くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「隠れた薬害? 精神分裂病」その2

2011-10-01 03:19:08 | エッセイ・ルポルタージュ
ところが、この本の主眼はそんなところにはありません。なにしろ薬害についての話題は三分の一くらいしかない。
だいたい、そんなに恐ろしい薬害のある薬を、神経科医は自分で飲んでみるべきだと言うのですが、実際その通りだったら怖くてお医者さんにかかれないと思うのですが……。実直なお医者さんはみんな精神を病んでしまい、恐ろしいことになりそうですよ。誰も治せなくなってしまう。(閉鎖病棟も体験してほしいそうです)
でも、Amazonをちょっと覗いたら評価が星五つで愕然としました。皆さん、どうやらこの主張に共感しているようです。安全な薬を適切な量で、ということなのでしょうが、ドーパミンレセプターの話がその他の部分に埋没しているので、それが真実なのかどうかわからないのです。
とにかく、I先生に謝らせたいと執着するパートと、鹿児島で考えていたという小説仕立てのパートが、そこを曇らせてしまう。偽札づくりの一味が、このデザインは自分の父親(芸術家)がずっと昔に描いた作品の模倣なので著作権はこちらにあると主張する物語なんですが。(もう一本忍者ものもあり)
外国の有名銀行に、現一万円札流通以前から同じデザインを預けているから、それが真実だと主張する。なぜそういうことができるのかとか、その設計図通りに組み立てると一万円札がどんどん作れるのはどうしてかとか、根拠や説明は全くなし。
父親のデザイン説が本当なら、当時は意味のないそんな機械をどうして設計したのか。嘘なら息子はどうやって設計図を手に入れたのか。(自分で書いたなら町工場の息子を計画に誘う必要はないのでは)
I先生のことを言うと、みんなが「妄想だ」というので実在したことを確かめたいと主張していることも、とても不思議です。
周囲の人はI先生が「いない」ことを指摘しているのではないでしょう。謝ってほしいと執着している彼をたしなめているのだと思うのですが。
精神病院に入るのではなく、警察が相手なのであれば、I先生に非があることは分かってもらえるはずなのに、なんてことを考えていますが、そんなはずはないでしょう。押しかけて騒ぎを起こしたのは本人だもの。I先生のお父さんは無関係ですよ。
大学病院をやめた経緯も、I先生になびかない自分を責めて、職員や患者さんからの非難があからさまになったからだといいますが、でも、研修期間は半年しかないんですよね? それに満たない間に、みんなから嫌われるものなのでしょうか。
その間にI先生に目先を変えてもらおうと別の人にたきつけ、彼は自分が結婚してもいいといったのに、I先生が承知しなかったくだりもあります。
どうしてI先生と結婚しないのかと友人に聞かれ、「バカは嫌いだ」と答えたそうですが、そういう自覚があるならやはり名誉毀損は彼の方では。
とにかく客観的な視点が足りないように思わされてしまうのです。このテーマならやっぱり絞って書くべきではないかと思うのですが。
文芸社刊というのは、筆者の主張の方が強いんでしたっけ? 一体どういう着地をするのか気になって、つい最後まで読んでしまうパワーがあることは確かです。