くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ヤンキー最終戦争」その2

2011-10-29 05:18:58 | 社会科学・教育
そうだった、あまりのことに書名すらあげていませんでした。義家弘介「ヤンキー最終戦争 本当の敵は日教組だった」(産経新聞出版)です。このタイトルもなんだかなー。怖いもの見たさというか、なにがどうなっているのか気になることは確かです。
ところで、この方、元は塾講師で高校の社会科教師で、横浜市の教育委員で現在は国会議員なわけです。著書多数。でもって、書籍という媒体ですから、当然のように校正があると思われるのですが、わずか4ページで目を疑うような表現が。「日本という国は、空前の灯火と化すだろう」……。
え、えーと、「風前の灯」?
それから、後半には「深いショック」を受けたとあって、わたしこそショックです。「衝撃」だから「強い」んだと思うんですが。余りの衝撃に、沼にでも飛びこんじゃったのでしょうか……。
漢字を書けない子供が増えているということに「彼らはいずれ手紙を書くときに大恥をかいてしまうだろう」 といっていますが、まさにその通り、です。
ついでに書いておくと、書けない子が増えた理由は、漢字の書き取りの宿題を出すことに日教組が反対したからだってさ(笑)。
「元教え子」が組合に入ったことにも苦情をおっしゃいます。時々シナリオのようにやり取りが書かれるのですが、ここもそう。なぜ入ったのかと聞くと、情報が遮断されると困るからというようなことを言われるのですが、そりゃアナタ、そんなことを不満そうに聞いてくる恩師に自分の意思で入ったとはいえないでしょうよ。
「元教え子」という表現も気になります。なぜ、「元」? 組合員なら、もう「教え子」じゃないの? 「教え子」というのは現在関わる生徒だけではないですよね。どちらかというと卒業した子のイメージがわたしにはあったので、驚きました。
あと、司書資格があるので「大規模校に赴任することがあれば図書担当の分掌をやってみたい」と思っていたのに、いざ転勤すると組合員でないから人事に希望は出せないと言われた人のことが書いてありますが、あーのー、小規模校にも図書の仕事はありますよー。大規模校では「司書教諭」をおかねばならないのでそれを誤解しているんだと思うのですが。
司書教諭だけが図書の仕事をするわけでもないし(学校事情によりますが)、司書と司書教諭は別の形態で図書教育に関わるのです。図書(委員会)担当教諭もいます。司書教諭がいない学校でも、これは必要。全校生徒二十人余りの学校でも活動してますよ。
とにかく日教組の活動に異を唱えるために、おかしな具体例がたくさん取り上げられています。これを読んで「ひどい」と憤る人もいるでしょう。
でも、その「悪」と定めた組織とどう戦うのか。費やされるのはわずか6ページ。さらに6字でまとめられます。「新・教育三法の確立」です。三法とは、教育公務員特例法、地方公務員法、中確法。これを改正する。
「最終戦争」なんですよね……。
それから、教育改正についてのプランが2つ(3ページ)紹介されます。「六・三・三制」を「四・四・四制」に改めること、そこでは「読み・書き・算数・道徳」に力を入れて、道徳は教科化する。
多分これは彼のオリジナルではないと思うのです。おそらくあべしんぞーとかそのあたりの人たちの受け売り。教育再生会議担当室室長時代の会議で出たものをまとめたものでは。
でも、これではまとめすぎです。「道徳は教科化する」とは、具体的にどういうことなのか。現在は「副教科」の位置づけを「教科」にするんですよね。とすると、九教科は十教科になり、道徳専任の教科担当教師を養成し、通信票には五段階の成績が記載され、定期テストもあるのでしょうか。この前も教科化教科化言ってましたが、実際にどうなるのかビジョンが明確になってましたっけ? 大体、義家さん道徳教えたことないんでしょ。(高校ではカリキュラムに入らないからね)
数年前に鳴り物入りで導入された主幹教諭も、結局のところ降格させてほしいという人が多いと聞きます。で、この本がいうには、この仕事は組合の仕事に睨みをきかせるためだったんだってさ。そうなんですか? 
で、肝心なところなんですが、組合が機能しなくなると「読み・書き・算数・道徳」を達成したり「四・四・四制」に切り替えたりできるものなんですか。というよりもこの二つは本当に求められる教育なのでしょうか。