、ほんとにうめぇなぁ小野不由美、と思う。雪の中炭を買いに行かせられる祥瓊にも、ご主人の言うことに逆らえないまま、理不尽さを噛みしめている鈴にしても、辛いのがひしひし伝わってくる。でもその辛さを当たり前のものとして受けとめ、「どうして私だけ……」と思う気持ちを前向きに変えられるようになろう、とこの物語は伝えているように感じた。祥瓊が、先の王の娘であることを知った周囲の人たちが、あからさまな敵意を向けてくるなか、今まで彼女に
敵意を見せ続けていた沍姆(ごぼ)が、早馬をとばして命を救う場面と、鈴に対して清秀が父の死を語る場面が、特に印象深い。
「誰かが誰かより辛いなんて、うそだ。誰だって同じくらい辛いんだ。生きることが辛くないやつがいたらお目にかかってみたいよ、おれは」 今、この台詞を探して本を開いてみたら、見事にはまって読み返してしまった。すごい引力!
しかし、私って国家の仕組みとか町並みの描写って目では追っていてもあまり頭の中に入れていないかも。流し読み?
相変わらず楽俊がいい奴。陽子だけでなく、祥瓊も彼と出会うことで自分を見つめ直していくのだね。自分の「いたらなさ」に気づく三人娘の姿にほっとさせられもする。しかし、後半で自分の出自を名乗って、反乱を妨害しようとした人々を追い払う場面は、なんか「水戸黄門みたい……」と思った。
タイトルが似ている、と前回の感想に書いたけど、もしかして陽子が中心の話は「そら」とか、泰麒の話は「岸」とか、キーワードになっている? あれ? 「風」は? 私の思い過ごしかな。
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自分の辛さについて語る少年の場面は、はっとさせられました。今でもこのシリーズの中で最も好きな場面です。自分だけ、と思い込んではいけませんね。