それでもなおSTAP細胞が有力な仮説である。理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の小保方晴子ユニットリーダーの指導役で、STAP(スタップ)細胞の論文執筆の中心メンバーであった笹井芳樹・副センター長は、昨日の記者会見でSTAP細胞へのこだわりを隠さなかった。未だに有力な仮説と認めているのであるならば、小保方さんの研究に協力するのが筋ではないだろうか。そこでの発言を聞いていると、仮説としては理解できるというのだ。市井三郎が平凡社が出した『現代の思想20科学の哲学』の解説書で、「近代科学の方法―数学・帰納法・仮設演繹法」について書いていた。そこで論じていたのは仮設をどう定義するかであった。市井はベーコンの帰納法が「(経験のみによる人のように)実践から実践を、あるいは実験から実験を引き出すのではなく、自然の正当な解明者として、実践や実験から原因と一般命題をひき出し、ふたたびこの原因や一般命題から、(その命題をテストするために)新しい実践と実験とをひき出す」(『ノヴム・オルガヌム』・服部英次郎訳)ことに注目した。それがK・R・ポパーの主張する現代の科学方法論に相通じるからだ。笹井副センター長が仮説として未だに成立する根拠があると思っているのであれば、小保方さんを切り捨てるのは納得できない。科学的探究は実践や実験だけでは先に進むことはできず、「原因と一般命題」の仮設から出発するしかないからだ。それとも仮説としての根拠もなかったのだろうか。
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