くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「十二国紀」1小野不由美

2013-03-17 21:58:03 | ファンタジー

 娘(八歳)が、生まれる付近の日記を発見しました。あれこれあるんですけど、とりあえず新潮文庫でリニューアルした「十二国記」の感想を並べてみます。文体もずいぶん変わりましたね。講談社文庫版とホワイトハート版をまぜこぜにして読んでおります。
 ではどうぞ。

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「月の影 影の海」
 あちこちで評判のいい〈十二国記〉のシリーズを読んでみようと思った。
 おもしろい! ぐいぐい引き寄せられていく文章と構成はさすが!
主人公・陽子の不安と成長していく姿がとても自然で、まさに本を置く暇も勿体ない感じ。続刊も入手しなくてはー。
周囲から何となく浮いている存在の中嶋陽子。普通の女子高生だった彼女は、このところ魔物が刻々と近づいてくる悪夢を見ていた。もうすぐそこまで近づいてきている。いつ捕まるのか判らない。そんななか、職員室に呼ばれた陽子の目の前に現れたのは、異国風の服を着た、長い金髪の男。彼に言われるままに主従関係になるのを許してしまう。意志に関わりなく異世界につれていかれ、男ともはぐれてさまようことになった陽子は、様々な人に出会い、様々な体験をする。信じられると思った人に裏切られ、夜毎現れるサルの幻のささやきに惑わされ、ぎすぎすした心になっていくのを止められない。男につけられた「指令」のおかげで剣の腕前は申し分ないけれど、人を「斬る」ことに抵抗があったが、生きるためにその苦しみを乗り越えていく。信じられる友と出会い、この世界のことも段々と判ってくる。
 私は半獣の楽俊が好きだ。陽子の初めての心を許せる友達で、普段はネズミ形をしている。(あとでアニメを見たら結構な大きさだったのでびっくりした) 変身すると二十歳くらいの青年になる。
 あと印象に残っているのは、「海客」の松山。言葉が通じず、望郷の思いを抱えたまま宿で働く松山は、陽子に会って日本語で話すことが出来ることに驚喜する。しかし……。
 この場面で陽子は自分がその他の人々とは違う「待遇」であることに気づく。この世界に来てから言葉で苦労したことはなかった。だが、松山は、流されてきてから日本語を聞くのは初めてだと言う。陽子の耳には言葉が翻訳されて聞こえているらしい。
 集落の様子や軍隊のシステムもちゃんとしていてフ
ァンタジーの見本のよう。

「風の海 迷宮の岸」
 十二国では、人も麒麟も動物も里木の果実から生まれる。泰国の麒麟・泰麒(たいき)を宿したまま流されてしまった果実。彼は「胎果」として異世界に流れ込み、普通の少年として十歳までを過ごした。そのせいで自分が麒麟であるという自信が持てずにいる。姿を変えることも、「指令」を手なずけることもできない自分に、果たして泰国の王を選ぶことができるのか……。
 夏至を迎え、自分こそが王に選ばれるに違いないと「昇山」してくる人々。その中で泰麒は禁軍将軍の驍宗(ぎょうそう)と州侯師将軍・李斎(りさい)と知り合う。二人と過ごす日々の楽しさ。だが、やがて別れの日が……。
 気弱な泰麒が可愛い。気のいい女将軍・李斎もいきいきしているし、何と言っても驍宗がすてきなのだ。泰麒の気がそがれないようにと、洞窟の中で怪我をしたと話す機転のよさ! ラストでも堂々としていて恰好いいなぁ。
 『魔性の子』と表裏一体になっているので、ついついそちらも読み返してみる。なるほどー、ここがこうつながっているのねーと納得。続編は『黄昏の岸 曉の天』だそうだ。一応刊行順に読んでいるので、その間に三冊ある。でも、噂によるとそこでの謎をはらんだまま、続編はいまだ出版されていないとか。読者はじりじりして待っているとか。私もそうなる運命か。

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 まあ、そうでしたね(笑)。でも、この再販によって続編も出るという話ですから、気長に待ちます。もう八年待っているんで、出るならじっくり読みたいですね。細部を忘れているから、またシリーズ最初から読み始めるかもしれません。