くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「みんなのふこう」その2

2011-10-04 20:23:23 | ミステリ・サスペンス・ホラー
そのほかにも、瞳子と友人のやりとりしたメールや、駒持警部補の取り調べ記録ビデオ、アシスタントのサイトくんの日記、作家角田港大の連載エッセイ(タイトルは「無頼派びより」!)等、様々な記録を使ってココロちゃんの周囲のことが描かれます。
わたしが気になったのは、ココロちゃんがやたらと担ぎ込まれる病院に設置された貸本スペースの日誌でのやり取りです。相互会、葉崎東高校有志、ボランティアのたんぽぽという三つのグループで貸し出し当番をしていたのですが、どうもそりが合わないというか。
良書を選んで入れるべきだと主張するたんぽぽの中野さんに、東高の女の子たちが激怒。官能小説を処分するのはともかく、悪徳警官ものやクリスティまで敵視されてはねぇ。
昨今の図書館がベストセラーの複本を大量に購入することや、リクエスト本の在り方に疑問を感じるボランティアさんがいたり、見た目のイメージと求める本が違っていたりと、本に関することも話題になっています。
中野さんはたしかにやり過ぎだけど、病院の貸本に官能小説があるのはやっぱりよくないのでは。同様に東高校で保管する中にそういうのがあるのもどうかと思う。
いや、個人的に所有しているのはいいんですよ。読みたいなら、で、病院で読んでいてもなんら弊害はないなら(お見舞いの人が来ても気まずくないのですかね)悪くないと思います。だから、中野さんが自分の病室で「リンダ・ハワード」を読んでいても構いません。当番の方々はひやかしていますが、オフィシャルな場所で貸す本を選ぶんだから、自分の好みとはまた違うのは当たり前では。
文句をつけていた女子高生が「洞穴学ことはじめ」という中野さん推薦の図書を借りていく結末が好きです。岩波新書らしいけど、実際の本なんですよね? 興味あるなあ。
若竹さんはいろいろと読んでらっしゃるのだなと思いました。
さて、この本には若竹さんのほかの本の関わりもちょこちょこ顔を出します。先述した駒持さんや角田先生をはじめ、DCや江勢屋のお菓子、ヴィラ・マグノリア。わたしが忘れているだけで、もっとほかにもあるのかもしれませんが。
でも、帯のアオリはちょっと違うと思うな。「『不幸』なのか『幸せ』なのかそれは、アタシが決めること」「ココロちゃんをめぐる、究極の『幸せ探し』ストーリー!」
アタシって、誰? 幸せを探してたかなあ。「いつも前向きな17歳のココロちゃんと、彼女を見守る同い年の女子高生ぺんぺん草ちゃんがくりひろげる、楽しくて、ほろ苦い、泣き笑い必至な青春物語」とも書いてあります。
わたしの読み取り能力は錆びているのでしょうか。どこをどうとってもそうは読めないのは、もはやわたしが青春とは遠く離れているからですか。
わたしは若竹さんの真髄は、コメディータッチの中に潜む悪意だと思うのです。ココロちゃんがあのしゃべり口調を使うのは、邪気がないからだとは思いません。彼女が幸せを求めているようにも思えない。
ココロちゃんはたくましい。そして、雑な女の子だと思います。それはほっこりとした憎めなさに包まれていますが。
こうしてみると、葉崎をめぐるシリーズはかなり長大化していますね。初期作品を読み返したくなりました。
それから、ぺんぺん草嬢はもちろんですが、ココロちゃんも、本名はもしかすると今後の作品に出てくるのかなとも思いました。ラジオ番組投稿に伴う仮名なんですよね。本名とも仮名ともとれる書き方をしているように思います。
角田先生、彼女が落としたパソコンのデータは無事でしたか? 辛くあたった人だけでなく、優しい人にまで類が及ぶ、ココロちゃん恐るべし。