くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「みんなのふこう」若竹七海 その1

2011-10-03 21:33:18 | ミステリ・サスペンス・ホラー
新しいコーナー「真夏の過失」よりもやっぱり「みんなの不幸」の話題の方がおもしろいと思うんだけどな。瞳子ねえさん、考え直した方がいいよ。もうココロちゃんの話題じゃなくともいいし。
でもそういう語りの小説だからしかたないですね。若竹七海「みんなのふこう」(ポプラ社)です。
十七歳、誰がどう考えても薄幸の星の下に生まれたとしか思えないココロちゃん(わたしのイメージとしてはイラスト化した山田花子)が、どれだけ周りの人を巻き込んでいくのかという物語です。
中学を卒業後、施設から母親のもとへ引き取られたココロちゃんは、年齢を偽って怪しい店で働き出すも、年を聞かれて正直に話してしまうような子。今はお弁当屋さんでバイトしていますが、もらったお惣菜をすぐひっくり返してしまって駄目にしたり、注文を取り違えてしまったり、失敗にはこと欠きません。
彼女とお弁当屋さんで知り合った女子高生が、「ココロちゃんのぺんぺん草」というペンネームでラジオに投稿したことがきっかけで、一躍有名人になります。というのも、その話題の中に、現在お世話になっている農家の物置で「貴重なハーブ」を育てているという話があったのですが、それが大麻であることが発覚したから。
ニュースを読んだパーソナリティの瞳子は絶叫。ココロちゃんはどうやら警察のお世話になったような……。
でも、それがはじめてではなかったらしく、心配して会いに行った「ぺんぺん草」嬢に警察のご飯はこの葉崎署がいちばんおいしかったと語るのです。
とにかくのんきな割に破天荒。そんなココロちゃんを心配してかお弁当屋の香坂さんも面倒をみてくれますが、紹介されるアパートも仕事もどうも胡散くさい。そのたびにココロちゃんは犯罪に巻き込まれますが、なんだか現場はめちゃめちゃなのに本人は軽傷。不幸に遭う人生というよりも、彼女にひどいことをした人が軒並み不幸になっていくような……。
盗まれた絵画、怪しい宗教団体、社員に保険をかける清掃サービス会社。ぺんぺん草嬢はココロちゃんが気になって、事あるごとに訪ねるのですが、あることをきっかけに決裂します。
この場面を読んだとき、ココロちゃんも案外脳天気なだけじゃないのね、と思ったんです。「もういいです。あてにしませんからぁ。香坂さんの言ってたとおりだ」「アンタのことなんかおもちゃくらいにしか思ってなくて、ぜんぜん頼りになんないんだから、つきあわないほうがいいって。そんなことないって思ってたけど、香坂さんのほうが信用できる」
足の爪に刺さった壷のかけらを抜いてほしいと頼んだとき、ぺんぺん草嬢が拒んだときのせりふです。病院に行くようにすすめられたのにお金がないから抜いてという。ひーっ、嫌だよ。あなたなら抜きますか?
しかも、いつも語尾を伸ばしてしゃべるココロちゃん、こういうときは伸ばさないのね。
ラジオの投稿メールという設定で、しかもやたらと長いために放送はディレクターズ・カットしてあることになっています。でも、紹介されている文はカットしてある方なのかしら。そうは思えない長さなんですが。